オーディオ道楽を始めるとこれまでの感覚と違ってくる感覚が沸き上がってきます、その最たるものが音楽を聴く意味だと思います。
あくまでも自分の好きな音楽を良い音で聴きたいがためのオーディオであるはずです、それが音楽を愉しめなくなってくるのです。
何気なく聴きながせていた何時ものCD、その音の一つ一つが気になり始めてきます。
締まったベースの音が欲しいとか、耳をつんざくような生々しいトランペットやドラムのクラッシャーの音が欲しいなどと、ここで考えなくてはいけないことがあります。
それは先述の音楽を良い音で聴くのが本来のオーディオの愉しみなのです、音楽を聴くことがストレスとなり苦しくなってくるようであればオーディオ道楽を一旦は止めたほうが身のためだと思います。
重い機器を常に入れ替えたり頻繁に音の調整をしたり、納得いかなければ新機種を購入してでも貫く、でもそれをワクワクしながら愉しんで行うことがオーディオ道楽なのです、その結果においてこれまでよりも良い音で自分の好きな音楽を愉しめるのです。
ときどき見受けるのです、音楽を愉しんで聴くのではなく音のチェックのためにだけに聞いている(聴いているではなく聞いている)ような人が、こうなっては道楽としての本分を逸脱しています。
好きなことを愉しんで行えることが道楽の基本中の基本です、だから私はその時に心が欲する音楽しか聴かないのです、例え音質のチェックのためでも欲していない音楽を無理やりに聴くことはしないのです。
例え好きなジャズでも、自分に合わないと思うCDは身近には置かずに買って一度聴いたらすぐに売ってしまうか欲しいという人がいればプレゼントします。
音を追求する前に、オーディオを道楽とするなら音楽を愉しむことができる状況を継続させることが重要だと思ってやみません。
好きな音楽を愉音で聴きたい、その先にオーディオ道楽が存在できるのです。
オーディオ製品はあくまでも家電です、したがって部屋に置く場合には他の家電と同じようにインテリア性を損なわないようにしたいものです。
本当にインテリア性を意識せずにオーディオを思う存分に楽しみたい場合は、専用のオーディオルームを用意するのが好ましいと考えるのが私流です。
生活空間に違和感のないように、自然な形で音の有る空間を醸し出すというような美しいオーディオライフが好ましく思います。
その意味では、オーディオ道楽復活後はオーディオ&ホームシアター専用部屋と、リビングに置くサブシステムを完全に分けて考えています。
オーディオ専用ルームは逆に他のインテリアを置かずに、オーディオ関連のものしか置きません。
リビングのサブシステムは音を追求するのではなく、音楽を流し聴くようなBGM的な要素を多くして、周囲のインテリアと違和感なく調和するような形や色の製品を選んでいます。
とは言いつつも、ただ聴くだけの家電的なミニコンポではない、と言うのがオーディオ道楽を行う人間として最低限の拘りは出しています。
また、さりげなくそこにオーディオ製品が在るというように目立たない薄型のものを置くようにしました。
オーディオマニアの多くの人の家の中とは、生活の全てがオーディオみたいに部屋中にアンプやスピーカーが散乱しているのをよく目の当たりにしてきた私は、他者の振り見て我が振り直せではないのですがオーディオは生活の一部であって全部ではないという思いが強くなってきました。
オーディオを道楽としても、生活の中にはできるだけオーディオを持ち込まないというくらいにインテリア性を重視してほしいと思うのです。
80年代前半にトリオやパイオニアと共にオーディオ御三家と呼ばれたサンスイですが75年頃からの快進撃は凄かったです、一時期はアンプのシェア40%という快挙を成し得ますが自ら勃発させた85年の798戦争以降サンスイの経営に突然のように陰りが見え始めます。
1974年から12年間代表を務める藤原氏から1986年に伊藤氏に変更すると同時に、伊藤氏の元で会社再建策が実施され希望退職者を募り社員数を25%カットします。
1987年にCIを実施しロゴを変更します、1989年にはイギリスのポリーペックインターナショナルから156億円の出資を受け拡大戦略を打ち出します。
運が悪いのか時期が悪いのか、リスタートをかけたその直後にバブル経済が崩壊しオーディオ氷河期に突入します、更に悪いことにポリーペックインターナショナルが経営破綻し後方支援が無くなり再び財務悪化に陥ります。
1990年に代表を稲宮氏に交代し、1992年に今度は香港のセミテックの資本傘下に入りますがセミテックもこの10年後に経営破綻してしまいます。
1994年からは毎年のように代表が入れ替わり工場や本社などの不動産を売却し移転、更には社員のカットなどサンスイはどんどん衰退していきます、2000年には社員数が50人を割り経営状況は更に悪化の一途を辿ります。
2001年にAU-111Gビンテージを最後にアンプの製造が途絶えます、これが事実上のサンスイのオーディオ史の終焉となります。
2002年にはついにオーディオから撤退し映像機器やパソコンのディスプレイなどを手掛け会社の生き残りを模索しますが、オーディオで築いた金字塔が逆に邪魔をして新事業も上手くいきません。
