
80年代前半にトリオやパイオニアと共にオーディオ御三家と呼ばれたサンスイですが75年頃からの快進撃は凄かったです、一時期はアンプのシェア40%という快挙を成し得ますが自ら勃発させた85年の798戦争以降サンスイの経営に突然のように陰りが見え始めます。
1974年から12年間代表を務める藤原氏から1986年に伊藤氏に変更すると同時に、伊藤氏の元で会社再建策が実施され希望退職者を募り社員数を25%カットします。
1987年にCIを実施しロゴを変更します、1989年にはイギリスのポリーペックインターナショナルから156億円の出資を受け拡大戦略を打ち出します。
運が悪いのか時期が悪いのか、リスタートをかけたその直後にバブル経済が崩壊しオーディオ氷河期に突入します、更に悪いことにポリーペックインターナショナルが経営破綻し後方支援が無くなり再び財務悪化に陥ります。
1990年に代表を稲宮氏に交代し、1992年に今度は香港のセミテックの資本傘下に入りますがセミテックもこの10年後に経営破綻してしまいます。
1994年からは毎年のように代表が入れ替わり工場や本社などの不動産を売却し移転、更には社員のカットなどサンスイはどんどん衰退していきます、2000年には社員数が50人を割り経営状況は更に悪化の一途を辿ります。
2001年にAU-111Gビンテージを最後にアンプの製造が途絶えます、これが事実上のサンスイのオーディオ史の終焉となります。
2002年にはついにオーディオから撤退し映像機器やパソコンのディスプレイなどを手掛け会社の生き残りを模索しますが、オーディオで築いた金字塔が逆に邪魔をして新事業も上手くいきません。
2010年以降は上場廃止など事実上のゾンビ状態と化し、2014年に破産手続きが開始され2018年に完全に法人が消滅します。
この一連のサンスイの衰退劇をオンタイムで見てきた私として、2000年以降のサンスイはとても直視できるものではありませんでした。
アンプからいきなりパソコンディスプレイです、オーディオ界を引っ張ってきたアンプの巨匠が何を考えているのだろうと正直思いました。
そして破綻後に経済アナリストからこんな厳しい言葉が浴びせられます、「山水の社名の由来は"山のごとき不動の理念と水の如き潜在の力"だそうですが、同社が求めたのは"山のごとき不動のオーディオキングの名声と水のごとき豊富に見えた海外資金"だったようだ」と。
海外資本に染まったかつてのアンプの巨匠、日本メーカーは面倒な株主構成のサンスイには暖かい手を差し伸べたくもできない状況だったに違いありません。
1990年以降のバブル崩壊とオーディオ氷河期のダブルパンチ、そんな中でも安易に他者依存せず自助努力で乗り切ったオーディオメーカーも多いです。
何かを間違えてしまったのでしょう、「優秀な技術も人材も、盤石な経営母体が有ってこそのものだということを忘れるべきではない」、当時の私にとっては大き過ぎる学びでした。

私のオーディオ製品の中で、同じものを2台所有しているものが幾つかあります。
この理由はマチマチですが、多くはコレクションとして残しておきたいものだけど現役としても使いたいと思えるものです。
多くはしばらく使ってしっくりくることを確認した後に買い増しします、場合によっては既に手に入らない事もあります、そんな時は良質中古を探し求めます。
この代表格がサブウーハーのデノンDSW-7Lです、色違いで2台所有しています。
また、実験でどうしても2台必要な製品があります、その代表格がサブウーハーのヤマハYST-FSW050です、購入の際にショップの店員さんに何度も確認されました。
まあ、普通は1台で事足りるサブウーハーを同時に同じものを2本買う人は私くらいでしょうから、何に使うのか不思議だったのでしょう。
また、年代が変わり型式が事なってもスペックが同じものであればそれを買い求めます。
この代表格がオンキョーの小型ブックシェルフD-202AXとD-202AX LTD、同じくオンキョーのハイコンポアンプA-905XとA-909Xです、またティアックのハイファイデジタルアンプのAG-H600も然りです。
また、サンスイの7シリーズのアンプは年代によって音色が違うので年代ごとに4台所有しています。
オーディオって同じメーカーでも年代によって音質や音色が大きく変わってきます、その音が欲しい時にここに無いというストレス、これを回避しているのかもしれません。
音もある意味では趣向品だと思うのです、お酒やお菓子と同じなのではないでしょうか?
つまり、何時でも在るという安心感ですか?

