2023年10月 5日 00:00
2008年に政府主導で導入された新会社法によって多くの法人が誕生しました、施行される前日まで株式会社では1000万円を銀行の特定口座に振り込み、振り込み証明書を貰わないと株式会社での法人設立登記はできませんでした。
それが新法によって設立登記税だけで株式会社の設立が可能になりました、いわゆる1円起業時代の到来です。
学生起業家や若手実業家など、自身の会社を持ち華やかな世界にいる姿を雑誌などで読んでは夢見てきた人たちがこぞって起業できる喜びに沸きました。
そして本来であれば一生サラリーマンを続けなくてはならないような人が会社を辞めて、また家で片手間の内職程度の仕事をしていた主婦が対等にビジネスできると意気込んで各自が各種各様の思いで志や覚悟も持たずに起業していきました。
このような時代背景で会社を設立し名刺に「代表取締役」の肩書が載ります、そして周囲の人には「社長」と呼ばれ収益も出ていないのに自分は成功した実業家だと思い込んでしまうのです。
この瞬間に「es」が自我を呼び起こし成功者の仲間入りとばかりに綺麗な服を着て各種のパーティに参加してはご満悦、そんな投稿がSNSを大いに賑わかせました。
厳しいことを言わせていただくと、経営者というのであればいつまでも虚構を追い求めるのではなく現実をもっと直視していただきたいと思います。
ビジネスが順調に推移し経済的にも精神的にも経営者として自立できているのかどうか、一度自身を冷静に評価すべきです。
一つ指標を出しますと、日本の中小企業の社長の平均年収は1800万円です、おおよそ同じ年齢の会社員に比べて4倍というのが成功者の最初のハードルです。
ビジネスだけに留まらず、生活さえも他者のお世話にならなくてはならないほどの状況なのに自尊心だけが「起業家ハイ」になっていないかどうか冷静に見つめる必要があります。
人は外見的なことや立場に寄ってくるのではありません、もし寄ってきても最初の数回という一過性のものでしかありません。
人が寄ってくるのは一緒にビジネスすればお金になるかもしれないという嗅覚によるものです、それは実績や根拠に加えてビジネスや生き方に対する姿勢です。
「es」によって支配された起業家たちは起業して5年以上も経って既に現実の厳しさを目の当たりにしているかもしれません、法人税も支払わない「みなし解散会社」が過去最大になっているのをみても頷けます。
それに気付いて自ら修正できる人だけが本物の経営者になっていくでしょう、でも気付いても後に引けなくなってしまった人たちの末路は想像するに実に容易いものです。