
音楽を愉しんでいると自身の耳の変化というか、気になる音質や音色が変わってきていることに気付くことがあります。
よく言われるように、若い時は低音域に凄く神経がいってしまい低音域の良音再生に燃える頃があります。
サブウーハーという代物がホームシアター文化と共に生まれてくる前には、DIYオーディオでパッシブ型のスーパーウーハーを作ってみたりと何かと低音域に拘っていたものです。
そのうちにピアノの高音域やドラムのハイハットの高音域が綺麗に聴こえるスピーカーに出会うと、この輝くような高音域に魅力を感じ始めてきます。
そんなことの繰り返しで、現在の私がもっとも注力して聞き入る様に確認しているのが中音域と高音域の繋ぎの音域です。
この音域は周波数にして1Khzから5Khzくらいの層で、この音域が綺麗に再生されていると楽器の余韻やボーカルの艶という表現の生声のような響きが出るのです。
また2ウェイや3ウェイだと、ちょうどユニット間のクロスオーバー周波数がこの周波数帯にまたがっていますので、ネットワークが貧弱だと綺麗に繋ぎが取れずにバランスが悪くなります。
そんな意味で、この中音域から高音域にかけてはオーディオメーカーも最も神経を使う帯域かと思います。
また耳にはっきりと聞こえる中音域とは対照的に殆ど音として確認できない重低音域と超高音域も、ハーモニック効果で音色が変わってしまうという経験を繰り返していると凄くこの存在が気になってきます。
こういった空間でミックスされた音色が重要で、スピーカーの置き方や家具の配置も変えて音色の変化を確認するようになってくるのです。
耳が肥えてくるのか絶対的な耳の性能が年齢と共に劣化してくるのか、要因はいろいろとあるのでしょうが自身が納得する音作りって本当に時間がかかるとつくづく思う今日この頃です。

ちょっと元気が欲しい時には昔から美味しいものを食べて美味しいお酒を飲む、これが私流の一つのリフレッシュするためのカンフル剤でした。
それに似た感覚を感じることに良い音質で好きなジャズを聴くということがあります、こういった時に「愉音」とか「音の愉悦」などという言葉が脳裏に浮かぶのです。
音が精神に及ぼす影響などは昔から研究されていますが、そういった難しい学問的な話しは置いておいて、ストレスが解消し自身が元気になれることを見つけて何時でも実践できる環境を持つということが重要だと思うのです。
何時もじっくり聞くのが50年代のハードバップなどのモダンジャスですが、面白いことに元気が欲しい時のジャンルはロックに近いフュージョンなのです。
休日のお昼ごろからビールを飲みながら愉音で楽しむフュージョンは至福のひと時です、こんな時は誰にも邪魔されたくありません、なので携帯電話も電源を切ってしまいます。
またパソコンでブログを書いてもメールやスケジュールなどは一切見ません、せっかくのリフレッシュが台無しになりますから。
リフレッシュできて、明日のエネルギーを充電できるのならオーディオ道楽もまんざらではありません。
フォステクスのかんすぴキットの最上位機種の10CmフルレンジスピーカーユニットのP-1000Kを専用エンクロージャーのP-1000Eに取り付けてみましたので、今回はその音を聴いてみます。
フォステクス P-1000K+P-1000E

