
アンプの音質の差は通常レベルの音量で聴く分には大きな差は出ません、とはいえそれなりのクラスのアンプという条件になります、例え小音量でもエントリークラスとハイエンドでは明らかに違いが出ます。
また音質はスピーカーに左右される部分が大きく、スピーカーが安価の場合ではやはり差が出にくいです。
逆に言うと、エントリークラスのスピーカーにハイエンドアンプを繋いでもそれほど大きな音質の差は出ずにむしろエントリークラスのアンプでも充分だと言えます。
アンプの音質の差がはっきりと解るのは、ミドルクラス以上のできれば大型スピーカーを使い、音量も話しをするのが困難な程の音量だと明確に違いが解ります。
ワーキングBGM的に音楽を流したり、ベッドルームで静かに音楽を聴きたい場合などはミドルクラスやハイエンドなアンプは不要でエントリークラスでも充分に機能します。
リスニングスタイルに合ったアンプを選ぶことが重要で、余計な出費を抑えることにもなります。
そういう意味ではオーディオマニアはじっくりと聴き込む為のシステムをメイン、BGM的に使うシステムをサブというように目的に合わせて使用する機器を使い分けているのです。
また、テレビの音質改善やPCオーディオでのデスクトップオーディオは全てサブシステムという位置付けです。
メインシステムは聴き込む為のシステムですから音場感が重要で、リスニングポイントを決め、それに合う様にスピーカーの向きや距離などをきっちりと測ったように設置することが重要です。
サブシステムの場合は小型スピーカーを天井近くに付けると部屋全体にサウンドが広がり、どこに居ても同じような音質で聴くことができるのでお薦めの設置方法です。

鈴虫や小鳥が最も美しい音色で鳴くのは死ぬ直前、蝋燭の火が最も大きくなるのが消える直前、鯛の刺身が最も美味しくなるのが腐る直前、履いていた靴が最も足にフィットするのが捨てる直前・・・。
こんな理不尽な事実は何処にでもあるのですが、ことオーディオで言うとスピーカーがこれに当たります。
スピーカーは新製品の時にはダンパーやエッジが硬く、張りはあるのですが本来の低音域などの鳴りが出てきません、そして聴き込む度にどんどん音は良くなっていきます。
そんなある日突然のように音に締りが無く響きがガラっと変わる時があります、ダンパーやエッジが経年経過や疲労で張りが無くなってしまった結果です、こうなるとメーカーにダンパーやエッジを張替をしてもらわないといけなくなります。
っで戻ってきて音を聞くと買ったばかりの頃のように張りはあるが豊かな低音域が無いのです、スピーカーって本当に繊細なものだなとつくづく思います。
そしてアンプでは大切に使っている物ほど壊れて、壊れても良いと思って気楽に使っている物ほど壊れないという理不尽な事実があります、オーディオの理不尽な事実ですが受け入れたうえで愉しむしかないのでしょうね。
ビジネスにもこれと似たような事実は多々あります、それを理解して受け入れる、どの世界にも成功するには我慢が肝要なようです。
フォステクスと言えば創業以来のDIYスピーカーユニットの老舗メーカーです、今回Stereo誌とのコラボで特別ユニットを製造してくれました。
その意味では、この8CmフルレンジユニットOMF800Pは貴重な一品だと思います。
その貴重な特性ユニットの性能を100%引き出すDIYエンクロージャーキットを組みたてましたので、ユニットを取りつけて試聴しました。
フォステクスOMF800PをDIY専用エンクロージャーに取り付けた

試聴中
リファレンスはダイヤトーンDS-200ZA

この特別ユニットOMF800Pは価格はペアで6,000円程なのですが、同様のスペックでの市場価格は倍以上ですのでかなりお得な買い物です。
センターに付いているアルミ製のイコライザーは、何とアルミ棒から一個一個削り出しで製造したものでプレス加工ではありません、また金属膜のコーンも特別性でマグネットも強力なものを使用しています。
そんな手の込んだユニットをフォステクスは特別仕様で製造したわけですが、その努力が見事に音に出ています。
専用エンクロージャーのバックロードホーン型というのも効果絶大で低音域が物凄く伸びています、また中高音域の張り出しもシャープで響きも含めて8Cmフルレンジとしてはトップクラスの音質ではないかと思います。
ボリュームをガンガン入れてもまったく歪ません、これは化物のような8Cmフルレンジユニットです。
個人的には一発で惚れこんでしまいました、時々繋ぎ換えては効き込みたい程の音色を奏でます。
特にサックスの響きが前へどんどん出てきて凄いです、本当に8Cmフルレンジの音ではありません。
エンクロージャーは壁にぴったり設置しても音の変化は殆どないのでどんな設置方法でも使えます、これは凄い、もう1台突板仕上げで作ってみたくなりました。
市販品では決して味わえない感動の音が手に入るDIY、これがDIYオーディオの極みなのです。

