
過日の新型コロナウイルスパンデミックによりテレワークやソーシャルディスタンスなどの新たな社会構造の変化が次々と飛び出しました、そんな状況はオーディオ界にも大きな影響を及ぼしました、それはオーディオの中古市場が過去最高値というくらいにまで高騰したことです。
その変化を感じたのがCDやDVDなどのオーディオやホームシアターのソースの中古価格が上昇したことによります、更にこの10年ほどの間に発売された割と新しいオーディオ関連製品の中古市場が軒並み高騰しました。
人の心理とは実に解り易いです、外出を控え家に籠ってすることは音楽や映画などの鑑賞というわけです、こういった状況下においては賢い人は購入を控えます、そして世の中の流れを読みつつ沈静化を待って購入のタイミングを見定めるのです。
ただし逆にこういった買い手市場の際にはこれまで探しても出てこなかったレア物が多数出てきます、更に賢い人はこういう時期を逃さず買える時に価格に無関係に確実に確保するのです。
どんな時代でも世の中の動きに合わせるのか、それとも独自の感性に従って他者と逆の流れに乗るのか、その結果は数年後には雲泥の差となります。
私は常に自身の感性に従って動きます、そしてその結果も潔く受け入れる覚悟でいます、どんなことも世の流れに翻弄されるのか自身の感性で動くのか、この判断と行動は非情にもその後の運命を決定する程の結果を齎します。

オーディオの最大の愉しみは良い音の追求です、昨日よりも今日、今日よりも明日、少しでも良い音が出るように調整や機種変更をして日々音質を追求します。
その過程では1本1万円以上するケーブルを使ったり、6万円も出してCDプレーヤーとアンプの間にノイズカットのライントランスを入れたりするのです。
更には、電源ノイズを減らすために完全に外部とアイソレーション出来るパワートランスまで20万円も出して購入したりします。
実は、アンプやスピーカーよりもこういった目立たないアクセサリー類に意外とお金がかかるのです。
自身の中の納得と妥協との戦い、楽しくもあり極めてストイックな世界だと思います。
こういった生活するのには何の役にも立たない追求道楽は、一部の男性特有の思考だと思います。
生きる為には不要な物にお金と時間をかけ、更には自身を追い込む程のストイックなまでの闘い、道楽とは何とも理不尽なる存在かもしれません。
でも、こういう道楽が有ってこそのビジネスなのです、こういった人の多くはビジネスにも同じようなストイックさを求め大きな事業を構築していきます。
さて、そんな道楽でも常に追求だけでは気が休まりません、そこでメインシステムから解放され、お気軽システムのセカンドシステムを構築している人も案外多いのです。
私はメインの他に3つのサブシステムがあります、サブシステムはBGM的に音楽を気楽に楽しむのが目的ですからエントリークラスの製品で構成したり、余程の音でない限りは細かな事を気にせずに済むシステム構成にしています。
この二極分化のメリハリもまた、長くオーディオ道楽を続ける秘訣かもしれません。

90年以前のオーディオ製品で名機と言われたビンテージ製品がオーディオ中古市場で高騰しています、オーディオショップの中古販売サイトで過去の履歴を調べてみた結果なのですが10年前と比べて軒並み2倍以上の値段になっています。
それでもネットに出るや否や即売状態となっています、現在オーディオ界に何が起きているのでしょうか?
考えるに昔の往年のオーディオマニアがビジネスから隠居して自由な時間が取れるようになったのではないでしょうか、これまで仕事で忙しくてオーディオを楽しむ時間が無かったのでしょう、隠居して時間が出来るようになり好きなオーディオに使える時間が取れるようになったのではないかと思うのです。
値上がり率が高いのがラックスマンのアンプです、特に真空管アンプは40年以上経っている中古にもかかわらず発売時の3倍という価格が付いているものもあります、アンプではラックスマンとアキュフェーズ、海外品ではマッキントッシュとマランツの人気はやはり高いです。
そもそも往年のオーディオマニアは当時20歳代ですから当時10万円以上のアンプは月収手取り額の倍ですから神の領域のアンプだったわけです、買いたくも買えなかったというストレスが買える年代になって爆発しているのかもしれません。
押さえていた好きなことを生きている間にやれるのは本当に幸せなことだと思うのです、そして本当に好きなことは例え一時的に中断していても何時かはまたやれるようになります。
やれないときには復活の天の時をじっと待つ、その待った期間に相応して再開の時は喜びが大きくなるのです。

