2023年8月 2日 08:00
「パラドックス」とは数学や物理学で用いられる言葉で、多くの仮説から一つの解を導く時の大きな勘違いを定説化した言葉です。
それは、「一見正しそうに見える仮定と一見正しそうに見える推論から、正しくなさそうな結論が得られる」、この正しくなさそうな結論のうち本当に正しくない結論を「パラドックス」と言います。
ここで、科学者の間で有名な「究極のパラドックス=ウサギとカメ」を紹介します。
仮定:カメを追いかけるウサギが存在するとして、カメより明らかにウサギの方が速度が速くてもウサギはカメを追い越すことはできない。
推論:ウサギが少し前のカメの位置に到達したときにはカメは更に移動し先へ進んでいる、したがってこれを繰り返すことになるので永久にウサギはカメを追い越すことはできない。
結論:以上の考察から、ウサギはどんなに早く追いかけても永久にカメを追い越すことはできない。
さて皆さん、この究極のパラドックス、何がおかしいのか解ったでしょうか?
皆さんは絶対におかしいということは解っています、でもそれが何故おかしいのかが不明瞭なのではないでしょうか。
例えば経営コンサルタントの指導が「パラドックス」であった場合、それを見破ることができないと順調だった会社が窮地に追い込まれることになります、しかもこれは実際に良くある話で別に珍しいことではありません。
コンサルタントは悪くはないのです、ただそれを見破れないことが問題なのです。
多くの経営コンサルタントの提案は事実「パラドックス」である場合が多いです、それは多角的に見る必要のある場面で営業とか資金繰りとか、幾つかのポイントだけを見てアドバイスするからです。
世に存在する多くの経営コンサルタントとは、そもそもその程度のことしか分析できないと思っていただければ幸いです、それはそうです自身で肌で感じるような経営を経験してきているわけではないのですから。
経営とは、自身で社員を雇い事業を興した人でなければ経営の実際のところは解らないのです。
最後に、「パラドックス=ウサギとカメ」の「パラドックス」を解説しましょう。
実は、「追い越す」という過程においては物理的にみると3つのポイントが存在します、それは「追いかける」、そして「追いつく」、最後に「追い越す」です。
「パラドックス=ウサギとカメ」の推論では、最初の1つの「追いかける」ということだけをピックアップして推論しているに過ぎません、当然「追いつく」も「追い越す」も無いのですから絶対に追い越せないのです。
実際は、ウサギはカメを「追いかけ」ます、この間は確かに以前カメが居た所までウサギが来るとカメは先に行っています、しかし徐々に差が縮まりあるポイントで並びます、つまり「追いつき」ます。
その次の瞬間にウサギはカメを「追い越し」ます。
大局的な話をしますと、「物事の真実は良い事も悪い事も全てを把握してからでないと真実は永遠に解らない」ということです。
人も同じで、悪いところを自分で知った上で良いところを伸ばさなくては偏った守りに弱い人間になってしまいます。
「良いことだけを見て伸ばしましょう」という最近のコーチングですが、経営者を育てるという観点でみると極めて怖い結果が起きると危惧しています。
「悪いことも把握したうえで、良いところを伸ばしましょう」が経営者には重要な思考なのです。