アナログ復活で存在感を示すクロストークキャンセラー~デノン PCC-1000
2024年7月 6日 07:00
何に使うか解らない、そんな機械がオーディオには多数存在しています。
そんなレアものの代表格の一つが、本機クロストークキャンセラーのデノンPCC-1000(1977年発売、定価3.8万円)でしょう。
当時の大学初任給が6万円弱、なんと3週間分の給与が消えてしまう「クロストークキャンセラー」というオーディオアクセサリーとは何物でしょうか?
その存在を知らなくても、名称を聞いただけでマニア諸氏は間違いなく何に使うのかを当ててしまうでしょう。
デノン PCC-1000
アナログレコードは溝に音情報が物理的に彫ってあるわけです、この溝はステレオですと1本の溝に2チャンネル分入れなくてはいけません。
そこで、溝の左右にそれぞれの音情報を掘るわけですが、この左右別々に彫られた溝から音情報を取り出す針はたったの1本です。
したがって、右チャンネルの音が左チャンネルに、左チャンネルの音が右チャンネルにかなりの音漏れ(クロストーク)を起こしてしまうわけです。
このチャンネル間の音漏れを逆位相の波形をそれぞれにぶつけて消して、それぞれのチャンネルの音を正確にしかも綺麗に出力させるのがクロストークキャンセラーというわけです。
マナログのレコードからCDに変わった際に大量に中古市場に出されましたが、今ではまず出てこない極めてレアな製品の一つです、アナログファンの中には幾ら払ってもいいから手に入れたいという人もいます。
このPCC-1000は、更にレコードのチャンネル間クロストークのキャンセルができるだけではありません。
使い方によってはチャンネル間の情報を相互に再分布可能なのです、つまりクロストークの量を自在に調整できるのです、これに気付いていた人は時代がCD全盛期になっても決して手放さなかったと思います。
実はこれ、サラウンド効果を自分の思ったように自在に調整できてしまうのです、原理を話すと長くなってしまうので結論だけにしておきます。
こういった装置は70年代にマニア諸氏は真空管などを使って自作していました、また周波数帯域別に可能にした高度な回路まで考え出されたものです。
このデノン製の高性能なクロストークキャンセラーPCC-1000、完動品の現存数はおそらく百台有るかどうかというほど極めて少ないと思います。
アナログブームが再燃している現在、極めて貴重な装置ですのでお持ちの方は決して手放さない方が良いと思います。
つい先日のこと、某オーディオショップでフルオーバーホールはされているものの傷や錆だらけのものが何と18万円という価格が付けられていました。
※ピュアオーディオ&ピュアホームシアター製品の評価記事はこちらのブログを参照下さい。