アナログ音源のレコードを多数持っている人で昔のプレーヤーを使って手軽に現在のライン専用アンプでもレコードを愉しむことができる装置がフォノイコライザーという製品です。
アナログ全盛期のアンプには必ずフォノイコライザーが付いていましたが、CD全盛期になってCDダイレクトなどの機能が付加してフォノイコライザー機能が落ちてしまいました。
アナログの復活で、最近またプリメインアンプにフォノイコライザーが付くようになりましたが、フォノイコライザーが無いアンプでレコードを聴くには必須の製品です。
本機は、デジタル時代に誕生したソニーのアナログプレーヤーPS-LX350Hと同時に発売された、MM型フォノイコライザーのソニーEQ-2(1999年発売、定価0.5万円)です。
ソニー EQ-2

フォノイコライザーは、レコードプレーヤーのカートリッジの音をエンハンスしてアンプで増幅できるように電圧を上げる装置でハイエンド製品になると100万円以上します。
本機は電池式で、おそらく簡単な電圧増幅と整形回路だけの製品だと思います。
入力が無いと電源が自動で切れ、余計な電池の消耗も無いので安心して使えます。
電池式フォノイコライザーはほとんど見かけないので、検証には面白い製品だと思ってPS-LX350Hと同時に購入しました。
1990年以降のフォノイコライザーが付いていないアンプにアナログプレーヤー(レコードプレーヤー)を接続する目的で使います。
オーバーな話が、このフォノイコライザーが有ればレコードプレーヤーをプリアンプ無しでダイレクトにパワーアンプに接続する事も可能です。
面白いことに一度消えたフォノイコライザー付のアンプ類ですが、2005年ごろからレコードブームを意識してかほとんどのアンプに再びフォノイコライザーが付くようになります。
さて、検証として本機を使った場合とアンプ内蔵の場合とをいろいろなアンプで比較してみましたが、聴いた限りではほとんど大きな差はありません。
まあ、音質や音色を変化させる要因がほとんどなく、アンプで増幅可能域まで電圧増幅させるアダプターとして考えるべき製品だと思います。
通常、フォノイコライザーはプリ・プリアンプと言われるように真空管やトランジスタで昇圧させながら音質に味付けがなされています、こういった味付けがない電池式のフォノイコライザーは意外とニーズがある製品かもしれません。
おそらく、ニーズの有る人には当時の価格以上のお金を払っても手に入れたい製品でしょう、例えばPAシステムにアナログプレーヤーを接続したいとかレコードをAD変換(アナログ→デジタル変換)してデジタルサラウンドプロセッサで聴きたいなど各種のニーズが考えられます。
ちなみに中古価格を調べたら3,500円~7,000円でした、発売当時の価格以上しているのには驚きますが、こういった珍品は将来もっと上がるかもしれません。
※ピュアオーディオ&ピュアホームシアター製品の評価記事はこちらのブログを参照下さい。
オヤジの音箱
・音箱アンプコレクション
・音箱試聴室

「歴史は繰り返す」とはいえ、こと電化製品に関しては進化するのみで旧技術に戻ることは普通は有り得ません。
ただしオーディオだけは例外のようです、2000年以降に20年以上前に廃れたはずのカセットテープ&カセットデッキが復活し次いでレコードを聴く為のレコードプレーヤーが復活し新製品の製造も開始されています。
更には70年代にトランジスタ全盛時代を迎えたアンプも真空管アンプのブランドが乱立し今更ながら脚光を浴びています、真空管アンプの大御所であるラックスマンも近年久しぶりに真空管アンプをリメイクし復活させました。
このアナログの復活は私的には大歓迎です、何故なら1000枚以上もあるジャズレコードが再び最新のレコードプレーヤーで聴くことができるのですから、更にはレコードプレーヤー用のイコライザーまで最新デジタル技術を駆使した新製品が誕生してきています。
そもそもオーディオは最終的にはアナログ回路によって電流増幅されスピーカーで空気振動(アナログ)に変換されるわけです、つまりオールデジタルでは音にならないのです。
そういう意味では音質を最終的に決めるのはアナログ回路です、であれば入口から出口までオールアナログの方が音質をコントロールしやすいというのも納得できます。
デジタルオーディオの雄であるCDプレーヤーは、内臓のDACによってアナログ出力する機械という割り切りによってアナログメディアであるカセットテープやレコードと共存できます。
つまりアンプはDACを排除したフォノイコライザーとアナログ増幅機に注力でき、アナログによる音質向上に注力できるようになります。
まさかのアナログ復活、この時代が来ることを正確に読めていたならサンスイはどんなことをしても生き残りを図ったのでしょう、時代の変化とは企業も人も大きなチャンスでもあり逆に大きなピンチでもあるのです。
「歴史は繰り返す」、これを信じて再び天の時が来るのをじっと耐えて待つのか、それとも積極的に変化に順応するのか、この選択をした2者は生き残りそのどちらも選択できなかった中途半端に時代に翻弄された者は確実に淘汰されるということです。
どの時代もどの業界も、生命体も技術や機械もこれに関しては例外はありません。

