植物が元気な春から秋は植物を道楽にしている人にとっては植替えから樹形を整えたりのメンテナンスに時間がとられます、更には水やりなどの世話も頻繁になり朝夕だけでもかなりの時間がとられてしまいます。
その点でいうと冬は植物と接する時間がぐっと減り2日くらい水やりをしなかったからといって枯れることもありませんので気持ちが楽になります、ただ特に盆栽においては冬の間にやっておくべきことはたくさんあります、本格的な冬到来を前に重要な準備の一番は冬剪定です。
毎年12月に入るとベランダでは管理しづらい雑木ものや幼苗は室内に取り込み冬の強剪定を施して冬超し準備をはじめます
冬剪定を施した「かいどう」
これ以上ないほど小枝を刈り込みました
何の木か解らなくなるのでラベルを貼っておきます。
同様に今年芽吹きした小枝を全て刈り込んだ「八房下野(シモツケ)」
既に来春の新芽が吹き出し幹に食い込んでいますので慌てて整枝用の針金を外しました
一番右側の枝を来年の枝振りを見てもう少し下げると樹形が落ち着くと思います
樹高を3分の1にまで刈り込む強剪定を施した斑入り「紅鳥花(コウチョウカ)」
樹高を低くして枝が横に這うように樹形を造る目的で数年分の小枝を一旦全てリセットしました
石付き根上がり仕立てで購入したのですが来年石を抜いて根を太くさせたいと思います
春になると新しい枝が次々と出てきます、冬に何もしないでいると古い枝に新しい枝が付きますので大きく樹形が崩れてしまいます、また盆栽では樹形を整えつつも何年間も樹高を同じ高さに維持させながら幹を太らせる必要があります、ちなみに枝が間延びした盆栽は価値が半減してしまいます。
ウメやモミジなどの雑木盆栽を始めたばかりの人はこの冬の丸刈りに近い強剪定に躊躇してしまう人が多いのも確かです、雑木は小枝を全て落とすほどの強剪定を行ってもそうそう枯れることはありません、春になれば新しい芽が吹き綺麗に葉を付けてくれます。
むしろ刈り込まない方が新芽が出にくい雑木もあります、花や実物雑木は古い枝には花も実も付きませんから来春の樹形を意識しつつ古い枝を剪定する必要があります、冬の剪定で来年の樹形がほぼ決まってしまいます、来年の樹形を描きながら思い切ってバチバチ枝を落としましょう。
大小の筒形ボトルに入れた標本型コケテラリウムが現在多数売られています、小さなものでは試験管に大きなものでも直径12Cmほどのロングシャーレ型のガラス容器で造られます。
価格はコケの種類によって異なりますが、一番安い直径2Cmほどの試験管型で1~2,000円ほど、ロングシャーレ型では3~5,000円ほどです。
私は生態観察記録を目的に新たにコケを入手する度に標本型コケテラリウムを造っています、今回はそういった標本型コケテラリウムのシノブゴケ版です。
シノブゴケはハイゴケ科のコケでハイゴケ同様に徘性のコケで成長速度はハイゴケほどではありませんが環境が良ければ割と簡単に繁殖できます、コケ玉や吊るしシノブなどにも利用されるので流通量も多く価格的にもリーズナブルな価格で購入できます。
また比較的乾燥にも耐性がありますのでオープンなテラリウムでも神経質にならずに利用することが可能です、シダ類で人気の高いシノブに似た容姿は小型ケースで造られることが多いテラリウムにおいて小さなシダ類を模倣できますのでかなり重宝します。
シノブゴケを使った標本型コケテラリウム
ライトを当てるとシダ植物のような葉の形が浮かび上がり、他のコケと組み合わせると非常に見ごたえのあるビジュアルを演出します
シノブゴケ(拡大)
☆創作ノート
・コケ シノブゴケ
・ソイル コケ専用ソイル(華みやび)、アクアリウム用洗浄済小石(GEX)
・ケース ロングシャーレ(15Cm長)
観葉植物や盆栽にと植物を道楽にしている人にとっては最大の天敵の冬がやってきました、冬は植物道楽家にとって本当に酷な季節です、なんと夏の水枯れで枯らすよりも本来なら頻繁な水やりから開放される冬の方がはるかに植物を枯らすリスクが高まるのです。
特に室内で植物を育てている場合は私の経験上冬の枯らしリスクは夏の10倍以上に高まります、この多くのケースは水のやりすぎによる根腐れです、根腐れを起こすと知らないうちに葉を落とし茹るように枯れていきます。
