2023年10月18日 08:00
「当行は会社に融資したんじゃない、社長に融資したんだ!」
私の大きな勘違いを気付かせてくれたメインバンクの担当課長の一言です、企業は事業の成長と共に組織そのものも大きくなっていきます、新事業への投資を受けるために会計監査法人や経営コンサルタントなどを顧問にして経営全般に対しての指導を受けるようになります。
彼らはしきりに「スーパーマン社長(一人で経営も営業も技術もやってしまう)の危険性を訴えてきます、また近代経営などの資料を持ってきては読んでおいてくれと言います、これらには社長の身に何か起きたとき会社を守るための手法として危機管理などが示されています。
これらを読み彼らの話を聞くうちに「なるほど、こうしないと確かに危険だな」と素直に考えるようになってきます、そこで役員会で権限と責任の分散を行う決議を取り社内のルールを改正していきます。
この改正から約1年後辺りから銀行や出資企業の態度が徐々に変化を見せ始めてきたのです、銀行は貸し渋るようになり出資企業も役員会に出てこなくなってきました。
現場の社員やパートナー企業から担当役員に対する不信や不安、反発のメールが直接私に送られるようになってきたのもこの頃からです。
当の私は権限と責任を分散したことで事業推進以外は口も出さないようになり、頭の中から資金繰りと社内マネージメントに関することは薄れてきていたのも確かです。
そして大きな新事業推進のための金融支援を要請するためにメインバンクに久しぶりに顔を出したところ、担当課長からいきなり冒頭の言葉が返ってきたのです。
更に続けて「ベンチャー企業とは社長のアイデアと推進力が命なんです、それがベンチャー企業の最大の魅力じゃないですか? それを他の役員に任せてどうするんですか? 正直今の貴社には以前に見る輝くような魅力は何も無い、今の状況を続けるのであれば当行は支援をお断りするしかありません」、顔面蒼白になり頭を強く叩かれたような気持ちになった瞬間でした。
私はなんていう過ちをおかしていたのでしょうか、ベンチャー企業の社長はあくまでも自分の事業アイデアを前面に出し社内外をリードしていかなくては駄目なのです。
ベンチャー企業や中小企業の経営者は権限や責任を他者に委譲できるわけがないのです、何故なら融資は全て社長の個人保障なのですから。
スーパーマン社長の危険性とは実はそういうことではないのです、社長が入院しても資金繰りの不安や事業推進が止まらないような社内システムを構築することが肝要で、それがイコール権限と責任の分散ではないのです。
ベンチャー企業や中小企業の社長はある意味ワンマンじゃなくては駄目なのです、そしてこれはイコールワンマン経営とは次元が違うのです。