この数年は夏季の猛暑で夏野菜が収穫できずに秋口から冬までの3ヶ月ほど野菜が高騰しています、畑が砂漠化したという農家さんの悲鳴にも似た動画も多数上がっています、では何故畑が砂漠化してしまうのでしょうか、何故砂漠化した畑と同じ地域にある畑でも上手く収穫できる農家さんがいるのでしょうか。
畑が砂漠化する要因はたった一つです、それはその畑の保水力が無いからに他なりません、だから朝夕に水を撒いてもあっという間に水は蒸発してしまい種は芽も出せないし何とか芽が出ても枯れてしまいます。
保水力が無い畑の土を触ってみるとまるで砂のようにさらさらと指の間から流れ落ちます、砂漠化はオーバーな話ではなく本当に砂漠にある砂のような土になっています、これではあっという間に水分が蒸散してしまうのは当然です。
蒸散を防ぐためにマルチング(畝にビニールシートを被せる)するもこの状態では蒸散を防ぐ前に水分を保持できていないのですから意味がありません、ではどうしたらよいかというと猛暑に耐えうる土壌改良から行うしかありません。
対して猛暑でも水分が保持できている畑は畝の周囲に雑草が生えまくっています、この雑草が畝の表面に直接太陽光が当たるのを防ぎびっしり土中に張った根の隙間に水分を蓄え野菜に水分を供給するのです、水を撒かなくてもマルチングしなくても自然の力で野菜が育つ土壌を造っているのです。
雑草をあえて放置して水分を保持できている自然農の実験畑
猛暑の季節でもしっかり雑草も野菜も育っています

まずは春先にグランドカバーになる根張りのよい植物の種を畑に撒きましょう、種を飛ばさず他の畑に迷惑がかからない雑草が最適です、私がいろいろ調べた範囲で最も理想に近いのがシロツメクサの仲間やシソやバジルなどのハーブ類です、一度撒くだけで冬には枯れますが翌年また自然に生えてきます。
この生やした雑草をそのままにして畝を作り野菜を育てるのです、ちなみに自然農法が認知され始めたのか更地の緑地化推進なのかは不明ですが数年前から数種類の雑草の種が大袋で売り出されるようになっていますので各種実験をしてみたいと思っています。
雑草に畑の栄養素を持っていかれて野菜が育たなくなるというのは迷信です、特に雑草の中でも豆科植物は空気中の窒素を固定化して根に貯めます、つまり水やりも不要で施肥も不要になります、枯れた雑草が保水力と肥糧を自然のサイクルの中で土壌に齎してくれるからです、まずは範囲を限定して実践してみるとよいでしょう、これまでの常識は現在の通年猛暑という有事には非常識になるのです。
放置栽培を行うにあたり最も重要なのが土壌の土質であることは言うまでもありません、土壌の細菌によって植物の成長に必要な栄養素が生まれ植物に取り込まれるからです、また植物の成長に最も重要なのが根をしっかり張れる土質であることは栄養素が生まれる以上に重要です。
植物が根をしっかりと張れ更には細菌バランスを保つために必須な土壌とは空間が確保できているかです、つまり細かな空間が土壌に形成できているかということが最も重要になります、この細かな空間を保持できている土壌を「団粒構造」と言います。
この細かな空間によって根が張れ更に根は酸素を取り込むことができます、植物は根でも呼吸をしているのです、観葉植物をいつも枯らせてしまう人は根を窒息させているのが原因です、つまり水の与えすぎによって根が呼吸できず嫌気性の腐敗菌の増殖によって根が腐ってしまうのです、根が呼吸できる空間があれば好気性のバクテリアが繁殖し土も根も腐らずに植物も元気に育ちます。

