昔から多数存在しているオーディオアクセサリー類ですが、本当に音質向上に効果があるのか誰しも疑問に感じていると思います。
最も多いのがケーブル類です、低インピーダンス(交流抵抗)を謳う高級ケーブル類ですが、正直ハイエンドアンプにハイエンドスピーカーを繋いで試聴しても音質の違いを聴き分けられる人は殆ど居ないと思います。
10メートル以上の距離をぐるっと引き回す場合には効果があっても、通常サイズの部屋で愉しむ程度であればハッキリ言うと無用の長物です。
私も過去には、CDプレーヤーが出始めのころはマランツのライントランス、レコードプレーヤーやアンプに振動を伝えないインシュレーター、スピーカーケーブルなどを多種使ったことがありますが、その価格に対する違いを発見することは正直言うとできませんでした。
大理石の石板の上に針のようなピンで支える10万円もするインシュレーターは、本当に価格だけで相当高額なハイエンドレコードプレーヤーでなければ効果も期待できないと思います。
それよりもソニーの80年代のミドルクラスのアンプはシャーシそのものを非金属の一枚形成された物を使用しています、こちらのほうが電磁ノイズ対策など実質的な効果が期待できます。
ライントランスなどは80年後半で5万円もしましたが現在のCDプレーヤーでは回路や部品の特性上意味も成さない代物です、つまり使う根拠がどこにも見当たらないのです。
ライントランスとは、出始めのころのCDプレーヤーにおけるデジタルからアナログに返還する際に発生した高周波ノイズがラインに乗るのを除去する目的で使用するものです。
アナログ全盛の時代には意味があっても、デジタル全盛時代には意味もなさないものが高価で取引されるのはもしかしてそういった電気的知識が無い人が知らずに買っているだけではないでしょうか?
まさか、この時代に80年代後半に出てきた骨董価値も無いCDプレーヤーを一緒に買うのでしょうか?
存在という骨董価値はあっても、音質に意味の無いオーディオアクセサリー類は本当にどうかと思うのです。
そんなスピリテュアル的な気持ちの問題だけで高価なアクセサリー類を買うのであれば、その費用をアンプやスピーカーに振り分けた方がはるかに効果があります。
使ってみたいとか持っていたいという喜びなら別ですが、アクセサリー類はその技術的根拠と使用した場合の効果をしっかりと理解したうえで購入して欲しいと思うばかりです。
世界の三大オーディオ大国と言えばアメリカ・日本・イギリスです。
他にヨーロッパ各国にも存在していますが、この3ヶ国は歴史も古いし何せオーディオメーカーの数が半端ではありません。
現在生き残っている日本のオーディオメーカーには、オーディオメーカーを持たないアジアの国などから資本を受けるなど世界中から注目が集まっています。
日本人から見ればエントリークラスの製品でも、海外の評価では一流オーディオブランドの高級アンプの評価を受けます。
特に日本のオーディオ製品は、音質に加え壊れにくく錆びつきも少なく何十年も使えると大きな評価を受けて中古であっても高値で取引されているのです。
日本では数千円で取引されている過去のエントリークラスの製品でも、海外のネットオークションではびっくりするほどの高値で取引されるのは珍しいことではありません。
生まれながらにこんな素晴らしい環境が揃っている日本のオーディオ事情、オーディオマニアでなくても日本に生まれて良かったと思いませんか?
