5.1Ch入力のAVアンプや5Chマルチチャンネルパワーアンプと組み合わせて、本格的なホームシアターを愉しむ目的で作られたソニーのデジタルサラウンドプロセッサSDP-EP9ES(1997年発売、定価8.8万円)です。
私が本機を購入した直後に、入出力のフロンドエンド機能を充実させた高級AVプリアンプTA-E9000ES(1998年発売、定価20万円)が発売されました。
ほぼサラウンドプロセッサー部は同じでこの価格、もっともデザイン性などもかなり高級感溢れますが、逆に言えば本機SDP-EP9ESが如何にハイコストパフォーマンスな製品であることを証明しています。
一つの機能だけに絞った製品は、それを必要とする人にとっては余計なところにお金をかけていない分極めて安価に調達できるということです。
さて、今では安価で高性能なAVアンプが多数販売されています、最新のドルビーサラウンドも対応していない本機を使う意味は無いのですが、過去の遺産を掘り起こしてサラウンドの歴史と当時の性能を学ぶのも道楽ならではの愉しみというものです。
道楽の一つの愉しみに歴史やその時代背景を学ぶことに在ります、オーディオの場合は実際に当時の音を聴いてみないことには生きた知識は得られないということです。
ソニー SDP-EP9ES(上)
下はデノンのハイエンドDVDプレーヤー、DVD-A11(2003年発売、定価28万円)
入力は光デジタル3系統にデジタルコアキシャル1系統のデジタルのみでデジタル信号のまま信号をエンハンスしたのちにサラウンド処理し、6Chデジタル信号を別々にDACでアナログ変換するという仕様で何とも贅沢なスペックを持つ製品です。
しかも当時では最新鋭のソニー独自の方式で設計されたDACを積んでおり、アナログ変換の際に僅かな歪みを生じるジッターをゼロに抑えたという優れモノのDACです。
ちなみにジッターをジッターノイズと呼ぶ人がいますが、正確にはジッターはノイズではありません、ジッターとはデジタルからアナログ変換の際の波形の僅かな時系列的な歪みのことを指します。
デジタルサウンド処理に加えてサラウンド処理も本格的で、ソニーはこの製品のために自社の大きさの異なるスタジオ3セットやホールで反響音などの音質特性を実際に測定して、それを元にサラウンド成分の調整を行っています。
このため、サラウンドモードによってかなりの音質&音場バリエーションが愉しめます。
AVアンプは、映像プロセッサ・サラウンドプロセッサ・DAC(デジタル対応の製品のみ)・マルチパワーアンプ・入出力コントローラーなどから構成されますが、本機はこのうちオールデジタルのDACとサラウンドプロセッサのみの製品でありオーディオ&ホームシアター製品の知識があれば如何様にも使える製品と言えます。
極端な話が、サラウンドOFFモード(2Ch)で使用すれば20年前の音が再現される外付けDAC付きデジタルプリアンプとしても立派に使えるのです、こういった粋な仕様である製品を当時の私が放っておくわけがなく迷いもせずの購入でした。
ホームシアターの音声のみのサラウンド・プリ・プリアンプとしてしばらく使って、その後はオーディオシステムを5.1ChにしてCDソースで音声だけをサラウンド化して愉しんでいた時期があります。
プリ・プリアンプとはグラフィックイコライザーやハーモナイザーといった製品を指し、プリアンプやプリメインアンプ、またAVアンプとレコーダーの間に入れて音質や音色調整のために使うアンプです。
その意味では、デジタルプリアンプ+DACという使い方で現役で使うという手もあります、こういった製品は本来の使い方以外にも工夫次第で如何様にも応用できるのです。
リモコン無しでも全ての設定がボタンで操作できるところも評価できます、イマイマのAV製品はリモコンが壊れると何もできません。
さて音質ですがソニーらしい骨太な音質です、全体的に元気で明るい音色でジャズコンサートホールモードでの再生は絶品です、まるでジャズのライブハウスにいるようです。
サラウンド効果のテストはリアチャンネルだけをプリメインアンプに繋いで音質確認を行いましたが、反響音の再現がそれぞれのモード別に特徴を持たせており実に見事です。
中高音域は切れ味の良いシャープさもあり、ピアノやハット系ドラムの音も綺麗です、それでいて嫌みな刺激が一切ありません。
デザインは無骨な感じを受けますが、いまだにオールデジタルAVプリアンプとしても充分に使えます。
また、ホームカラオケシステムのサラウンドプロセッサーとしてマルチパワーアンプ方式で本格的なサラウンドによるカラオケシステムなどにも利用できます。
部屋にいながら、まるでコンサートホールのステージで歌っているかのように前後360度から別々の音が聴こえるなんて考えただけでもワクワクしませんか?
こういったアイデアが出せるのが道楽というものです、使い道が無くなった製品を本来の使い方以外で活かす道を探る、これが道楽の正道だと思います。
※ピュアオーディオ&ピュアホームシアター製品の評価記事はこちらのブログを参照下さい。
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