私が現在所有しているオーディオ製品はセットものも1点としてカウントすると約150点ほどですが、意識して「コレクション」として差別化しているものはアンプだけで40点ほどです。
では私の中で「コレクション」として意識している製品と、そうでない製品の違いはなんだろうかと新ためて考えてみたのです。
この意識の差はあまり明確に自身の中に在るわけではないのですが、「コレクション」は普段使わずにあくまでも大切に保存しておきたいビンテージものや自分の中での思い入れの深い製品だと考えています。
したがって何があっても下取りには出さず、例え壊れてもジャンク屋には売らずに修理に出してまでも完動状態で手元に置いておきたいと考えています。
過去ビンテージものを修理に出したら最新の機種を買えるほどの費用がかかったこともありますが、それでもその音は今では買えないのですから貴重なのです。
対して「コレクション」と意識していない製品は、普段からメインやサブシステムの現役機や各種実験などのツールとして常に稼動させています、また壊れたらショップから購入する際にジャンクとして下取りに出してしまうでしょう。
オーディオ製品は今では勝手に廃棄できないのです、なので例え0円でも下取りしてもらう方がお徳なのです。
意識とは裏腹にオーディオ製品は使われてはじめて価値が出るという考えもあります、オーディオ製品からしてみればいったいどちらが嬉しいのでしょう?
何れにしても自分の中ではきっちりと区別しているようです、ただコレクションアイテムも現役で使用している機種もツールとして便利に使っている物も、私にとってはとても大切なものだというところだけは共通しているようです。
数あるオーディオメーカーの中にあって、BOSEほどオーディオマニアから酷評を食らっているスピーカーメーカーはありません。
酷評の多くは、業務用の小型スピーカーをベタ置きして鳴らしてみての評価などです。
解っている人はこういった使い方もしないし酷評を上げることはしません、業務用と解っていてその有益な使い方を探る方の道を選びます。
ちなみに、BOSEの小型スピーカーを狭い部屋のラックにベタ置きしてニアリスニングで聴くと聴くに堪えない音色がします、特に何ともいえない低音域の響きが気になり音楽鑑賞になりません、更に高音域がほとんど出てこないのです。
ところが、同じフルレンジ一発の小型スピーカーを20畳ほどの部屋の天井の隅に設置すると豹変します。
あれほど気になっていたブーミーな低音の意味が解ります、低音域は大きな部屋だと部屋全体に響かなくなります、つまりあの独特な低音はこういった使い方を研究して作られた味付けなのです。
大きな部屋での空間ハーモニック効果によって出ていなかった高音域も綺麗に聴こえてきます、ボリュームを上げるとまるで大型スピーカーでも鳴らしているのではないかと思えるほどのぐいぐいと迫るパワーを感じます。
本来101や201などの小型スピーカーは天井の角に設置し、3方の壁の反射で空間ハーモニックス効果によって聴かすスピーカーです、そもそもBOSEスピーカーは直接聴くスピーカーではなく間接的なハーモニック音を聴かせる為の設計をしているのです。
こういった意味では、喫茶店やカラオケスナックなどでは天井吊り下げ型のBOSEスピーカーを使うのが当たり前で、どこでも快音で鳴っているのはよくご存じかと思います。
ちなみにハーモニック効果とは絶大で、他のメーカーのスピーカーだとハウリング(マイクを使うと「ピー」となる音)を起こすような狭い部屋でもBOSEだと起きないのです。
普通は酷評を食らうと慌てて「正しい使い方」的な情報をサイトに上げたりするものですが、BOSEは昔からこういったことを一切せずに大人の対応をしています。
ある意味では、宣伝も何もしなくても施工業者は音質的なトラブルが無く依頼主から文句の一つも出ないBOSEスピーカーを次々に購入しては設置しています、その意味ではプロの評価は最高レベルだと思います。
価格も昔は高額でしたが、価格変動が無いので今ではリーズナブルな価格帯でしかも競合だったダイヤトーンも事業閉鎖したこともあり、マイペースに事業推進しているのでしょう。
ときどきパーソナル使用やホーム使用でのスピーカーを出しますが、大きな宣伝もしませんし勝手に売れていくのを待っているという余裕が見られます。
王者の余裕は往年のJBLやアルテックを思い起こします、やはり王者は強い、その強さに支えられた余裕は更に企業を成長させていくようです。
オーディオ技術も時代と共に大きく進化し、そして常識も180度ひっくり返るようなことが起きます。
70年代中盤に起こった日本のオーディオブーム、当時は大型のスピーカーユニットを使って大きな面積で音を出すことが低音再生の基本でした、つまり面の時代です。
その後、マグネットやコーン紙の技術の進化により、またエンクロージャー技術の発展が加わり、小型でも低音域が綺麗に出るスピーカーが続々と誕生してきます。
面で空気を振動させるのではなく空気圧の押し出す力で空気を振動させるのです、更にその空気圧をエンクロージャーで共鳴させ有効に使う方式が多数編み出されてきます。
近年では小型スピーカーユニットを使い、一つの点から全ての音が発せられるのが良いという楽器と同じ原理を再現するようなスピーカーシステムが多数誕生してきています。
それに連れスピーカーがどんどん小型化し、狭い空間でも高音質で試聴できるようになってきたのです。
時代と共に技術が進化し常識が覆ってくる、どんな世界でもそうですがオーディオも多分にもれず時代と共に常識がどんどん変化していきます。
その技術の進化や常識の変化を積極的に愉しめる人もいれば、その進化や変化についていけない人もいます。
これもまたビジネス思考と極めて酷似していると思わざるを得ません、道楽での思考は確実にビジネスにも現れるようです。