まあ、オーディオだけではなく自動車も他の家電も本当に日本製品は世界中で高く評価されています。
好きなように道楽を選べ、そして苦なくそれを実現できる、こんな国は本当に稀だと思うのです。
世界ブランドの優秀なオーディオ製品をポンと買える日本人、本当に幸せだと思うばかりです。
私は音の表現で「音質」という表現と「音色(ねいろ)」という表現を使い分けているのですが、これには訳があるのです。
音質は低音域や高音域などの音の質そのものです、レンジが高低に伸びているか締まっていて切れが良いのかもたついているのかなどです。
対して音色というのは、例えば同じ音質でも広い部屋と狭い部屋での響き方が違うように微妙なニュアンスでの味付け的な要素を指しています。
細かい事をいうと余計に解りづらいのですが同じ周波数の音でも金属のお皿を叩いた時の音と焼き物のお皿を叩いた時の音はまるで違います、金属の方が叩いた瞬間からしばらく同じような音量を保ち少しずつ細かなビブラートを残しながら小さくなり消えていきます。
実は基本の周波数の他に複数の小さな周波数の音が出ており、これが合成されてビブラートが生まれているのです、焼き物の場合は叩いた瞬間だけは大きな音量ですが急速に音量が減少しビブラートはありません、つまりこういった微妙な違いを音色として表現して聴き分けているのです。
さて、このような音色の違いはアンプの増幅回路に使われている負帰還(NFB)回路によって生まれていると言っても過言ではありません、必ずしもそれだけではありませんが要素的には大きな位置を占めています。
負帰還(NFB)とは1937年にウェスタンエレクトリック社とAT&T(アメリカの電気通信局)が設立したベル研究所によって提唱され、1947年に発明者である技術者の名前を付けてウイリアムソン増幅回路として発表された方式です。
原理は増幅回路を通って増幅された電流を再度位相を逆にして増幅前の信号とミックスさせて再度増幅させるというもので、ノイズ成分はキャンセルされ信号成分だけが増幅される為に大幅にノイズを低減できるというものです。
ただしノイズは大幅に低減するのですが音のシャープさが落ち、切れの悪い音になることが知られています。
このNFBの負帰還量やどの帯域の周波数に絞ってNFBにかけるかなどが各社のよって異なり、メーカー別のアンプの音質や音色となって現れてくるのです。
ちなみにラックスマンのアンプの中には周波数帯を2つに分けてのデュアルNFB方式をとっているアンプがあります、このアンプの音色は独特でマニアの間では「風邪引き声」もしくは「鼻づまり声」と称されています。
これもまた好みの問題であり、温かみがあってマイルドで聴きやすいという人もいます、聴感覚も十人十色であるようにオーディオアンプの音色も十機十色だということです。
オーディオの歴史の中で、どうしてこういう製品を作ったのだろうかという世に言う迷機と呼ばれるオーディオ製品が存在しています。
例えば、バブル景気直前に日本のオーディオ界を引っ張ってきた高級オーディオメーカーであるラックスマンが経営不振でカーオーディオ大手のアルパインの傘下に入ります。
この直後に、それまでの高級路線から普及版の製品を突然出したのです、これが世に言う迷機で何と真空管とトランジスタのハイブリッドアンプだったのです。
プリアンプの初段にFET、最終段に真空管、そしてパワーアンプにハイパワートランジスタを用いたのです。
しかも、それまでのシャンパンゴールドからブラックフェースになり、高級感を誇ったラックスマン独特のフェースデザインもあたかも安っぽいデザインになってしまいました。
価格も普及版の価格で、当時の798戦争を意識した価格帯で勝負してきたのです。
これにはマニアもビックリ仰天です、面白半分で買ったマニアもいたくらいです。
こんな迷機と言われたアンプですが、最近になって真空管とトランジスタのハイブリッドが音色的に評価され始めたのです。
音色的に評価され、その作られた意味が理解され始めると途端に迷機から名機と謳われるようになるのです。
新たな試みは何時の時代もなかなか受け入れられないものです、でも技術に誇りを持って作られた物であれば何れは評価されるようになるのです。
オーディオ界には、このような突然誕生してくる世に言う迷機が多数存在しているのです。
ホームシアターで映画館のような迫力ある音での臨場感を愉しむ場合に重要なのが重低音です、ここでホームシアターに求められる重低音とハイファイオーディオに求められる重低音は質が異なるということを念頭に置いて下さい。
ハイファイオーディオでは小型スピーカーの重低音域の補正がその役割です、したがってメインの小型スピーカーの音と方向や広がり方と調和をとる必要があります。
そういった意味ではフロントにスピーカーが付いているタイプやバスレスダクトがフロントに付いているサブウーハーが理想的で、低音がまっすぐ飛んでくるタイプが合わせやすいです。
対してホームシアターで求められる重低音は、何処からともなく聞こえてくる部屋に音が充満するようなドロっとした重低音が理想的です、これを実現させるサブウーハーは背面や内部にユニットが付いており底面から間接的に重低音を垂れ流すタイプです。
またオーディオとホームシアターを融合させて愉しむ人が多くなってきましたが、この場合はフロントからまっすぐ飛んでくるハイファイオーディオ向けのサブウーハーが適役でしょう。
たかがサブウーハー、何故いろんな方式が存在しているのかを疑問に感じて自身の目指す理想のスタイルに合った方式のものを買うようにしましょう。
何事もそうですが意味も理由も考えずに趣向だけで闇雲に行ったとろこで本質は見えてきません、そして意味も無いものを買ってしまっては本来の目的を達成できずに損をするのです。
ちなみに私はホームシアターとオーディオの混在システムを組んでいますがサブウーハーはホームシアター向けの重低音を垂れ流しする間接タイプを使っています、ステレオ再生でオーディオを愉しむ場合はフロントスピーカーがオーディオ用の低域まで出るトールボーイなのでサブウーハーは電源を切って使わないという方式で両立させています。