近年ネット上に何かと話題を振りまいている日本で設立されたオーディオメーカーがあります、地方都市の畑に囲まれたガレージのような工場で製造される純国産のオーディオメーカーですが、その製品が悪い意味で話題となっているのです。
その理由はケースを開けたらすぐ解ります、ケースの中はスカスカで小さな基板とスイッチ類や可変抵抗が縦横無尽に引き延ばしたケーブルで接続されています。
フロントパネルに可変抵抗がナットで直接取りつけていて基盤が宙に浮いています、トランスや使用している部品はDIYオーディオ必達の極普及品の安価なものばかり、それでいて信じられない定価なのです。
ほとんどの製品が10万円を超えセパレートアンプではセットで20万円以上します、ざっくりとマニアが公開している写真で部品価格を出すとどう見ても数千円です。
開発コストや製造コストを考えても2万円がせいぜいでしょう、2万円といえばケンブリッジオーディオの日本限定販売のアンプが買える価格です、製品だけの価値から言えば日本一コストパフォーマンスが悪い製品群だと思います。
それでも買う人がいるのだから経営が成り立つのでしょう、なんと10年以上継続しているのですから。
それで問題ですが10万円以上の定価が付いているにも関わらず自社ネット販売では30%程度の価格で売っているのです。
これを見た人はメーカー直販なので在庫処分か何かで訳が有り安いのだと思うでしょう、そして高価なものを安価に手に入れたと大喜びする人もいるでしょう。
また、メーカーサイトには代表の顔入りでコメントが載せられています、こういった事実や私なりの検証をした結果、正直もの凄い怒りと悲しみが沸き起こります。
詐欺とは言わないまでも未来のオーディオファンを泣かせることはしないでほしいです、オーディオ製品は確かに物の価値ではありませんし音の価値です。
音が良ければ1万円の商品を100万円で売ったとしても何も法律的な問題にはなりません、とは言え物事には限度というものがあります、限度を超えたビジネスは既にビジネスではありません、そして世間から支持されない企業は何れ淘汰されると思います。
オーディオ関連製品は、昔から他の電化製品と異なり一種独特の中古市場が形成されています。
オーディオはその時代によって技術的な進化が激しく、更にその時代でしか使っていない回路や部品の音が聞きたいというニーズが昔から存在します。
そういった技術的且つ電気工学的価値が存在し、中古品でもオーバーホールされて発売当時の価格以上の高値で取引される製品も少なくありません。
オーディオ業界には修理専門の会社が多数存在しており、そういった会社は常に代替え不可能な部品の確保にジャンク品を中古市場で買い漁っています。
既にメーカーの存在すらないサンスイなどの製品はどのような状態であれかなりのニーズがあります、これらは中古ショップの依頼で新品同様に修理されてショップに並びます、伝説のスピーカーユニットやアンプは発売価格の数倍もする物まで存在しています。
そういったオーディオショップ独自の新品に近い状態にした価値のある中古品ではなく、買い取り販売だけのサービスやネットのオークションなどで個人間で取引される単なる中古品は要注意です。
アンプやスピーカーユニットは精密品です、埃や汚れでかなり劣化してしまいます、こういった見えない部分の汚れが写真だけでは解らないのです、買ってケースを開けたら埃だらけだった、虫の巣窟になっていた、線香の臭いが酷い、油汚れが酷いなどの苦情がネットに多数上がっています。
どうしてもその時代の音が欲しいという強いニーズがあるなら、確実にオーバーホールしてから販売しているオーディオ専門ショップで発売当時より高値であっても購入することです。
それ以外の理由で中古品は絶対に購入すべきではありません、買ってから後悔するのは何事も最も良くない結果を生むことになります、それこそ「溝に金を捨てるようなもの」です。
ひと昔前まではFM放送はレコードと合わせて重要な音楽ソースの一つでした、コンポを買うときには必ずといってよいほどアンプと共にFMチューナーを買ったものです。
それも、FMとAM放送を受信するためだけの製品であるにも関わらず結構な価格がしました。
ラックスマンやアキュフェーズなどは、70年代でも10万円以上した高級機種も珍しくありませんでした。
しかし、今の時代は面倒な手順を踏まずに手軽にネットからダウンロードして音楽を楽しむ時代になりました。
そういった理由からか、今ではFMチューナーをオーディオシステムに組み込まれることも少なくなりコンポーネントとして単体製品も少なくなりました。
そんな時代ですが、この頃はワイドFMが誕生しFM放送が見直され始めてきているようです。
ただし昔のようにFMチューナーではなくて、エントリークラスのアンプやホームシアター用のAVアンプにおまけの機能のような感じで付いているのです。
イマイマの時代は、デジタル化してFMチューナーも安価なLSI一つで高性能な機能のFMチューナーが簡単に組み込めるのでしょう。