オーディオに限らずどんなジャンルの製品もそうですが安物はやはりそれなりの理由があります、オーディオで安価な製品というと「エントリークラス」と呼ばれるのですが、ここで言うのはそういうレベルの話ではばく取りあえず安く済ますために無名メーカーの物を買うことだけは止めた方がよいという話です。
オーディオメーカーの製品はどんなにエントリークラスの製品でもサーキットブレーカーなどの保護回路が入っており、オーバーロード(過電流)やサージ(逆起電力)に対して内部回路にロックがかかるようになっています。
これが無名の安物だとそういった保護回路が組み込まれていません、そしてたった一台の安物によりシステム全体に被害が及ぶこともあります。
オーディオはシステムであり、入口のプレーヤー類から出口のスピーカーまで全てが電線によって繋がれているのです。
例えば雷や回路部品の接触によるオーバーロード、例えば扇風機や電動ドリルなどでのサージ電流、普通の時には何でも無いのですが起こる時には予想できないことが起きてしまいます。
大学時代に私の友人に起きた悲惨な事件があります、音楽を楽しんでいる時に運悪く近所の電柱に落雷しカセットプレーヤーにオーバーロードが入り発煙、その際にスピーカーから爆音がしてアンプからスピーカーまで全て壊れてしまったのです。
アンプは国産なので電源からのオーバーロードは防げますが、ライン入力にオーバーロードがかかった場合にはフィルター回路も飛んでしまうので意味がありません。
こんな笑い話のような話はマンションであればマンション内の電源が保護されているので安心ですが、一軒家や小規模アパートであれば今現在でも本当に起こりえます。
オーディオは必ず名の知れたメーカーの製品を選び、メーカー保障+販売店保障が付いた正規ルートで購入することをお奨めします。
もう一つの安物の恐怖は詐欺製品です、実際ネットに上がっている詐欺報告ですが「真空管アンプを買ったら中身は安物のD級アンプで、真空管はヒーターだけ結線されており点灯しているだけだった」とか、「ラインアンプという製品を買ったら入力セレクタのスイッチしか付いていなかった」などというとんでもない製品が存在しているようです。
まあ、オーディオに限らずどの世界でも安物はやっぱり安物です、そして「安物買いの銭失い」にだけはならないようにしましょう、お金が貯まらない人は結局こういった安物を買ってしまうので結果的に使い物にならないかすぐ壊れてしまい、常に次から次へとお金が出ていくはめになるのです。
正規メーカーのオーディオ製品は新規で購入する際には現役のものをそれなりの価格で下取りしてもらえます、その意味ではエントリークラスの製品は別にしてミドルクラス以上のオーディオ製品は家電量販店ではなくオーディオ専門店で購入する方が結果的にお得です。
何故なら他店で購入した製品よりもその店で購入した製品は下取り価格を倍にしてくれるからです、特に高級ハイエンド製品や人気のミドルクラス製品は買った時よりも売った価格が高かったなどというスーパープレミアム製品も存在します。
最近のテレビコマーシャルやバラエティ番組のバックミュージックの多くに、私が大学時代や社会人になりたての頃に流行したモダンジャズがよく使われています。
こういったバックミュージックを聴くたびに当時を思い出すのですが、何故今こんなにも昭和な音楽が復活しているのでしょうか?
これはあくまでも推測ですが、近年の製作プロダクションの最高責任者の多くが私と同年代の人達です。
つまり当時のジャズは若者が未来しか見ていなかった高度成長期の時代の象徴であり、自分もよく聴いていた懐かしの音楽を選んでいるのだと思うのです。
そして当時のジャズやロックの多くが既に著作権がありません、つまり無料で自由に使えるのも後押ししているのでしょう。
その意味ではオーディオアンプのデザインも懐かしいデザインが復活しています、ヤマハは特にこれが顕著でここ数年のプリメインアンプのデザインは70年代の同社プリメインアンプのデザインそのもので70年代の同社プリメインアンプが最近の斬新なデザインのアンプのように思えてしまうのです。
こういった文化や学術の時代を越えた復活を「先祖返り」と呼ぶのですがファッションにも通じるようです、時々私が大学時代に流行ったファッションを身につけている若い人を見ると50年間の時代錯誤を起こしてしまうことがあります。
テレビなどでも取り上げられていたのですが、若い頃の両親や祖父母が着ていたファッションを写真などで見てかっこいいと感じてしまうようです。
時代は繰り返すと言いますが、まさかオーディオ文化が50年前に戻るとは流石に考えたことも無かったです。
そう言えばレコードやカセットテープ、更にはオープンテープやビデオテープなどのアナログ媒体も復活しています。
国民総貧困時代、でも皆が未来を見て強く逞しく生きていた元気で健全なる古き良き昭和の時代、そういう国民総前向き時代の文化の復活は大いに歓迎すべき社会現象なのかもしれません。
そしてオーディオ道楽復活で改めて驚いたのが、70年代~80年代のアンプの中古価格の高騰です。
名機と謳われた多くは当時の発売価格を上回り、当時誰も見向きもしなかったアンプまでも高値で取引されているのです。
ビンテージアンプコレクターの私としてはコレクションを売る気は一切無いので高騰しようが暴落しようが関係はありませんが、コレクションの価値が上がることに対して決して嫌な気持ちにはなりません。
古き良き時代の日本のオーディオ技術の崇高さ、現代の若い人が実際に手にして感動することは実に歓迎すべきことだと思います、こういった生きた善き経験を通した人が次代の日本のオーディオ技術を支えていくのです。
「感動」はどんな経験にも勝る明るい未来を切り開く原動力となります、何歳になっても日々感動して過ごしたいものです。
感動を通して右脳は活性化し肉体も精神も若返ります、感動することを忘れた人間の脳は老化し衰退していくだけです。