オーディオ製品の原点は何処に在るのだろうか、いったい何から進化して今のオーディオの仕組みが作られてきたのだろうか、そんなことを徒然なるままに考えていました。
スピーカーの原点はやはり楽器だと思うのです、太鼓や琴に似た楽器は古くから世界中に存在しています。
この原理は、弦や皮など振動する物とその振動を共鳴させて音を大きくする構造をしています。
現在のスピーカーの原理は太鼓の音を出す原理そのものです、太鼓を電気信号によって鳴らしていると考えてもよいほど似ています、またホーン型ツイーターやスコーカーの原理はサックスやトランペットそのものです。
電気信号を増幅させるアンプの原点は間違いなくラジオでしょう、ラジオは搬送波という高周波に音声信号を乗せて空中に電磁波として飛ばし、その電磁波を受信して音声信号だけを取り出して増幅させスピーカーから音を出す仕組みからなっています。
このうち音声信号を増幅させる部分をアンプとして進化させてきたのです、そして高音質に再生させる増幅回路が多くの技術者によって考えられ世に出ては評価されてハイファイオーディオというカテゴリがうまれるようになりました。
どんなものにも原点があります、世に存在する家電製品もその原点を探ると見えなかった価値が見えてきます。
その電気製品にどんな価値を見いだせるか、それはその生まれてきた原点を訪ねてみることです。
自身が解らないという人がいます、ではその人に尋ねます、何故自分がこの世に生れて来たのかを考えたことがありますか?
自身が解らないという人ほど、何気なく日々を過ごしているだけのつまらない人生を送っている人だと思うのです。
真剣に自分が生まれてきた使命を考えることです、使命が見つかれば自身が解らないなどという愚問など一切出てこないと思います、なぜなら使命を全うすることに日々忙しいからです。
使命に気付いた人は、他者の目やどうでもよい情報に翻弄されることもなく日々自分の使命に従ってひた走るだけなのですから。
この世に存在する全てのものには意味と理由があるのです、勿論どんな人にもです、ただそれに気付いてもらえるかどうかの問題です。
それに気付き価値を最大限に引き出してくれる人と出会えるか否か、出会ったら頑なな自尊心を捨て最後まで信じて付いていけるか否か、成功する人としない人の差がこれなのです。
1980年代に起こったスピーカー598戦争(1台5万9800円、セットで約12万円)は、オンキョーのD-77の発売によって勃発しました。
そんな激しいミドルクラスのスピーカー598戦争ですが、その裏でも別の598戦争が水面下で繰り広げられていたのです。
その裏の598戦争とは、1988年に勃発したCDプレーヤーの598戦争でした。
この年の5万9800円のCDプレーヤーを一気に列挙してみましょう。
ついでと言ってはなんですが、それぞれの製品の要であるDAC仕様も調べましたので合わせて紹介しましょう。
・ソニー CDP-228ESD バーブラウンPCM58P(モノラルDSPを左右分離で使用)
・ケンウッド DP-7010 バーブラウンPCM58P(モノラルDSPを左右分離で使用)
・ビクター XL-Z521 バーブラウンPCM56P+2bitディスクリートDAC
・パイオニア PD-717 アナログ・デバイセスAD1860N-J(モノラルDSPを左右分離で使用)
・テクニクス SL-P777 松下電器MN6741(独自の1bitマッシュ方式)
さて、その後CDプレーヤーやユニバーサルプレーヤーで名を馳せるデノンはCDプレーヤー598戦争を他所に6万円ジャストの値付けでマイペースな製品作りをしていたのは面白いです。
アンプ798戦争やスピーカー598戦争、そういった世の流れには翻弄されずのこの我が道を行くという姿勢は立派です。
今となってはですが、どの業界でも他社動向に翻弄される企業よりもマイペースに進めていた企業がバブル崩壊後に拡大成長していった、この事実は事実として記憶してほしいと思います。
数多い日本のオーディオメーカーですが、その中で憎いほどに消費者を誘導する戦略を繰り出すメーカーが在ります。
アンプではヤマハとマランツであり、スピーカーでは90年以降のオンキョーです。
マランツは、80年代後半辺りから各社よりも性能を強化しているものの一段価格を落としたアンプを継続的に多数出しています。
これに合わせて価格の張る上位機種も出します、価格が安くて高性能に踊らされて買い、更に買ってからアップグレードしようと考えるもやはり上位機種もマランツを選んでしまうような価格設定をしています、本当に憎い程の戦略を繰り広げているのです。