設立来ハイエンドアンプで日本オーディオ界のリーダー的存在のラックスマンですが、昔からオーディオショップであろうが家電量販店であろうがどこで買おうとほとんど値引きしてもらえません。
おそらく代理店の条件として値引き販売を行わない契約になっているものと推測しますがその姿勢は徹底されています、他のメーカーでは発売当初から10%は定価から安くしてもらえ、更には旧型になれば最大で30%程値引きしてもらえます。
しかしラックスマンに関しては旧型でもほとんど値引きしないのです、したがってラックスマンだけはポイントが多く付くショップで購入するのが価格的なメリットだけを追求するならベストな方法だと思います。
このラックスマンの一切の値引きをしないという方針はマニア諸氏は「流石、ラックスマンは崇高だ」という人もいれば、「トップブランドに胡坐をかいている」という人もいます。
またラックスマンの特にプリメインアンプは、中古市場でも高値で取引されているばかりか真空管アンプに関しては発売当初の定価の2倍以上もする製品もぞろぞろ存在しています。
真空管アンプはパワーアンプなども含めて軒並み3倍以上の価格で、キット製品までも例外ではありません。
ラックスマンのアンプは私も含めて一度買ったらなかなか手放す人も少ないのは確かです、それだけ愛着を感じる製品を生み出すブランドなのかもしれません。
私はこういった事実を真摯に受け止める派で「ラックスマンは崇高なブランドである」と明言します、持っているだけで価値観を味わえるアンプはそうそう在りません、ラックスマンオーナーは皆さんも同じ気持ちだと思います。
音色も独特の持ち味がありますがオーラを放つ存在感を示すアンプ、そうそう存在するものではありません。

オーディオ道楽復活後は日夜オーディオ妄想が止まりません、先日は「間接オーディオっていうのはどうかな?」なんて漠然と考えていました。
光には間接照明というのがあります、音にも間接音響というのが在ってもいいのではないかと思うのです。
間接音響といえば隣の部屋に回り込んでくる音が間接音であり、直接スピーカーから出ている音とは異なり高音域が遮断された音で刺激の無いぼんやりとした音がします、これは光の間接照明と同様で刺激が無く聴きやすい音でもあります。
高音質を目指したハイファイオーディオではありませんが、何かをしながらの「ながらオーディオ」としては邪魔にならない実に好ましい音がします。
そこで密閉型の小型サラウンド用スピーカーを使って実験してみたのです、スピーカーを後ろ向きにして壁にスピーカーユニットが向くように配置して音楽を聴くのですが、これが思いもよらない効果がありました。
それはどこから聴こえてくるのか解らないという効果で、臨場感こそ有りませんがどこに移動しても同じような音質と音量で聞こえるのです。
また懸念していた高音域の減少もそれほど大きくなく、しっかりと高音域も聴こえてくるのです、これにはかなり驚きました。
後ろの材質や反射の仕方で聴こえ方がガラリと変わり実に面白い実験でした、置くだけで間接音響が出来上がるというスピーカーが在っても良いと考えてしまいます、また一つ愉しい夢が生まれそうです。

オーディオ史には数々の戦争が起きており、これも後に多くのレジェンドや武勇伝を残しています。
さて80年代のアンプ798戦争が終焉を見せた頃に突然のように勃発したのがハイコンポ戦争でした、ハイコンポとはミニコンポサイズ(幅30Cm程度)の製品のうちフルサイズコンポの定格出力だけを絞り音質はフルサイズコンポに劣らぬハイファイ製品を指します。
またハイコンポの暗黙の定義は、システム販売と並行して単体でも発売されていることでした。
火付け役はケンウッドのK's(ケーズ)シリーズで、アンプのA-1001はユニークなスタイルと音質であっという間に大ヒット&ロングセラーを構築していきました。
オンキョーはフルサイズコンポのインテグラシリーズで培った技術を投入したインテック205シリーズとインテック275シリーズを展開します、これもまた人気を博しインテック両シリーズも新製品が出るたびに大ヒットを飛ばしました。
ビクター・デノン・パイオニア・マランツなどの各社も一斉に追従し、こうしてオーディオ界はミニコンポ一色の世界に移行していったのです。
慌てたのはサンスイです、遅ればせながらAU-α7を出しますが既に先行他社が築いた要塞はあまりにも強固で参戦すらさせてもらえない状況となったのです。
この結果サンスイは体力をどんどん奪われていく結果となってしまったのです、戦争とは常に非情な結果を齎すものです。
最後になりましたが特筆すべきはハイコンポの音質です、フルサイズコンポのエントリークラスのアンプの価格の2倍近い価格のハイコンポのアンプ群は定格出力こそ低いものの決して馬鹿にできない高音質のアンプが多いのです。
価格帯は6万円前後が主流ですが、3~4万円前後のフルサイズのエントリークラスの音質よりも断然上です。
「小粒でもピリリと辛い山椒」という言葉がありますが、「小型でもビビルくらい高音質なハイコンポ」と言いたくなるほどです。
ケンウッドやオンキョーのハイコンポは、スピーカーさえ選べば下手なフルサイズのアンプを買うよりも低域もしっかり出るし中高域の切れ味も抜群です。