「核家族」という言葉は既に懐かしい感じがします、ここ数年の世の中の動きを見ればまるで核家族から更にそれぞれが分離して生活する「個の時代」を予見させられます。
テレビでは人知れず孤独の中であの世へ逝ってしまう「無縁死」が取りざたされています、身元調査しても戸籍にも無く何処の誰なのか特定できない人も年々増えてきているといいます、他方「24時間以上人と会って会話をすることが無い」という社会隔離生活者も年代に関係なく急増の一途だといいます。
そういう人の向かうところの一つがネットの世界です、ネットの中では現実の世界とは無関係に他人と文章や映像による会話もできます、また自分が発信した記事に反応があり孤独さを紛らわすこともできます。
また現実とは無関係に作り事の世界でヒーローやヒロインとして存在することも可能です、でも実在する世界とはまったく異なる次元の「バーチャル」という仮想空間です、ネットからちょっとでも離れれば「現実」というシビアな世界に引き戻されてしまいます。
更にネットでは何度か実際に会って互いに相手のことを確認するまではどんな人なのかも正確には解りません、文章では若く感じても自分よりもはるかに歳上の人でしかも自分の業界の大先輩だったりすることもあります。
したがって非礼があれば些細なことですぐ関係を切られてしまいます、リアルでは決してありえない人にありえない言葉を発しているのですから当然のことです、ネットはあくまでもツールであって人間関係のきっかけこそ与えてもそれを構築できるのはあくまでもリアルな関係でしかあり得ません。
私は現在の「個の時代」はまさにこのネット社会が齎した悪しき産物だと考えています、便利さの裏には必ず伏兵が隠れているものです、リアルな人間関係が構築された後に情報交換や連絡用にネットは使われるべきだと思えてなりません。
今までは「ネットとリアルの融合」が叫ばれました、これからの時代はおそらく「ネットとリアルの共存」にこそ大きなビジネスチャンスが在ると思います、リアルとバーチャルという2つの次元を成功者は決して一緒にして思考していません。
先の東日本大震災の2年後、日経新聞などに掲載されたあるニュースの反響なのか直後から同じような相談が相次いで舞い込んできました、そのニュースとは「福島原発問題を自ら解決しようと東電社員が地元に太陽光発電所を作る」というものです、その費用は協賛会社を集い2億円の資本金を集めて建設するといいます。
そして舞い込んできた話というのが全国各地の用地買収、太陽光パネルの格安調達、大容量の安定化リチウムイオンバッテリーリの調達などです、先のニュースの真似をして太陽光発電所を建設しようということは容易に解りました。
ただ先の元東電社員の件は原発事故後の地元のあり様を見て聞いて、そして住民からの罵声を浴びることによって大きな志を持ち「生涯を地元復興に捧げる」という気持ちで利益は度外視しています。
新聞に載っていた建設資金と売電の収支計画を見ると収支が合うのが15年後です、なんと計画通りでも15年間も赤字です、それも多くの賛同者や協力会社の支援を貰っての話です。
ちょっとした気持ちでやれる事業ではないのは事業計画を見ればすぐ解ります、儲かりそうだから手を出すというのは志ではありません、「新エネルギー関連は資金調達しやすい」という思惑を感じ取ってしまいます。
ビジネスは「儲かりそう」という発想だけでは上手くいきません、それよりも使命感に似た志からやるべきです、その結果において儲かるかもしれない代物なのです、それを熟知している人が成功者となれるのです。
プロ野球名バッターの「ヒットとホームラン」に関する哲学的な談話を集めて比較してみたら面白いようにそれぞれの個性が浮かび上がってきました、「ヒットはホームランの打ち損じ」とは中村紀氏の談話、「ホームランはヒットの延長」とは松井稼氏の談話、「ヒットとホームランは別物、狙って打つのがホームラン」とはイチロー氏の談話です。
名バッターと言われる人たちでもヒットとホームランに関する捉え方や思考がまるで違っているのが面白いです、これをビジネスで考えてみてヒットを安定継続的な業務請負契約案件、ホームランをスポットの高利益大型案件として置き換えてみるとどうでしょう?
おそらく成功している経営者はそれぞれに違った表現をするに違いありません、こういうビジネスに関する姿勢を「ビジネスマインド」と言います。
このビジネスマインドがパートナーと異なっていると何処かですれ違ってきてしまいます、また多くのプロ野球名バッターに共通している「追い込まれるとホームラン狙いとなって三振や凡打となる」という言葉はビジネスでも同じことが言えます。
単発のホームランは確実に点が入るが限定的です、四球やヒットで塁を埋めながらのホームランは大得点に繋がります、これもコツコツと累を埋めていくことが如何に重要であるかということでビジネスにも共通しています。
そして「ヒットやホームランは結果、ただ来た球を打つんですよ」という達川光男の談話は、起業間もなく事業ベースがまだ固まっていない人には大きな気付きとなる言葉ではないでしょうか。
私の景気ウォッチングの一つにテレビ番組の編成があります、景気の良い時にはドラマやドキュメンタリーなどが多くなり景気が悪くなるとクイズやバラエティ物が多くなります、つまり予算により番組の方向性が決まってしまうということで確実に景気トレンドと一致しています。
これらの番組編成とは別にしてこの1年ほどテレビ番組をウォッチングしていて気付いたことがあります、それは今まで表舞台には出ることが無かったCMやアニメソングの歌手、カラオケのガイドボーカル、アニメなどの声優、世に溢れる自販機や駅構内のアナウンスサー、そういう裏側の人たちにスポットが当てられています。
テレビだけではなくゴーストライターの実名出版でのヒットや主婦ライターの突然のブレークなど今まで陰に隠れていた人達が突然のように表面に出てくるようになりました、これは大きな流れを感じざるを得ません、どのような業界であれ隠れていた人材が表面化するトレンドに入ったのかもしれません。
ここにもまた事業やビジネスチャンスを多く見出すことができます、大きな時代の流れを肌で感じることができる人が次代のビジネス勝者なのです、どんな人にも必ず有能な人材が隠れています、今まで友達感覚で付き合っていた人など視点をビジネスに切り替えて再度思考してみてはいかがでしょうか、意外な人が自分の周りに存在しているのかもしれません。
「紺屋の白袴(こんやのしろばかま)」という諺があります、これは紺屋(染め物屋)なのに自身は白い袴でいるということを表し「他者の事ばかりを行っていて自身の事は後回しになる」ことを意味します、同様に患者には立派な言葉を並べたて注意を促すのですが自身は忙しさでケアが全く行えずに病気になってしまうという「医者の不養生」も同様の例えです。
改めていろいろな会社を思い浮かべては考えてみると、確かにその道のプロとして活躍している人ほど自身の事は意外や後回しになってしまっている例が多いことに気が付きました。
WebデザイナーのHPが3年間もリニューアルしていなかったり、栄養士がメタボだったり、営業支援の会社が自身の仕事が無かったり、そんな何かおかしいと思わざる事が多々あることに気が付きます。
かくいう私も同様でした、他者の経営状況には的確に改善を促せるが自身の会社の事は判っていながら後回しになっていたという事実が多々あります、これに気付けばやはりその道のプロはその道は良く知った道です、更にはこれも良く知った自身の事です、他者事の数倍の速さと的確さで改善できます。
「その道のプロは、その道に躓く」、自身の事が後回しになっていないか、これを機に冷静に自身の身の周りにも目を向けてみてはいかがでしょうか。