2023年9月22日 08:00
リーマンショック後に経済誌やテレビなどで「100年に一度のピンチは100年に一度の大チャンス」という経済評論家が後を絶ちませんでした、みなさん口をそろえて投資や会社建て直しの好機と説いていました。
私は天邪鬼(あまのじゃく)なのかこの言葉を聞くたびに「景気回復は相当延びるな」と思っていました、結果更に10年以上も低迷が続きました、これは私の予想よりもはるかに長い景気低迷期でした。
投資の世界で俗に言う「ブル/ベアの錯誤」は確実に景気判断にも生きています、「ブル/ベアの錯誤」とは強気派(ブル)が多数になると景気低迷し、弱気派(ベア)が多数になると景気回復するという状況と心理が不一致を起こすというものです。
オイルショック・バブル経済崩壊・リーマンショック(サブプライムローン壊滅)と、綺麗に約20年単位で景気が厳しくなると冒頭の話しが出ます。
その結果どうでしょう、予想をはるかに超える長期不景気が訪れています、バブル崩壊の後遺症はなんと12年も続いたのです。
この裏にいったい何が潜んでいるのでしょうか、土地が下がる、株が下がる、一流企業が赤字転落する、このときマスコミや評論家は常に「景気の底」と言ってきました。
そしてそれを信じて最後の賭けをする人が増えます、相場が上がることを信じて損を補う為に残った財産を投入するのです。
しかし現実は非情にも予測通りにはなりません、土地や株を買う人が増える一方で不良資産を抱えている企業や投資家は揃って売り逃げを仕掛けて損失を最小限に確定しつつ不良資産を解消し身軽になっていくのです。
そして、企業の確定売りが一巡して買い手がいなくなったとき「底なしの暴落=本格的な不景気」が始まるというのが相場シナリオの定石です、個人は売るにも売れない状況になりあっという間に資産が減少します、そして他の商品も買い手が付かなくなり巷には物が溢れ価格も暴落し恐ろしいデフレが発生するのです。
日本の会社の99%は中小企業です、その経営者がこういう事態に巻き込まれたらその会社はどうなるのでしょうか?
景気が一旦悪くなると大企業のリストラが盛んに行われます、一度に数千人という規模ですから大きなニュースになります、しかし中小企業の倒産が相次いだら1社当たりは少ないのですが数千社となれば大企業の比ではない失業者が発生します。
景気回復の直前が最も厳しい不景気になるという統計があります、それに照準を合わせて大企業は保有資産の確定売りを仕掛けてきます。
「100年に一度のピンチは100年に一度の大チャンス」などではありません、「100年に一度のピンチは現存する人類が一度も経験したことがない程の恐ろしい究極のピンチ」なのかもしれません。
変な期待を持たず当面の経済状況は最悪の状況であることをまず認めることが肝要です、そして景気低迷期は事業の成長を仕掛けるときではなく体力を温存しつつ次の春に向けて培ってきた種をベースに次代にくる好景気に合わせて新たなる事業を作るときなのです。
場合によっては古い体質や陳腐化した事業を手放す絶好のタイミングでもあるのです、厳しい現実を潔く認めることができるのが真の「強い」リーダーなのです。