ソニー創業者である盛田昭夫は、生涯を通して世界中の工場や営業所を専用ジェット機を使って自ら見て回っていました。
ホンダ創業者である本田宗一郎は、生涯を通して油だらけになって現場の技術者と共にエンジン開発に情熱を注ぎました。
リーダーたる者は常に自分の五感を使って正確に情報収集に努めなくてはなりません、これはどんな業種であれどんな組織であってもです。
部下を信じるなというのではありません、言わせてもらえば部下を信じても部下の言葉は信じるに値しないのです。
これはどういう意味なのでしょうか、それは人によって同じものを見ても聞いても感性の違いで受け止め方や表現が変わってくるからです。
したがってそのまま言葉を聞いても実際のところと微妙に違うところがあるものです、その結果判断が微妙に異なることとなり、その微妙な判断の違いが大きな結果の差となることを知っているからなのです。
販売業の社長がディラーを回るのは当たり前、製造業の社長が工場を回るのは当たり前、コンサルタントや投資会社の社長がクライアントや投資先を回るのは当たり前なのです。
リーダーは自分の目で確かめ自分の肌感覚で判断していかなくてはならないのです、担当が例え役員であっても自らの最大の業務を他人に任せるべきではありません。
一度でもよいので自分の目でパートナーや顧客を確かめることが肝要です、頭だけで考えていたものと実際とは大きなギャップがあることに気付くでしょう。
リーダーは椅子に座ってお金を貰っている顧客に来てもらうなんてもっての外、どんな思想があろうがリーダーとしては失格です。
それでいて「営業とは」、「会社とは」、「リーダーとは」なんて言葉だけかっこつけて言われてもまったく無責任な発言であり説得力はありません。
多くは経験不足で未熟な若いリーダーほど大きな勘違いをして、「部下を信用してるから」と言い訳を作り外回りをしないものなのです。
「器が小さい」と見る人が見れば直ぐ解ります、だから本物志向の人はそういう会社やリーダーには寄っていかないのです。
寄ってくるのは同じような人種の人たちか世間を知らない人たちだけです、だから経営が上手くいかないのは至極当然の結果ということでしょう。
成功している企業は大小に限らず絶対に「合議制」を採っていません、誰もが知っている上場している大手企業でさえもです。
「合議制」とは役員会などで経営方針を決定する多人数経営手法で、最近の企業コンプライアンスの徹底化などで経営経験も無い学者や自称経営評論家があれこれと書籍などで言いたいことを言っている偽善に満ちた誤った経営手法の一つです。
おそらく「スーパーマン社長(何でも自分でやってしまう経営者)のワンマン経営では会社の成長は難しい」、ということを言いたいのでしょうが、この両者はまったく次元が異なるカテゴリです。
「スーパーマン社長」は社長個人の人格の問題であり、他方「ワンマン経営」や「合議制」は経営手法の問題です、つまり本来は両者を比較することはできない事項なのです。
しかし、多くの書籍やベンチャーキャピタリストはこれらを混同して「合議制」推進の理由の一つにあげているのです。
こんな根拠もない書籍やいい加減な経営コンサルタントに惑わされておかしくなった会社は多数あります、これをいったい誰が責任を取るのでしょうか。
そもそも企業経営をまともに行った経験が無い人が、どうやって経営をコンサルティングできるのでしょうか。
「合議制」を否定するからといって「社員の話に耳を貸さない」ということではありません、これに関しては大いに聞くべきです、つまり「ブレインストーミング」や「戦略会議」などは大いにやっていただきたいと思います。