植物の多くは夜の気温が5度を割り込むと冬眠状態になり活動をストップします、観葉植物などは新芽が出ているにも関わらずそのままの状態で伸びるわけでもなく葉が開くわけでもなくフリーズしてしまいます、多くの人はこの状態を見て元気がないのは水が足りないのだと思い込んで水やりをしてしまいます。
この冬眠でフリーズしているときに水やりすると根が窒息してしまいます、そしてやがて根が死んでしまって過剰な水分により土中が酸欠になり好気性バクテリアが死滅し代わりに嫌気性バクテリアである腐敗菌が猛威を振るいます、その結果において根が腐り幹や茎まで茹であがるように腐っていくのです。
冬の季節は鉢の土が完全に乾きこれ以上乾いたら枯れてしまうというところでたっぷり水をさすようにすると好気性バクテリアも活動休止せずに根腐れリスクはかなり回避できます、そしてもう一つの冬の枯らしの大きな原因は暖房です。
室内で植物を飼育している多くの人はリビングなどに観葉植物を置き寝室には置いてないと思います、そしてリビングは夜エアコンを付けっぱなしの人はほとんどいないと思います、つまり日中は日が差し適温でもエアコンを止めた夜は意外と室内でも冷え込みます、この高低の大きな温度差も植物がストレスを感じてしまう要因になります。
多くの植物はストレスを感じると枯れていきます、その意味では植物も動物と同じなのです、また暖房による乾燥もまた大きなストレスになります、むしろ温度差が少ない室外のほうが育てやすいと言えるかもしれません。
室内で植物を育てている人は温度差が少ない状態を維持させてあげることが肝要です、例えば夜はビニール袋を被せるだけで乾燥や冷えを緩和させることができます、あとエアコンの風を直接当てないこと、そして冷える窓際ではなく日中半日陰となるような場所に置くとよいでしょう。
動物がいつかは寿命で死んでしまうように植物もいつかは枯れてしまいます、枯れることを恐れず受け入れることです、生きている間はできるだけ気持ちよく過ごしてもらえるように配慮する、こうして何年も生活を共にしていると植物ごとの水やりのタイミングを知り嫌がることが何かを学んでいきます。
植物たちは人間に多くの学びを与えます、植物も動物と同じ生命体なのです、共に暮らしているという家族感覚で接していればそうそう枯れていくことはありません、何故ならそこが自分にとって居心地がよい場所なのですから。
大小の筒形ボトルに入れた標本型コケテラリウムが現在多数売られています、小さなものでは試験管に大きなものでも直径12Cmほどのロングシャーレ型のガラス容器で造られます。
価格はコケの種類によって異なりますが、一番安い直径2Cmほどの試験管型で1~2,000円ほど、ロングシャーレ型では3~5,000円ほどです。
私は生態観察記録を目的に新たにコケを入手する度に標本型コケテラリウムを造っています、今回はそういった標本型コケテラリウムのコウヤノマンネングサ版です。
コウヤノマンネングサは単草では世界最大級のコケでコケキングと称されています、栽培もようやく本格的になりつつあり市場では唯一の1本売りされているコケです(流石キングだけあります)、現在価格は標準的なもので1本500円、脇芽が出ている株立ちなら1本800円程度と高額で送料を入れると倍になってしまいます、したがって私は大小5本セットで送料込み2,000円程度のものを購入しています。
扱ううえでの注意点として複数植えの際に葉と茎が触れるように植えてしまうと何故か互いに葉を溶かしあってしまいどちらも葉が無い状態になってしまいます、ただしこうなったら栽培素材としてソイルに埋めてしまうと半年ほどで新たな芽を出して再生します、同じ柄から再生したものは葉と茎が重なっても溶けることがありません、このあたりの生態がまだ研究中らしくコケ研究の歴史が如何に浅いかということが解ります。
単草で世界最大級のコケであるコウヤノマンネングサを使った標本型コケテラリウム
完全成長したものは高さ15Cm×直径12Cmのロングシャーレでも頭がつかえそうなほど大きくなる
脇芽が2つ出ています、環境が良いとテラリウム容器の中でも繁殖します
コウヤノマンネングサ(上部拡大)
なんて立派なんだ、これがコケとは誰も想像すらできないだろう
