「寒さ暑さも彼岸まで」とはよく言ったものでいよいよ春本番を迎えます、ここで暦の上では2月から春なのですが園芸の春は4月~6月です、つまり1ヶ月半ほどずれています。
多くの野菜は気温が20度を超えてこないと発芽しません、また果樹の多くも20度を超えてこないと花芽を吹きません、その意味では20度を超えてくる4月以降が春として定着しているようです。
とはいえ昨今では5月以降はかなり気温が上昇してきます、その意味でいうと少し早めに行動を開始する必要があるのですが3月は暖かい日が続いたと思っていたら突然のように雪が降るなんてこともありますので一概に早めに行動したほうが良いとも言えないのです。

私はというと2週間の短期天気予報と3ヶ月の長期天気予報を基に行動を計画します、ここで重要なのが冬準備と春先の準備です、何でも先手を打っていくと慌てないで済むと思います。
冬準備の多くは土作りや冬の剪定です、また春先には枯れ枝を剪定したり植え替えなどを行っておきいつでも成長を始めてもいいようにしておきます、何事も計画と準備がその後の結果に大きく表れるのです。
暦の上では春とはいえ例年では2月に入るとは本来の寒さのピークを迎えます、しかし今年はこれまでに無く異常です、例年であれば3月初旬ごろから芽が動き出す盆栽植物や観葉植物の新芽が既に1月中旬の現在で吹き始めています、こうなるとゆっくりできません、植え替えを早めにやっておかないと根詰まりを起こしてしまいます。
今年は22年周期の太陽極大期のピークを迎えます、つまりこれ以上ない猛暑というより激暑に見舞われるということです、昨年も猛暑で各所の田畑が砂漠化し夏ごろから野菜が高騰しました、今年は更に被害が拡大する恐れがあります、農家の人は早めに策を講じた方がよいでしょう。

猛暑といえば温暖化が進み日本で栽培される野菜の種類がどんどん変化しています、そして昔ながらの野菜は平野部では暑すぎて育たないので山を切り開いてどんどん高いところへ畑を増やしている現状があります、また関東エリアでもバナナやパパイヤが庭先で栽培可能となっており千葉県産のバナナなどが出回るようになってきています。
一方で野菜の高騰が続くのが一つの要因なのかは不明ですが家庭菜園がブームになっているようで、ベランダ菜園用のプランターや野菜栽培用の土の販売数が急伸しています、100均ショップでも種や苗がよく売れています。
また小規模の八百屋が増えてきているのが面白い現象です、これらの八百屋の多くは外国人が経営しています、そこで売られているのは農家から直接仕入れてきた通常流通網が使えない規格外野菜です、したがって形は不揃いですが価格はスーパーの半額以下で飛ぶように買われていきます、農家も売る人も買う人も三方善しの商売は誰も損をしないスーパービジネスだと思います、健康のために野菜を摂り入れるようになった私も大いに助かっています。
野菜はこの数年の間に平均で倍ほどに高騰しています、また季節によっては手が出せないほど高額になることもあります、外食産業の倒産件数がうなぎ上りに増えているのもうなずけます、原料仕入れ額と人件費つまりFC比の上昇が要因であることは言うまでもありません。
野菜が高額で買えないということで庭が無くても室内で野菜栽培ができる水耕栽培が新型コロナウイルスパンデミックを機に静かに流行しているようです、私がハイドロカルチャーで観葉植物を育てていた20数年前に比べると水耕栽培キットも多数出ており価格も1万円を切るものもあります、SNSなどでも100均グッズだけでできる水耕栽培などの動画が多数出ています。
水耕栽培キット
これにプラスして液体肥料と種を買えばその日のうちに水耕栽培がスタートできます