私が言いたいのは、会社の進むべき方向や最終責任者である社長が決断しなくてはならない重大事項を「合議制」で決めてはならないということです。
これは、社長自らが自分の最大の仕事を放り投げたのと同じことです。
それと「合議制」で決めた事項は確実に全員が責任を取ろうとしません、つまり平和なときは良いですが計画外のイリーガルな事項が起きたときに、「みんなで決めたのでしょ」と社長も責任逃れするようになります。
当然です、自分が決心して決めた事項でなければ責任など誰も取れるはずもありません、社長も社員と同じ人間なのですから。
社長は会社の「基本方針」を自らの責任と覚悟をもって自ら決めなくてはなりません、そしてそれを実行するための戦略先述は役員会などでそれこそ「合議制」で決めればよいのです、また具体的な計画は更に担当役員下の部長や課長会議でのこれも「合議制」で話し合うべきものです。
社長に限らず組織のリーダーは、自分の最大の業務は何かを忘れて妙な全体主義だけは採らないことが賢明です、根幹事項はリーダーが単独で決め枝葉の部分は全体で決定するのがベストな方法です。
そして、「合議制否定」と「ワンマン経営」を混同する経営コンサルタントとは一切のお付き合いを止めたほうが無難でしょう、これも会社を守るべき責任ある経営者の正しい決断です。
ホンダ創業者である本田宗一郎は指示を出すときは「今やれ!」が口癖だったそうです、会議では「期日に間に合わない」と言おうものなら「君たちは1日を8時間で計算するから間に合わないのだ、1日は24時間あるんだ、最後までやってみなけりゃ判らないだろう」と一蹴したそうです。
パナソニックの松下幸之助は、営業担当部長から「期日の今日までに達成できませんでした」という営業報告を夜の10時に受けたとき、「期日までに2時間もあるよね」と言って電話を切ったそうです。
歴史を作ってきた人の時間感覚は尋常ではありませんが、これらから学ばなくてはならないのは「最後まで諦めない」ということです。
自分が正しいと思って計画し継続させてきたことは何時かは実現します、しかし計画にある期日にはできないかもしれません、でも最後まで諦めなければ何処かで必ず達成するものです、達成しないのはできないと諦めて逃げたときです。
天才たちが残した多くの方程式や発見は諦めずに最後まで考え続けたからこその結果です、またその結果において凡人が「天才」と称されるようになるのです。
成功者と一般の人との差も同様です、最後まで諦めなかったか否かでしかありません。
そして成功するための「秘策」とは心身ともに疲労し、「もう駄目だ」というくらいに考え続けたときに更に自分を追い込んで再考してみることです。
そのときです、限界を感じた脳から大量にノルアドレナリンが分泌されます、そしてその危機的状態から精神を開放する為に今度はセロトニンが分泌され更にドーパミンが大量に放出されます、その瞬間にポンと脳裏に浮かぶビジョン、それが成功の秘策である場合が実に多いのです。
だから最後まで諦めたら駄目なのです、志を持っての起業であっても焦りや重圧から逃げ出したい気持ちはよく解ります、それをあえて苦しい状況を継続させる、自身で打開策を見いだすまでを待つ方も当人以上に苦しいものだということを知ることです。
「情報」という言葉を分解すると「情に報いる」となります、つまりIT産業とは「情に報いる工学」ということになります。
何を意図して「情報」という文字ができたのでしょう、その深い意味が理解できるでしょうか?