余談ですがコウヤノマンネングサを一回り小さくしたようなフロウソウというコケが存在しています、フロウソウは直立する柄にも葉が付いており上部も張り出すような大きな葉はありません、このフロウソウはコレクション価値はありますがビジュアル的に中途半端なのかテラリウムに使われることはほぼありません、ただし盆景には使えると思います。
問題は山採りしたフロウソウをコウヤノマンネングサとして販売している業者がいることです、コケに慣れている人はすぐ解りますが初心者には写真だけでは見分けがつかないので注意してください、実物で2つを比べてみれば如何にコウヤノマンネングサの存在価値が大きいのかが解るでしょう、機会があれば注意奮起を目的に購入して比較写真を撮りたいと思っています。
☆創作ノート
・コケ コウヤノマンネングサ
・ソイル コケ専用ソイル(華みやび)、アクアリウム用洗浄済小石(GEX)
・ケース ロングシャーレ(15Cm長)
盆栽の世界では盆栽キングと言われる超人気樹木の一つである糸魚川真柏(イトイガワシンパク)ですが、天然物は乱獲によって枯渇し現在盆栽で出回っているのは全て盆栽農家や盆栽家によって自家繁殖されたものです。
糸魚川真柏は新潟県と長野県にまたがる糸魚川周辺の高山だけに自生しているヒノキ科の深山柏槙(ミヤマジャクシン)という針葉樹です、他の地域の深山柏槙が葉寸が長く柔らかいのに対して糸魚川真柏は葉寸が短く硬いです、また幹もゴツンとした荒々しい幹をしています。
糸魚川真柏は険しい岩山の中で寒さと乾燥に耐え忍びながら種を保存してきただけあって自然の姿は折れ曲がったり樹皮が裂けて剥がれ落ちてボロボロです、そういうところが盆栽家にとってワビサビを感じ好まれるのでしょう。
盆栽でも小枝の皮を剥いたり幹の皮を剝いたりして厳しい自然で生きる糸魚川真柏を模した樹形を意図的に創作されています、このあたりが他の樹木と異なり特異な樹形が創作され高値で取引されています。
100年以上の大品(樹高40Cm以上)盆栽の中で1メートルを超える受賞作なら5,000万円以上するものも珍しくありません、これらは世界中の盆栽バイヤーが買い付けに日本にやってきます、日本で長い間守られてきて何度も賞を受賞した糸魚川真柏の盆栽秀作がどんどん海外に流れていっています。
糸魚川真柏に基本樹形である「模様木」仕立ての曲がりを付けた6年もの半完成品素材
針金を外し育成鉢に自家製ブレンド用土で植え替えしたばかり
糸魚川真柏の中品(樹高20Cm~40Cm)の10年以上の各樹形ものの半完成素材
小枝を出させ幹を太くするために主枝や脇枝をあえて伸ばし放題に育成します
既に主幹元の太さは3Cmを超えてきました
来春には剪定して樹形を整え化粧鉢に植え替えしたいと思います
今や女性にも大人気の糸魚川真柏の極小ミニ盆栽(左)とミニ盆栽(右)
※ミニ盆栽(樹高10cm以下)
左の極小ミニ盆栽は樹高はプロの盆栽士の手によってなんと5Cmにまで畳み込んでいるにも関わらずしっかりジン(皮を剥いた小枝)やシャリ(皮を剥いた幹)まで付けている逸品、小さな鉢に入れられ元気を無くしていたので養生のために大きめの鉢に植え替えました
そんな盆栽キングというべき大人気樹木の糸魚川真柏ですが私の故郷近くの樹木とあって親近感もあり盆栽の完成品から素材まで現在100鉢を超えるほど所有しています、それでも毎月のように気に入った樹形を探しては買っていますので増える一方です。
今や盆栽は日本発祥でありながら海外の盆栽人口の方がはるかに多いです、その人たちにとっても憧れの樹木だけあってミニ盆栽でも1万円を超えるものも珍しくありません、むしろ最近大人気のミニ盆栽のほうが一般的な大きさの中品盆栽よりも高く値段が付けられる例もあります、プロの盆栽士の作品であれば基本樹形が整っているだけで他の樹木の完成品よりも高値で取引されています。
尚、2020年に糸魚川真柏活用プロジェクトが新潟で発祥しており糸魚川真柏を守り自然に自生する雄大な姿が見られるようにするために活動しています、現在自然自生地は糸魚川真柏ジオパークとして採取禁止区域となっています。
注意点として普通の深山柏槙を糸魚川真柏として売っている例が多々見られます、私も糸魚川真柏として買ったものの中に後に成長して普及樹木の深山柏槙だったと解ったものが半数を占めています、苗が小さい時には見分けがつかないのでネット通販ではなく確かなところで実際に確認してから買いましょう。