ヤマハは逆に70年代から高性能なハイエンドやミドルクラスを先ず先に出し、それと同じエッセンスを詰めたエントリークラスを次に投入するのです。
消費者をハイエンドクラスで一旦引き付けておいてのエントリークラスの投入、これによって入門者を一気に引きつけることに成功します。
オンキョーは、90年代に入ると小型ブックシェルフスピーカーでこれでもかというくらいにエントリークラスからミドルクラスまで細かくシリーズ化し、どのクラスを買っても後悔しない音質を提供しました。
アップグレードの要求とサブシステムの要求を満たし、多くのファンを引きつけることに成功したのです。
私もこれにまんまとハマった一人で、たった1台の小型ブックシェルフでオンキョーファンになったくらいです。
そして、その後はアップグレードの上位機種もサブで使う下位機種もダイヤトーンではなくオンキョーを選んでしまうのです。
「策多ければ勝ち、少なければ負け」、戦国時代に名策士と謳われ毛利元就を自らの死後までも大いに苦しめたことで知られる、出雲の名武将である尼子経久が自身のポリシーとした兵法の極意です。
70年代~80年代のミドルクラス以上のアンプには、フォノ入力でMM/MCという切り替えスイッチが付いています。
エントリークラスのアンプには単にフォノしかありません、切り替えスイッチが無い場合は全てMM型と覚えておいてください。
MM型/MC型というのはカートリッジのピックアップ方式の違いで、MM型はマグネット方式、MC型はコンデンサ方式というものです。
マグネット方式はレコードの溝の信号を読み取った針によって稼動するマグネットがコイルの中に入っており、これによって起電させる方式で安価に製作でき一般的な方式です。
対して後から生まれたコンデンサ型は、平行に取り付けた金属片の間隔を溝の信号を読み取った針によって変化させることによって生まれる静電容量の変化を電気信号に変える方式で、MC型専用のイコライザーが必要になります。
つまり、MM/MCの切り替えスイッチが付いているアンプは、MM型とMC型それぞれの2種類のイコライザーが付いているということになります。
さて問題はその音質なのですが、MC型は繊細な音が要求される場合には必須で小さな音でもノイズが入りずらく高音質と言われています。
対してMM型は、ダイレクトに起電された信号を復調するだけなのでダイナミックな音だと言われています。
ただ、マグネット+コイルという機構は周辺に存在する磁気の影響を受けやすくノイズが入りやすいと言われています。
ただ、これも実際に実験してみるとMM型もMC型も大きな違いはないと実感できます。
私の持っているアンプが個性が強い物ばかりなのか、スピーカーのせいなのかは解りませんが、少なくてもエントリークラスの製品ではなくハイエンドのセパレートアンプにオンキョーのD-77MRXという3ウェイの大型ブックシェルフスピーカーで視聴した結果です。
平均的なMM型に比べて高価なMC型、いったいどんなジャンルのどんな音を追求している人が使うのだろうかと思うのは私だけでは無いでしょう。
オーディオに限らず家電製品には、昔から「オープンプライス」という販売制度があります。
このオープンプライスというのは定価を定めずに小売店が自由な価格で販売できるというもので、メーカーにも小売店にも幾つかのメリットが生まれます。
メーカーのメリットは、新製品を出して旧型になり在庫処分価格で卸しても定価の表示が無いので小売店が価格を下げなければ在庫処分だということがバレることはありません。
小売店も在庫処分価格で大量に買い取っても、旧来の価格で販売できるので利益率が上がりメリットが享受できます。
ただし困るのがマニアです、マニアはデーターが重要でいつ発売されたのか定価は幾らだったかが重要なデーターであり、オープンプライスだと定価が解らないので中古で購入する際などに躊躇する傾向があります。
オーディオの中古市場でもこの傾向が明確に現れているのが解ります、定価を表示していない(できない)製品は大量に売れ残ってしまいます。
ヒット商品だったのかコストパフォーマンスの良い商品だったのかなどの情報を、定価と販売価格との差から計ることができないからです。
メーカーや小売店にとっては都合の良いオープンプライスという制度、オーディオマニアにとっては実に迷惑な制度だと思うのです。
そこでオーディオマニアが参考にするのが発売当時の実売価格という指標です、オーディオショップや量販店での実売価格から本来あるべき定価を導き出しているのです。
できないものはできる方法を策定する、どの分野においても前向きに取り組む人が勝者となるのです。