いろいろなシーンで日本人の好きな「義理人情」話しが聞かれます、もちろんビジネスにおいてもです。
組織を纏め上げ成果を上げていくに最も重要なのは「人間関係」です、そしてその中心にあるものが「情」ということになります。
「情」の本質が解らないリーダーに誰が真剣についていくでしょうか、厳しい状況の連続も「情」の部分で互いに信頼しあえるからこその組織なのです。
しかし「情」とは決して「優しさ」だけであってはなりません、そこを勘違いしている人が最後に「裏切られた」という捨て台詞を吐くことになるのです。
「情」を言い換えるなら「思いやり」です、「優しさ」と「思いやり」は似て異なるものの代表ではないかというくらいに雲泥の差があります。
例えば社員が大きなミスをしたとしましょう、「思いやり」とは社員の将来を考えて生活を守る為にあえて厳しくミスを追及する必要があるのです。
しかし「怒る」のではありません、反省を促し「何が間違っていたのか」を自らの身体に染み込ませる必要があるのです。
感情に任せた「怒り」は気持ちが伝わらないばかりか社員の心には「怒られてしまった」ということしか残りません、重要なのは「怒られた」ことではなく「大きなミスをしてしまった」ということです。
また「優しさ」で「次に頑張ればよい」という対応はもっての外です、甘やかしは何度も同じことを繰り返します、ここは心を鬼にして「社員のため」という大義名分を持って厳しい対応が肝要です。
愛情教育に似た「思いやり」での対応はそれを理解できずに辞めていく者もいるでしょう、しかし「情」が伝わらない人はどんな気持ちも伝わることはありません、早期にそれが互いに理解できたのであれば離別は幸福な状況だとクールに割り切ることです。
「強い」リーダーとは平穏なときは「情」を重視した対応で組織を纏め上げ、いざというときには「情」に流されない厳しい対応を行える人です。
プロ野球の名監督の采配を見れば解ります、非情とも思えるほどのピッチャーの交代劇を繰り広げます。
監督はチームを優勝させることが使命です、つまり強いチームを作り上げ成果を出すのが最大の仕事なのです。
ビジネスのリーダーも同じことです、中途半端な「情」では社員は育ちません、結果成果も出るはずもありません。
「情」を使う方も「情」を受ける方も相応の覚悟が不可欠です、だから「情」が解らない人は何時まで経っても孤立して組織にあっても孤独を極めることになるのです。
何時の時代にも「強い」リーダーが求められます、「強い」とは「優秀」とは異なります、そこで「強い」リーダーとはどのような思考や行動が求められるのでしょうか。
私の頭には幾つかの「強い」リーダー像が浮かぶのですが、やはり第一に「天の時を待てる」という「強い」精神力を持っているか否かが重要です。
昔から「待つ身の辛さ」とはよく言ったものです、それほど「待つ」ことは忍耐力や自己抑制力に加えてぶれない覚悟が不可欠です。
また、「天の時」が来るまで自分や家族含めて、更には社員や協力パートナー達を何としても食いつなげなくてはなりません。
焦る気持ちを抑えての生活維持は資金集めも含め辛い日々の連続です、それをもじっと耐えきり「待つ」ということは相応の強靭な精神力がないとできません。
ほとんどの人は「時は金なり」と言うと、この「時」とはイコール「早期」と解釈してしまうのではないでしょうか?
そしてアイデアを思いついたら、とにかく他者より早くやらなければならないと思っているのではないでしょうか?
私の解釈での「時」とは速さだけではありません、速さに加えて遅さや停止を含めて「時」なのです、そしてもっと重要な「時」は「タイミング」です。
どんな良い商品でもサービスでも「タイミング」を見誤ったら何にも生みません、「時期尚早」、「時既に遅し」などとタイミングの重要性を示す言葉をよく使う割りにはその本質を判ってない人は多いように思います。
それにはまず自分をよく知ることです、会社であれば大会社なのかベンチャー企業なのか、それとも孤軍奮闘の個人事業主レベルなのか、そしてメイン事業の業界はどんなカテゴリかです。
例えば技術系ベンチャー企業であればどこよりも早く出しても大手企業が乗り出したら終わりです、その間に市場を開拓しただけで開拓した市場も利益も全てが大手企業が乗り出したとたんに持っていきます。
それなら逆に大手企業に技術や事業を提供して先にやらせたらどうでしょう、そして市場が膨れ上がった後に次世代の商品開発を行えばどうでしょう?
先を越されて当面の間は話題も先駆者利得もその大手企業が独占します、その悔しさをぐっと堪えて自分の順番(天の時)が来るのをじっと待つのです。
本当に自信のある技術や事業なら早かれ遅かれ何時かは華が咲きます、そしてそのとき「笑うのは自分だ」と信じて待つことが肝要です。
これが成功する「強い」リーダーの思考なのです、あくまでもリーダーは常に地に足をつけて堂々とした態度でいなくてはなりません、先を越されたとか他者が乗り出してきたなどは市場が大きくなのですから大いに喜ぶべきことではないでしょうか。
そのうえで自社は何をすればよいのか、じっくりと構えてその先を見た思考と行動をとっていただきたいと思います。