こういったものに刺激されて水耕栽培に手を出す人も多いと思いますが、多くの人は当初考えていたように収穫できずにイニシャルコストも回収することなく止めてしまいます、私の経験上しっかりとした野菜を水耕栽培で収穫しようとしたら最低でも5万円近いイニシャルコストがかかります。
確かに容器は100均で売っているもので代用はできますが室内でしっかり育てるには最低でも人口太陽光つまり植物育成用のナローバンドLEDライトが不可欠です、また電解濃度計(水溶液濃度を計測する測定器)など次から次へと必要な道具や消耗品が出てきます、つまりイニシャルコストに加えて種や液体肥料などのランニングコストは意外とかかってしまいます。
実際にやってみると大きな買い物をしているわけでもないのですが合算すると意外な出費に驚くと思います、私の試算上では野菜を完全育成するためのグロウテント+ラックに育成用ナローバンドLEDライト2セット、更に電解濃度計などの必須な機材を入れるとイニシャルコストは5万円ほどで種代に液体肥料などの消耗品に電気代も入れると年間ランニングコストは最低でも3万円程度になります。
つまり1年目は8万円ということになります、また水耕栽培できる野菜は限られておりイモ類やキャベツ・ハクサイなどの大型野菜に根菜類やつる性野菜は不可能ではないですが家庭用の装置では無理です、つまり手軽に栽培可能な葉野菜が主になり全ての野菜を調達できるわけではありません、そう考えるとかなり高いものになりそのときに必要な野菜を買ったほうがはるかに安く済みます。
結論を言うと水耕栽培やベランダ菜園、また趣味で行う自宅の庭を使った野菜作りはコスト面だけで計算すると買うよりも高くつきます、ただしメリットとしては採れたての安全な新鮮野菜を食べることができるということと農家さんしか食べることができないダイコンやニンジンの葉など栄養価の高い部位が食べられるということにつきます。
水耕栽培やベランダ菜園などは隠れたコストを無視しがちになります、家庭菜園を行う目的は野菜を安く手に入れることではなく家庭菜園でしか味わうことができない野菜の部位を安心して食べることができるというメリットを追求することが重要だと思います。
そして最後にもう一つ、家庭菜園を行うようになると野菜の世話にかなりの時間をとられます、忙しいからとちょっとサボれば一瞬で枯れてしまい水の泡となります、家庭菜園は収穫を目的とするのではなく野菜を育てるのを愉しむという目的を持って行うのが正しい家庭菜園の心得かと思うのです、そしていろいろな意味で余裕がないとできないのが家庭菜園という道楽なのです。
自然農法は未だに定義はありませんが基本的には肥料や農薬を使わなくても野菜を収穫できるということを目指した農法です、しかし自然農法を学んでいて幾つかのヒントを組み合わせていくと究極の農法ができると考えました、それが私が今後研究しようとしている自流の「放置栽培」であり、ずぼらな私にぴったりな名称だと思って気に入っています。
私が提言する「放置栽培」には今後の実験を明確にする意味において6つの事項を定義いたしました、それが①「耕起(土起こし)しない」、②「施肥(肥料を与える)しない」、③「散水(水を与える)しない」、④「除草(草むしり)しない」、⑤「投薬(農薬散布)しない」、⑥「種蒔きしない」です。
ここで特に最後の定義は疑問に思う人は多いと思いますが各種のデータを調査した結果可能だという結論を導き出しています、当然ですが毎年F1種を撒かないのですからどんな野菜が採れるか解りません、だからこその研究実験なのです。
※F1種:種メーカーが製造販売する収穫品種が保障された種。

これらの事項は順を追って説明していきますが、重要なことを申し上げますと私はずっと技術の世界にいたものですから曖昧な表現や根拠の無いことを提言することはしたくはありません、それは無責任な行為そのものだと思うからです、したがって何をするにも重要なのは最初から定義と根拠を明確にして提言することだと思うのです、それが何かを提言する者の最低限の責任だと思います。
そしてこの提言が正しいものなのかを6年前からベランダで少しずつ実験を行ってきました、大きな発砲スチロール製の箱2つを使って行ってきましたが肥料も農薬も使わずに新たに土を足すわけでもなく毎年ハーブ類が元気に育っています、ただハーブ類は雑草に近い性質なので実績としては極めて希薄です、そこで自由にできる畑付きの物件を購入しましたのでいよいよ本格的な実験を行っていきたいと思います。
ベランダで放置栽培のバジル・プチトマト・パセリなど

若い世代の農家に徐々に定着しようとしている日本発の自然農法とはいったい何なのでしょう、実はその定義もスタイルも未だ完全には確立されていない発展途上の段階です、また似た農法である自然栽培と混同されますが同時多発的なスタイルで別物として認知されているようです。
自然農法は1935年に岡田茂吉によって提唱された農法で、「土壌に不純物を入れず清潔に保てば土本来の性能を100%発揮でき作物が栽培できる」というもので、自論を証明するために翌年に東京世田谷にある自宅の庭で実験を開始しました。
自流放置栽培第一弾の実践で収穫できたサツマイモ

この提唱の不純物とは肥料や農薬のことで、これらは土本来の力を発揮できない元凶だといいます、その後各種の研究機関や企業においても研究され土壌微生物の重要性が解明されてきました、実は土壌には多くの菌類が存在しており人間の健康法である大腸環境を整えるというものとまったく同じ原理であることで理解できます。
菌類の中には醗酵によって有機物を分解し植物のエネルギー源となる栄養素を作り出す種や、逆に腐敗によって分解する種も存在しています、腐敗菌類が多くなると生きた野菜の根まで腐敗させ植物を死滅させてしまいます。
しかし逆に有益な醗酵菌類だけでも野菜には有毒な酸やアルコールなどを精製してしまい植物が育つ土壌にはなりません、つまりこれらの菌類の微妙なバランスを保てるかが重要であり、バランスが保たれていれば雑草や野菜の枯葉がそのまま肥料成分に変わり肥料を入れる必要も無く野菜も元気に育ち、元気な野菜は虫害やカビなどにやられないので農薬も不要となります。
この土壌の微生物バランスを如何に保つかが自流放置栽培の基本ということになるかと思います、各種の自然農法の具体的に説明している書籍を読み込んでいくといろいろな方法が示されていますが行き着くゴールは全て土壌の菌類バランスを如何に作り上げて保つかに集約されます、そしてこれは科学的にも説明できる原理だと思います。
つまりこれからの農業は一つの科学分野なのです、見えない菌類の世界、7年前に始めた食と健康道楽ビジネスでも菌類の持つ脅威を実験によって得ています、こんなところに応用できるなんてその時点では私でさえ知る由もありませんでした。
7年前に行った麹の培養実験
菌を身近に感じることができた生きた経験をしました
