2023年10月20日 08:00
「NDA契約? それは信頼があれば不要でしょ? 当社を信頼できないの?」
大手商社と事業提携を進めていく中での相手企業の専務の言葉でした、これは私のなかでのパートナー企業との信用・信頼感という意義を大きく変えた一言でした。
「NDA」契約とは「Non Disclosure Agreement」のことで日本語では「機密保持契約」のことです、バブル期辺りから日本でも単に「NDA」と呼ばれており、要約すると「相互に相手企業の事業推進上知りえた如何なる情報も第3者に洩らしません」と宣言するものです。
通常の場合では業務提携や基本契約が行われる過程において一時的に交わされる契約書(覚書)です、基本契約に至った場合は基本契約書に同様の旨が記載されるために廃棄される(失効)のが普通です。
基本契約に至らなかった場合は、向こう5年間など比較的長期に渡り機密保持を約束することを記載するのが一般的になっています。
冒頭の商社とはその後に販売業務提携という形になり事業推進上の重要なパートナーの一社となりました、私としては相手企業は東証一部上場の企業です、当然のこと近年言われるところの「企業コンプライアンス」意識に照らし合わせてもNDA契約が必要と考え、むしろこちらから失礼がないように切り出したつもりでした。
ところが専務曰く「人間関係という信頼関係が一番なんだよ、それが確信できない者や信用できない者がやれ機密保持だのNDAだのと言うんだ」と、この一件以来パートナー候補企業に対して私から先にNDAや機密保持契約という言葉を一切使わなくなりました、むしろどんな相手でも向こうの意思に任せるようになりました。
ただ周囲にはその危険性を叫ぶ声もあることは確かです、また将来のリスクを考えればNDA契約締結は必須だと思います。
ここで言いたい事は提携を前提にした相手に知られて困るような企業情報とは何なのかということです、新規事業やビジネスプランなどを真似されたら困るでしょうか?
正直な話し全然困らないのです、どんどん真似てやって欲しいとさえ思います、むしろ市場が活性化し広がることに繋がりこちら側には何らのマイナスになるとは思えないです。
特にIT業界は今日の情報はもう明日には古い情報となり殆ど意味の無いものとなります、実際に事業とは日々進化と変化を繰り返すものですから。
退社する社員がいろいろな資料を持ち出すことがあります、顧客情報と取引関係以外は私はあえてうるさく言いませんし「当社で学んだことを活用していいよ」と言っています。
そう考えればNDAを結ぶことや情報機密に気を使うよりも人間関係を損ねないことに気を使ったほうが数倍良いということではないでしょうか、ただし絶対に公開されてはいけない情報があります、それは業務上知りえた相手企業の「個人情報」です。