2025年12月 7日 09:00
ミョウガは「花蕾(つぼみ)」を食べ、茎のように見える部分は「葉」の集合体という、非常にユニークな構造を持った植物であり、さらに名前の由来に仏教にまつわる有名な物忘れの逸話があります。
お釈迦様の弟子に「周利槃特(しゅりはんどく)」という人物がいました。
彼は自分の名前すら忘れてしまうほど物忘れが激しく、お釈迦様が哀れに思い自分の名前「周利槃特」を大きく書いた旗(のぼり)を背負わせましたが、彼はそれをかけたことさえ忘れてしまうほど物覚えが悪いまま死んでしまいました。
その後、彼のお墓から見慣れない草が生えてきたので「名前を荷っていた」彼にちなんで、その草は「茗荷(みょうが)」と名付けられました。
このことから「茗荷を食べると物忘れがひどくなる」という俗説が生まれたわけです。
しかし、周利槃特はお釈迦様の教えに従い「塵を払わん、垢を除かん」という聖語を繰り返し唱えながらひたすら掃除を続け、最終的に悟りを開いた阿羅漢(あらかん)となった非常に有名な高弟の一人でもあります。
※阿羅漢とは仏教の修行の最高段階に達した聖者のことで「煩悩を断ち切り、悟りを得た人」を意味します。
↑ 収穫の一部
「ミョウガを食べると物忘れがひどくなる」という俗説にもちろん科学的根拠はなく、むしろ香り成分には集中力を高める効果があると言われています。
このほかにも音の変化説による名前の由来があります。
日本には古くから香りの強い植物としてショウガとミョウガがあり、
香りの強い方を「兄香(せのか)」→ショウガ
香りの弱い方を「妹香(めのか)」→ミョウガ
これが転じて現在の呼び名になったという説もあります。
そういえば、丸ノ内線に「茗荷谷駅」がありますが、その名の通り江戸時代初期にこの近くの地域でミョウガが多く栽培されていたことから茗荷谷町(みょうがだにちょう)と付けられた町がありました。
現在ではこの地域でミョウガの本格的な栽培は行われておりませんが、拓殖大学文京キャンパスの脇の小さな畑で栽培されているそうです。
構造も歴史的にも魅力的な植物です。