「歴史は繰り返す」とはいえ、こと電化製品に関しては進化するのみで旧技術に戻ることは普通は有り得ません。
ただしオーディオだけは例外のようです、2000年以降に20年以上前に廃れたはずのカセットテープ&カセットデッキが復活し次いでレコードを聴く為のレコードプレーヤーが復活し新製品の製造も開始されています。
更には70年代にトランジスタ全盛時代を迎えたアンプも真空管アンプのブランドが乱立し今更ながら脚光を浴びています、真空管アンプの大御所であるラックスマンも近年久しぶりに真空管アンプをリメイクし復活させました。
このアナログの復活は私的には大歓迎です、何故なら1000枚以上もあるジャズレコードが再び最新のレコードプレーヤーで聴くことができるのですから、更にはレコードプレーヤー用のイコライザーまで最新デジタル技術を駆使した新製品が誕生してきています。
そもそもオーディオは最終的にはアナログ回路によって電流増幅されスピーカーで空気振動(アナログ)に変換されるわけです、つまりオールデジタルでは音にならないのです。
そういう意味では音質を最終的に決めるのはアナログ回路です、であれば入口から出口までオールアナログの方が音質をコントロールしやすいというのも納得できます。
デジタルオーディオの雄であるCDプレーヤーは、内臓のDACによってアナログ出力する機械という割り切りによってアナログメディアであるカセットテープやレコードと共存できます。
つまりアンプはDACを排除したフォノイコライザーとアナログ増幅機に注力でき、アナログによる音質向上に注力できるようになります。
まさかのアナログ復活、この時代が来ることを正確に読めていたならサンスイはどんなことをしても生き残りを図ったのでしょう、時代の変化とは企業も人も大きなチャンスでもあり逆に大きなピンチでもあるのです。
「歴史は繰り返す」、これを信じて再び天の時が来るのをじっと耐えて待つのか、それとも積極的に変化に順応するのか、この選択をした2者は生き残りそのどちらも選択できなかった中途半端に時代に翻弄された者は確実に淘汰されるということです。
どの時代もどの業界も、生命体も技術や機械もこれに関しては例外はありません。

生演奏や高音質のオーディオ製品で音楽を愉しむことによって耳は音質に確実に敏感になっていきます、ここでオーディオに対する耳の成長ステップというのが存在しています。
先ず最初のうちは低音域に神経がいきます、豊かに低音が響いているかは解り易い尺度でもあります、そのうち低音域の質の違いが解ってきます。
同じ低音でもレスポンスが早くて切れが良く硬質な感じの低音もあれば、部屋に充満するようなドロッとした粘質系の低音もあります、こういった音色の違いは各種のスピーカーを日頃から聴き比べていると自然に解ってくるものです。
次の段階は高音域です、これも最初のうちは高音域が出ているかとか伸びているかなどですが、そのうち同じドラムのハイハットやクラッシャーでも響き方がまるで違うことが解ってきます、音の響きや余韻などに神経がいくようになるとかなり耳は肥えてきています。
そして最後に到達するのが中音域です、中音域は多くの楽器や声の主音域であり音質の要となる領域で出て当たり前の領域でもあるのです、それだけにスピーカーの善し悪しが全て出るとも言えるし最も違いが解りずらい領域であるとも言えるのです。
ボイスでは「艶」と言われている生の声に近い繊細な響きかどうかとか、ピアノやサックスなどが張り出しているがうるさく感じないとか、微妙な音質の違いを聞き分けるにはかなりの経験が必要になってきます。
こういった音質そのものではなく全体的な音の傾向を「音質」ではなく「音色(ねいろ)」と言い表します、音質ではなく音色を感じるようになるとかなり耳が肥えてきていると思います。
また不思議なことに音色に大きく関与しているのが本来であれば悪者扱いされる「歪」です、どの周波数帯域で僅かな歪が生じているのか、この歪によって音色が大きく変わってきます。
歪はアンプとスピーカーに多く存在しています、その固有の歪が音の個性となって現れるのです、ちなみにデジタルアンプは歪がゼロです、その意味ではスピーカーの個性を出しやすいとも言えます。
最初のうちはどのスピーカーやアンプで聴いてもみんな良い音に感じます、それはまだオーディオの耳に成長していない証拠です。
耳もステップを踏んで成長していくものです、経験を通して音質や音色を聴き分けられるように可能な限りいろいろな製品の音を聴いてほしいと思います。
どんなことも一朝一夕では叶わないということです、オーディオも自分の耳が熟すのを待つという余裕がないと本当の意味でオーディオを心から愉しめないのです。
そして本物と言われる名機の音を何度も聴いて耳を善い音に馴らしておくことも重要です、なぜなら比較する音が悪ければ善い音かどうかを聴き分けることができないからです。