日本のオーディオ界に1985年頃から急速にホームシアターの流れが起きてきます、私も日本初のデノンのAVアンプを購入しサラウンドの世界へ踏み出します。
当時は、今では考えられない世界であり映像機器はブラウン管式の重厚なテレビだけです。
そんな時代のホームシアター道楽の始まりは、当時最大級のソニーのブラウン管式のテレビでした。
インチ数は記憶にないのですが36インチくらいだったと思います、それでも当時としては最大級で重量も大人2人でようやく設置できるほどの重さがありました。
その後、プロジェクターが各社から発売されるようになり120インチまで投影可能な三極式のプロジェクターを購入します。
この価格は何と購入価格で90万円です、高輝度スクリーンと合わせて120万円、AVアンプにスピーカーセットと合わせて最低でも購入価格で170万円以上はかかったものです、本当に今では嘘のような世界でした。
当時のDVDプレーヤーがエントリークラスでも10万円以上です、今では1万円以下で買えるようなスペックです。
当時ホームシアターはとても贅沢な道楽だったのです、更にはそんな費用をかけても部屋を暗くしないと映画鑑賞は出来ないほどの代物だったのです。
その後に大型プラズマテレビが出るとプロジェクターから明るい部屋でも綺麗に映るプラズマテレビに変え、大型液晶テレビが出れば液晶テレビに変えてとAVアンプなどの入れ替えと合わせて年に100万円以上が飛んでいったのです。
入れ替えの度に旧機種は下取りに出しても技術革新が早くて二束三文の価値しかありません、時代の変化とは恐ろしいものです。
加えてオーディオは別の道楽として平行していたのですから、お金はかかるし部屋は狭くなるし部屋中がアンプ類とスピーカーで埋め尽くされては数年単位での引っ越しと、「オレ、いったい何をやってるんだ?」と大きな葛藤と苦悩の連続でした。
加えて1985年からの5年間、オーディオ界は狂喜乱舞の世界で次々に出る新製品との戦いの日々です。
そんな辛い戦いから卒業して行くオーディオマニアが後を絶ちませんでした、オーディオとホームシアター復活でそんな当時の悪戦苦闘の辛かった日々を思い出します、道楽ってやはり一種の病気なんだと思います。
ただオーディオもホームシアターも、常にオンタイムでハイテク時代の移り変わりを人生とシンクロするように実体験できたことには一切の後悔はありません。
そのおかげで多くの映画で知識と思考を磨き、それがビジネスの大きなヒントになったりしたものです。
世界初の動画圧縮記録装置やリアルタイム動画合成の特許出願に製品化、それらは全てホームシアター道楽からアイデアが生まれたものです。
この特許と製品がまたとんでもない人生の一大転機を齎すのですから、本当に人生って一寸先は何が起こるか解りません。
「人間万事塞翁が馬」(じんかんばんじさいおうがうま)、つまり「世間はすべて良い事の裏に悪い事が在り、悪い事の裏に良い事が在る」ということです。
道楽をどうせやるなら徹底的に納得するまでやることです、必ずそこから新しき何かが生まれ未来が開かれるものです。
本来愉しむはずの道楽、その道のりには苦しみや葛藤も幾つも在るものです、でもそれもまた必ず精神面での成長に繋がってくるのです。
「たかが道楽、されど道楽」、人生は生きている間だけです、限られた時間を常に持てる力をフルパワーで大いに苦しみ大いに愉しむことです。
「苦楽楽楽」、苦しい事も楽しい事も人生は生きている間だけです、だったら大いに愉しんだ者勝ちなのです。