この団粒構造を人工的に造ろうとするのが耕耘機(こううんき)などによる耕起(土起こし)です、これも悪いことではないのですが私が提言する放置栽培では土を起こさないのが定義の一つです、追々説明しますが耕起を行うから不必要な雑草が生えるのです、雑草は種類によって益にもなるし害にもなるのです。
ではどうやって団粒構造を造るかというとズバリ益になる雑草の力を借りるのです、つまりこれが放置栽培の最も重要な「耕起しない」と「除草しない」という事項になります。
益となる雑草はその多くが一年草で春に成長し秋には枯れます、枯れる際には根も枯れます、この雑草の根が枯れた後にできる空間こそが何もせずに団粒構造を造る方法なのです、だから意味も無く雑草を放置するのではなくあえて放置することで土壌の団粒構造を維持しようとしているのです。
野菜はこの数年の間に平均で倍ほどに高騰しています、また季節によっては手が出せないほど高額になることもあります、外食産業の倒産件数がうなぎ上りに増えているのもうなずけます、原料仕入れ額と人件費つまりFC比の上昇が要因であることは言うまでもありません。
野菜が高額で買えないということで庭が無くても室内で野菜栽培ができる水耕栽培が新型コロナウイルスパンデミックを機に静かに流行しているようです、私がハイドロカルチャーで観葉植物を育てていた20数年前に比べると水耕栽培キットも多数出ており価格も1万円を切るものもあります、SNSなどでも100均グッズだけでできる水耕栽培などの動画が多数出ています。
水耕栽培キット
これにプラスして液体肥料と種を買えばその日のうちに水耕栽培がスタートできます

こういったものに刺激されて水耕栽培に手を出す人も多いと思いますが、多くの人は当初考えていたように収穫できずにイニシャルコストも回収することなく止めてしまいます、私の経験上しっかりとした野菜を水耕栽培で収穫しようとしたら最低でも5万円近いイニシャルコストがかかります。
確かに容器は100均で売っているもので代用はできますが室内でしっかり育てるには最低でも人口太陽光つまり植物育成用のナローバンドLEDライトが不可欠です、また電解濃度計(水溶液濃度を計測する測定器)など次から次へと必要な道具や消耗品が出てきます、つまりイニシャルコストに加えて種や液体肥料などのランニングコストは意外とかかってしまいます。
実際にやってみると大きな買い物をしているわけでもないのですが合算すると意外な出費に驚くと思います、私の試算上では野菜を完全育成するためのグロウテント+ラックに育成用ナローバンドLEDライト2セット、更に電解濃度計などの必須な機材を入れるとイニシャルコストは5万円ほどで種代に液体肥料などの消耗品に電気代も入れると年間ランニングコストは最低でも3万円程度になります。
つまり1年目は8万円ということになります、また水耕栽培できる野菜は限られておりイモ類やキャベツ・ハクサイなどの大型野菜に根菜類やつる性野菜は不可能ではないですが家庭用の装置では無理です、つまり手軽に栽培可能な葉野菜が主になり全ての野菜を調達できるわけではありません、そう考えるとかなり高いものになりそのときに必要な野菜を買ったほうがはるかに安く済みます。
結論を言うと水耕栽培やベランダ菜園、また趣味で行う自宅の庭を使った野菜作りはコスト面だけで計算すると買うよりも高くつきます、ただしメリットとしては採れたての安全な新鮮野菜を食べることができるということと農家さんしか食べることができないダイコンやニンジンの葉など栄養価の高い部位が食べられるということにつきます。
水耕栽培やベランダ菜園などは隠れたコストを無視しがちになります、家庭菜園を行う目的は野菜を安く手に入れることではなく家庭菜園でしか味わうことができない野菜の部位を安心して食べることができるというメリットを追求することが重要だと思います。
そして最後にもう一つ、家庭菜園を行うようになると野菜の世話にかなりの時間をとられます、忙しいからとちょっとサボれば一瞬で枯れてしまい水の泡となります、家庭菜園は収穫を目的とするのではなく野菜を育てるのを愉しむという目的を持って行うのが正しい家庭菜園の心得かと思うのです、そしていろいろな意味で余裕がないとできないのが家庭菜園という道楽なのです。
観葉植物を部屋一杯に置いていると部屋の中がツーンとした森林のような匂いに包まれることがあります、特に午前中は一段と強まります、これは新しい酸素の匂いなのですが多くの人は観葉植物が生成していると考えています。
確かに観葉植物も光合成を行い二酸化炭素を取り込んで酸素を吐き出しますが極微量です、観葉植物をたくさん育てている場合に起きる森林浴の匂いの元は観葉植物を育てている鉢の中の土から齎されます、正確にいうと土の中に無数に生息しているシアノバクテリアが酸素を生成しているのです。
実は森林浴の生きている実感を味わえる清々しい香りも樹木や山野草類が齎しているのではありません、その多くが土の中のシアノバクテリアが齎しているのです、事実は小説より奇なりで科学の解明による真実はまさに驚くべきことが多いです。
シアノバクテリアは水分があれば何処にでも繁殖する原核生物で藍藻(ランソウ)といえばピンと来る人が多いと思います、水田や池などに生えている青緑色した藻や粒子です、実はこのシアノバクテリアは海中に最も多く生息し地球のほぼ全ての酸素を供給していると言っても過言ではないほど地球生命体にとって極めて重要なバクテリアなのです。