私は家電製品は壊れるとすぐに廃棄するのに、ことオーディオ製品に関しては壊れたジャンクを廃棄せずにストックしてしまうのです。
逆に完動品は不要と思えばすぐ下取りで出してしまうのに、何故壊れたジャンクは手元に置いておくのでしょうか、それは将来の愉しみの為にです。
スピーカーのジャンク品は山のようにあります、これらはユニットを替えれば生き返るのです、エンクロージャーは壊れてないのですから。
また、逆に使えるユニットをDIYでエンクロージャーを作って取りつけて蘇らせる事も可能です。
アンプやプレーヤー類も部分的に使える部品は数多く存在しており、DIYでの部品取りに大いに役に立つのです。
そして本当のジャンクを取って置く理由、それは将来の自分の理想郷を見ているからです、隠居した後に待っている理想郷のビジョンにしっかりとオーディオDIYで愉しんでいる自分の姿が見えています。
DIYで自分の中での理想に近い音を出すのが愉しみなのです、これは一つの芸術作品だと思うのです。
ジャンクを蘇らせるオーディオ工房を是非やってみたいと考えています、きっと私のように昔の愛着のあるオーディオ製品でもう一度音を聴きたい人は沢山いると思います。
そんな自分の趣味と他者の利益が一致する道楽は実に愉しいと思います、廃棄するにもお金がかかるオーディオ製品、蘇らせて再利用するのは一つの社会貢献だと思うのです。
そんなことを考えていたら古物オーディオ協会という社団法人を創設していました、隠居後の愉しみがまた一つ増えたのです。

80年代だったか株式投資雑誌に経済アナリストの興味深いレポートがありました、それは「アンプの色は近未来の景況感を反映している」というものでした。
そのレポートによると、景気浮上の数年前からシルバーやシャンパンゴールド色のアンプが売れ景気後退の数年前からブラック色のアンプが売れる」というものです、確かにバブル景気が始まる数年前から世の中のアンプが黒一色になりました。
驚くことにシルバーと淡い白木の側板の気品ある色調で人気を集めたヤマハのアンプでさえ、83年ごろからの数年間はブラック一色になり気品ある面持ちであったフロントパネルは他社同様の厳つい顔つきになったことです。
その後、バブル経済が崩壊してオーディオ氷河期に突入し一連のブラック一色も徐々にシルバーやシャンパンゴールドに変わって行きます。
その後は10年という長いトンネルを抜け徐々に景気も落ち着き出します、そしてホームシアターが成長期を迎える2005年ごろになるとAVアンプを中心にまたブラック色のアンプが出始めます、そしてリーマンショックで世界的な不景気に見舞われます、確かにアンプの流行色は景気を5年ほど先取りしているようにも思えてきます。
では今はどうかと調べてみると、ヤマハは以前の気品を取り戻したかのようなフロントパネルに戻り、エントリークラスのアンプはシルバーとブラックの2色ですがミドルクラス以上はシルバー一色です、AVアンプはシルバーとブラックのコンビネーションになっています。
ソニーは、プリメインアンプはAVアンプの流用品のようなエントリークラスの一機種しかなくAVアンプも含めて全てブラック一色です。
デノンは、ヤマハ同様にエントリークラスのアンプだけシルバーとブラックの2色を出しており、ミドルクラス以上は全てシルバーです、AVアンプは逆にブラック一色になってしまいました。
オンキョー・パイオニア・マランツはプリメインアンプは全機種シルバー一色です、こちらもAVアンプはほぼブラック一色です。
こうして見ると、ハイファイオーディオ製品はほぼシルバーでホームシアター製品はほぼブラックと利用形態で住み分けされているような状況です、これをどう分析したら良いのでしょうか?