最も安価なワイドFM付きのエントリークラスのアンプを探していたら、ソニーから2万円程度でワイドFM付きのフルサイズコンポのアンプが出ておりびっくりしています。
ソニーダイレクトで税抜き1万9800円、家電量販店では税込みで1万7000円ほどです、スペックを見てもひと昔前のミドルクラスのアンプと同程度なのです。
昨年、エントリークラスのアンプの性能を確認するために4~5万円のアンプを3台購入したばかり、サブシステムに手軽に使えると考えてもそんなにエントリークラスのアンプのニーズが無いのでどうしたものかと。
どうしても気になってしまうこのソニーのアンプ、販売終了の前に買ってみようかと考えて実物を見に家電量販店に行きました。
音は聞けませんでしたがツマミ類やスイッチの感触は最悪です、重要なボリュームツマミもセレクタもプラスチックで回したときの感触はまるでおもちゃです。
液晶表示もこれなら不要ではないかと思うくらいの程度の入力セレクタだけの表示です、また全体的な作りも叩くとボンボンと鳴る薄っぺらいアルミの前面パネルなどトータルでは価格をそのまま表しており、とてもハイコストパフォーマンスとは言い難い代物でした。
音質や製品自体の作りなどトータルでのハイコストパフォーマンス機って、こうして探してみるとなかなか無いものです。
どんなにエントリークラスと言えども、アンプは最低でも4万円出さないとオーディオ製品と呼べる代物ではないようです、そんな製品も安かろう悪かろうでは話になりません。
オーディオ道楽を始めるとこれまでの感覚と違ってくる感覚が沸き上がってきます、その最たるものが音楽を聴く意味だと思います。
あくまでも自分の好きな音楽を良い音で聴きたいがためのオーディオであるはずです、それが音楽を愉しめなくなってくるのです。
何気なく聴きながせていた何時ものCD、その音の一つ一つが気になり始めてきます。
締まったベースの音が欲しいとか、耳をつんざくような生々しいトランペットやドラムのクラッシャーの音が欲しいなどと、ここで考えなくてはいけないことがあります。
それは先述の音楽を良い音で聴くのが本来のオーディオの愉しみなのです、音楽を聴くことがストレスとなり苦しくなってくるようであればオーディオ道楽を一旦は止めたほうが身のためだと思います。
重い機器を常に入れ替えたり頻繁に音の調整をしたり、納得いかなければ新機種を購入してでも貫く、でもそれをワクワクしながら愉しんで行うことがオーディオ道楽なのです、その結果においてこれまでよりも良い音で自分の好きな音楽を愉しめるのです。
ときどき見受けるのです、音楽を愉しんで聴くのではなく音のチェックのためにだけに聞いている(聴いているではなく聞いている)ような人が、こうなっては道楽としての本分を逸脱しています。
好きなことを愉しんで行えることが道楽の基本中の基本です、だから私はその時に心が欲する音楽しか聴かないのです、例え音質のチェックのためでも欲していない音楽を無理やりに聴くことはしないのです。
例え好きなジャズでも、自分に合わないと思うCDは身近には置かずに買って一度聴いたらすぐに売ってしまうか欲しいという人がいればプレゼントします。
音を追求する前に、オーディオを道楽とするなら音楽を愉しむことができる状況を継続させることが重要だと思ってやみません。
好きな音楽を愉音で聴きたい、その先にオーディオ道楽が存在できるのです。
オーディオ製品はあくまでも家電です、したがって部屋に置く場合には他の家電と同じようにインテリア性を損なわないようにしたいものです。
本当にインテリア性を意識せずにオーディオを思う存分に楽しみたい場合は、専用のオーディオルームを用意するのが好ましいと考えるのが私流です。
生活空間に違和感のないように、自然な形で音の有る空間を醸し出すというような美しいオーディオライフが好ましく思います。
その意味では、オーディオ道楽復活後はオーディオ&ホームシアター専用部屋と、リビングに置くサブシステムを完全に分けて考えています。
オーディオ専用ルームは逆に他のインテリアを置かずに、オーディオ関連のものしか置きません。
リビングのサブシステムは音を追求するのではなく、音楽を流し聴くようなBGM的な要素を多くして、周囲のインテリアと違和感なく調和するような形や色の製品を選んでいます。
とは言いつつも、ただ聴くだけの家電的なミニコンポではない、と言うのがオーディオ道楽を行う人間として最低限の拘りは出しています。
また、さりげなくそこにオーディオ製品が在るというように目立たない薄型のものを置くようにしました。
オーディオマニアの多くの人の家の中とは、生活の全てがオーディオみたいに部屋中にアンプやスピーカーが散乱しているのをよく目の当たりにしてきた私は、他者の振り見て我が振り直せではないのですがオーディオは生活の一部であって全部ではないという思いが強くなってきました。
オーディオを道楽としても、生活の中にはできるだけオーディオを持ち込まないというくらいにインテリア性を重視してほしいと思うのです。