ずばり、音質は10Cmフルレンジということを抜きにしても悪くありません。
見た目こそユニットがむき出しの手作り感丸出しでとても高級感こそありませんが、音質は下手な小型スピーカーよりも正直鳴りが良いです。
低音域もそこそこ出るし、特に中高音域の張り出しが良いのでジャズやポップスを明るく軽快に聴かせてくれます。
豪快さは当然無理な期待なのですが、薄っぺらさはまったくなく意外と使える音質です。
サラウンド用のスピーカーなどとして考えるなら音色だけは合格点です、ただ実際のホームシアターで考えると定格入力が低くて話しになりません。
まして、ハイファイオーディオでメインではとても使えるような音質ではありません、価格からしてハイファイを求めるのは無理な注文なのですが。
そういう意味ではセットで2万円でも良い音質の小型ブックシェルフが沢山出ていますので、手作り感を得たい目的以外に購入する価値を見い出すことはできません。
それとやはり10Cm口径なので音圧が低いのに定格入力が20W台で、ちょっとボリュームを上げるとそれほど大きな音に感じないのにユニットが壊れんばかりの歪を発生させて音にならなくなります。
また、パワーを入れるとエンクロージャーの箱鳴りが酷くて実質的には5W程度が限界かもしれません。
小音量では元気に鳴ってくれるのですが、この程度の音量で限界だとベッドルームでのお休み用かPCオーディオでの使い方くらいしか思いつきません。
ただ、小音量だと今度は低音域が極端に弱くなり、確実にラウドネスをオンにしないと聴ける音にはなりません。
まあDIYとはとても言えたものではありませんが、若干なりとも手作り感を味わって小音量で楽しむ分には小型軽量で使いやすいかもしれません。

昔からオーディオマニアの間で論議される話題に、「季節によって音が変わる」というのがあります。
私もどちらかというと「確かに変わる」と思う派で、同じソースでも夏は低音域がもったりし冬は低音域の切れが良くなる気がします、この現象はあくまでも私の推論ですが湿気に影響すると考えています。
スピーカーのコーンは非常に軽い紙や布などで出来ており、これが湿度が高いと湿気で重くなり湿度が低いと乾いて軽くなるのではないかと考えています。
昔これを古くなったスピーカーを使って実験したことがあります、その実験方法とは同じスピーカーの片側だけのスピーカーに1g程度に切った消しゴムをくっつけて聞き比べるというものです。
ソースはモノラルに切り替え、左右同じ音を出すようにしてバランスで左右を切り替え音の違いを確認しました。
1g程度ではほとんど変わることはありません、ところが3g位になるとかなり音質に差が出てきました、低音域が誰が聞いても違う音色になります。
重くした方は低音域がかなり増すのですが後を引くようにどよんとします、元々のソースに入っている音の余韻とは異なりエコーがかかったようにもたつきます。
ただ薄いコーンが湿気だけで数グラムも重さが増えるのかという疑問は残るのですが、コーンが重くなると低音域が大きく変わるという事実は実証できました。
同じ空間に湿度の違う環境を作ることは不可能なので、自然な形での立証はかなり難しいと思います。
また湿度によって空気振動そのものが変化するのかもしれません、これもまた仮説の段階です。
更に温度や湿度による人間の持つ感覚のせいかもしれません、もっと言えば「勘違い」なのかもしれません、何れにしても季節によって「音が変わる」ように感じることは確かなのです。

どんな事でも「無難な方法」と「ベストな方法」とが存在しているように、音にも「無難な音」と「ベストな音」が存在しています。
そもそも「無難」というのはノンリスクを指していて失敗しないことを言います、なので音に対しても悪くはないが優れているわけでもないということです。
だいたいが「無難」というのは褒めるところが無い場合に評論家やマニアが多用する表現です、対して「ベスト」というのはその人にとって最高の方法であり個性が表れるのも特徴です。
なので音に関して言えば、音質的には悪い音かもしれないがずっと聴いていたくなるような好みの音質であればその人にとってはそれがベストな音だということです。
ハイファイオーディオ道楽という愉しみは、無難な音を探すのではなく自分自身の納得がいくベストな音を追求する旅でもあります。
誰に何を言われようが自分が好んで聴いていたくなる音をアンプやスピーカーを変えては探し続ける、その道のりは極めて長く厳しいものがあります。
妥協しても後悔が大きい為に適当に妥協することもできません、例え道楽でも自身の考えに妥協する人はビジネスも含めてあらゆることに妥協してしまう人です。
妥協を許されない道のりだからこそ愉しいのです、愉しいと思えなくなったらいつでも止めたらいいのです、だって道楽だからです、そこがビジネスとの一番の違いです。
生業としてのビジネスでの愉しみと道楽の愉しみ、まったく次元の異なる愉しみがあるのです、これもまた人生の陰陽バランスというものなのです。