2010年以降は上場廃止など事実上のゾンビ状態と化し、2014年に破産手続きが開始され2018年に完全に法人が消滅します。
この一連のサンスイの衰退劇をオンタイムで見てきた私として、2000年以降のサンスイはとても直視できるものではありませんでした。
アンプからいきなりパソコンディスプレイです、オーディオ界を引っ張ってきたアンプの巨匠が何を考えているのだろうと正直思いました。
そして破綻後に経済アナリストからこんな厳しい言葉が浴びせられます、「山水の社名の由来は"山のごとき不動の理念と水の如き潜在の力"だそうですが、同社が求めたのは"山のごとき不動のオーディオキングの名声と水のごとき豊富に見えた海外資金"だったようだ」と。
海外資本に染まったかつてのアンプの巨匠、日本メーカーは面倒な株主構成のサンスイには暖かい手を差し伸べたくもできない状況だったに違いありません。
1990年以降のバブル崩壊とオーディオ氷河期のダブルパンチ、そんな中でも安易に他者依存せず自助努力で乗り切ったオーディオメーカーも多いです。
何かを間違えてしまったのでしょう、「優秀な技術も人材も、盤石な経営母体が有ってこそのものだということを忘れるべきではない」、当時の私にとっては大き過ぎる学びでした。
設立来ハイエンドアンプで日本オーディオ界のリーダー的存在のラックスマンですが、昔からオーディオショップであろうが家電量販店であろうがどこで買おうとほとんど値引きしてもらえません。
おそらく代理店の条件として値引き販売を行わない契約になっているものと推測しますがその姿勢は徹底されています、他のメーカーでは発売当初から10%は定価から安くしてもらえ、更には旧型になれば最大で30%程値引きしてもらえます。
しかしラックスマンに関しては旧型でもほとんど値引きしないのです、したがってラックスマンだけはポイントが多く付くショップで購入するのが価格的なメリットだけを追求するならベストな方法だと思います。
このラックスマンの一切の値引きをしないという方針はマニア諸氏は「流石、ラックスマンは崇高だ」という人もいれば、「トップブランドに胡坐をかいている」という人もいます。
またラックスマンの特にプリメインアンプは、中古市場でも高値で取引されているばかりか真空管アンプに関しては発売当初の定価の2倍以上もする製品もぞろぞろ存在しています。
真空管アンプはパワーアンプなども含めて軒並み3倍以上の価格で、キット製品までも例外ではありません。
ラックスマンのアンプは私も含めて一度買ったらなかなか手放す人も少ないのは確かです、それだけ愛着を感じる製品を生み出すブランドなのかもしれません。
私はこういった事実を真摯に受け止める派で「ラックスマンは崇高なブランドである」と明言します、持っているだけで価値観を味わえるアンプはそうそう在りません、ラックスマンオーナーは皆さんも同じ気持ちだと思います。
音色も独特の持ち味がありますがオーラを放つ存在感を示すアンプ、そうそう存在するものではありません。
オーディオ史には数々の戦争が起きており、これも後に多くのレジェンドや武勇伝を残しています。
さて80年代のアンプ798戦争が終焉を見せた頃に突然のように勃発したのがハイコンポ戦争でした、ハイコンポとはミニコンポサイズ(幅30Cm程度)の製品のうちフルサイズコンポの定格出力だけを絞り音質はフルサイズコンポに劣らぬハイファイ製品を指します。
またハイコンポの暗黙の定義は、システム販売と並行して単体でも発売されていることでした。
火付け役はケンウッドのK's(ケーズ)シリーズで、アンプのA-1001はユニークなスタイルと音質であっという間に大ヒット&ロングセラーを構築していきました。
オンキョーはフルサイズコンポのインテグラシリーズで培った技術を投入したインテック205シリーズとインテック275シリーズを展開します、これもまた人気を博しインテック両シリーズも新製品が出るたびに大ヒットを飛ばしました。
ビクター・デノン・パイオニア・マランツなどの各社も一斉に追従し、こうしてオーディオ界はミニコンポ一色の世界に移行していったのです。
慌てたのはサンスイです、遅ればせながらAU-α7を出しますが既に先行他社が築いた要塞はあまりにも強固で参戦すらさせてもらえない状況となったのです。
この結果サンスイは体力をどんどん奪われていく結果となってしまったのです、戦争とは常に非情な結果を齎すものです。
最後になりましたが特筆すべきはハイコンポの音質です、フルサイズコンポのエントリークラスのアンプの価格の2倍近い価格のハイコンポのアンプ群は定格出力こそ低いものの決して馬鹿にできない高音質のアンプが多いのです。
価格帯は6万円前後が主流ですが、3~4万円前後のフルサイズのエントリークラスの音質よりも断然上です。
「小粒でもピリリと辛い山椒」という言葉がありますが、「小型でもビビルくらい高音質なハイコンポ」と言いたくなるほどです。
ケンウッドやオンキョーのハイコンポは、スピーカーさえ選べば下手なフルサイズのアンプを買うよりも低域もしっかり出るし中高域の切れ味も抜群です。