オーディオ道楽復活でオーディオショップに出向くことも多くなりました、そんなオーディオ専門ショップの奥の方には必ずと言っていいほど中古販売のコーナーが設けられています。
そういった中古販売コーナーで、ふと見つけた自分が昔愛用していた愛機を見つけると懐かしさが込み上げてきます。
そして改めてうすら覚えの記憶が修正されます、使っている時には細かな機能のことまで記憶に在りません、でも改めて再会すると冷静にその機種を再評価できます。
あと中古なのに当時の販売価格以上の機種もあり、とても複雑な気持ちになります。
再度手元に置きたいと思う機種もあります、本当に縁が在るものならどこかで何れは手元に来るでしょう。
こういった40年以上も前に愛用していたものに再会できるのはオーディオ製品くらいだと思います、他の家電ではほぼ不可能ですから。
昨今は愛機が再度手元に来る日を待ちながら今はオーディオ道楽の復活を愉しむ毎日です、機種そのものも懐かしいのですが当時の状況などを思い出すのもまた感慨深いです。
私の人生、絶好調の時も挫折した時も常にオーディオがそこに在りました。

私が小学生の頃に日本発の真空管式のコンピューターが誕生し、その後急速にコンピューターが進化しました。
中学生のころからコンピュータに憧れていた私は高校は電子工学を学べる工業高校に進学し、大学は当時コンピューターを自由に使える唯一の工学部を持つ大学に進みました。
そして大学卒業後はコンピューター業界へと進み、プログラマーが皆無の時代にソフトウェア業界にシフトしていきます。
つまり、私の年代はコンピューターの歩みと人生がシンクロしているので順次最新技術に触れる事ができ自然な形でIT技術とデジタル工学を学んでいけたのです。
その点では2000年以降にIT業界に入ってきた人は大変です、過去の事例や技術を学ばないと今に活かされた技術の核心が解らないのですから。
現存するOSやアルゴリズムの多くは、全て80年代から90年代に確立され進化を遂げてきた技術です。
したがって、そのアーキテクチャーの根本原理を知らないと100%活かした新たなアルゴリズムを生むことができないのです。
だから今、ITアーキテクチャやアルゴリズムの権威と評される人は皆60歳以上という高齢者ばかりなのです。
なので若い人は後追いで過去の核心技術を学ぶ必要があるのです、今習得すべき技術と過去の技術の両方を学ぶのは相当厳しいと思います。
オーディオ道楽も然りなのです、オーディオもITとほぼ同時期に同様に進化してきたのです。
私が小学生時代に真空管だったオーディオ製品は中学時代にはトランジスタに、高校時代にFETやパワーICに推移していきます。
その時代を代表する回路や部品、またメーカー別製品の特徴もオンタイムで少しずつ覚えていけば良かったのです。
オーディオソムリエではありませんが、私は過去の製品の品名を聞けばメーカー(ブランド)・発売年・価格・増幅回路方式(アンプ)・ユニット構成(スピーカー)・エンクロージャータイプ(スピーカー)・特徴をほぼ完璧に言い当てる事ができます。
これは、少しずつ覚えていけば良く無理なく自然に記憶できた産物です。
冒頭のIT同様にオーディオも最近始めた人は大変です、メーカーによる製品の特徴も誕生した経緯も知らないので同じ金額でも価値のある製品を目利きすることができません。
その時代の価値のある製品は必ず将来プレミアムが付きます、またその音色は独特の価値ある音なのです。
「経験に勝る術は無し」、道楽の世界でも例外なく通じるようです。

おそらく家電の中で骨董価値が出るのはオーディオ機器くらいではないでしょうか、とは言え骨董価値が認められるのは一部の製品だけですが機種によっては40年以上も経って当時の発売価格の5倍以上の値が付いているものも存在しています。
いったいオーディオ製品の骨董価値とはどんな価値なのでしょうか、骨董価値を認められる多くの製品はアンプです、それもハイエンドのセパレートアンプに多く存在しています。
セパレートアンプの多くは当時の最新技術を駆使し、更には独自に部品を開発したものも多く存在しています。
その音質はその回路と独自部品によって最終的に得られるものであり、代替えできるものは現在では存在していません。
つまり、その製品の音を求めるならばその製品を使うしかないのです、これがオーディオ機器の骨董価値だと思うのです。
オーディオコレクターの中には100台を超えるアンプをコレクションしている人もいます、まるで壺や茶碗のような感覚なのでしょうか?
ただ壺や茶碗と異なるのはオーディオは音を愉しめる骨董品であるという点です、見えない音を見える形にして残しているアンプ、音のコレクターが存在してもおかしくはありません。
現在オーディオ界はデジタル時代にあっての空前のアナログブームが到来しています、アナログ全盛時代の真空管アンプやレコードプレーヤーを求める人が増え40年以上も前のオーディオ骨董品が高値で取引されているのです。