また現存する真核生物である植物はこのシアノバクテリアを細胞内に取り込むことで光合成という武器を獲得し進化を遂げた生命体です、この細胞内にシアノバクテリアを一番先に取り込んだのがウメノキゴケやウグイスゴケなどの地衣類でキノコとコケの中間にあたります、この地衣類からざっくりコケ・シダ・ヤシ・針葉樹・広葉樹や草本類と植物は進化を遂げてきたのです。
動物の進化の過程は多くの人は知っていますが植物の進化を正確に知る人はほとんどいません、植物を正確に知ると如何に動物にとって重要な共存すべき生命体であることが解ります、そうなればきっと雑草を粗末に扱わなくなるでしょう、私は有害な雑草でもむやみに抜くことを躊躇ってしまいます、有益に他の動植物と共存させる方法を考えてしまうからです。
面倒な話はさて置いて酸素を生成する重要なシアノバクテリアですがアクアリウムや水耕栽培を行っている人にとっては敵対視されています、あっという間に水槽内や水耕栽培の液体内に繁殖し青緑色に埋め尽くします、ただ魚類にとっては稚魚の餌になったり水中に酸素供給してくれるので問題は無いのですが人間にとっては景観を損ねるのか本能的に嫌う人が多いです。
雑草と同じでシアノバクテリアの有益性を真に理解すると逆に有効活用したいという気持ちが沸いてきます、私は現在シアノバクテリアを積極的に各種の植物栽培に有効活用しようと考えています、意味の無い生命体はこの地球上には存在しないのです、何かしらの使命を持って地球上に生まれてきたのです、地球に生命体が誕生して以来全ての生命体は共存するように秩序に仕組まれているのです、人間の都合で有益か有害かを振り分けるべきではありません。
ちなみにシアノバクテリアを観察していると大きく2種類の形状があることが解ります、一つは糸状でもう一つは粒状です、メダカの繁殖を道楽にしている人は稚魚の餌用に粒状のシアノバクテリアを繁殖させたグリーンウォーターを必ず買い求めます、また医薬に役立たせようという研究も行われています、まだまだシアノバクテリアは研究途上にある謎だらけの地球で発祥した最初の生命体の一つなのです。
自然農法は未だに定義はありませんが基本的には肥料や農薬を使わなくても野菜を収穫できるということを目指した農法です、しかし自然農法を学んでいて幾つかのヒントを組み合わせていくと究極の農法ができると考えました、それが私が今後研究しようとしている自流の「放置栽培」であり、ずぼらな私にぴったりな名称だと思って気に入っています。
私が提言する「放置栽培」には今後の実験を明確にする意味において6つの事項を定義いたしました、それが①「耕起(土起こし)しない」、②「施肥(肥料を与える)しない」、③「散水(水を与える)しない」、④「除草(草むしり)しない」、⑤「投薬(農薬散布)しない」、⑥「種蒔きしない」です。
ここで特に最後の定義は疑問に思う人は多いと思いますが各種のデータを調査した結果可能だという結論を導き出しています、当然ですが毎年F1種を撒かないのですからどんな野菜が採れるか解りません、だからこその研究実験なのです。
※F1種:種メーカーが製造販売する収穫品種が保障された種。

これらの事項は順を追って説明していきますが、重要なことを申し上げますと私はずっと技術の世界にいたものですから曖昧な表現や根拠の無いことを提言することはしたくはありません、それは無責任な行為そのものだと思うからです、したがって何をするにも重要なのは最初から定義と根拠を明確にして提言することだと思うのです、それが何かを提言する者の最低限の責任だと思います。
そしてこの提言が正しいものなのかを6年前からベランダで少しずつ実験を行ってきました、大きな発砲スチロール製の箱2つを使って行ってきましたが肥料も農薬も使わずに新たに土を足すわけでもなく毎年ハーブ類が元気に育っています、ただハーブ類は雑草に近い性質なので実績としては極めて希薄です、そこで自由にできる畑付きの物件を購入しましたのでいよいよ本格的な実験を行っていきたいと思います。
ベランダで放置栽培のバジル・プチトマト・パセリなど
