2023年8月 1日 08:00
船井総合研究所(船井総研)創始者である船井幸雄氏を知らない人はいないほどで、日本で始めて経営コンサルタント業で一部上場を果たし、その経営手法は多くの大企業に採用され経済活性化の一役を担ったことは確かです。
晩年の船井氏は、突然「陰謀論」的な書籍出版や「スピリチュアル」的な事業を始めて話題を振りまきました。
そんな船井氏の経営手法を、ハーバード大学経済部大学院は研究成果として非常に簡素でしかも適切に表現しています。
それは下記の3項目です。
1.利益よりも社会性を重んじる。
2.人中心に考え、金・物・ノウハウより人材を最大の経営要因と位置づけている。
3.短所是正でなく、長所伸展を考える。
しかし経営経験が少ない、もしくは未熟な経営者がこれらの手法のそのままを鵜呑みにしてしまうと誤った解釈となり、折角の良書が悪書に変わってしまう危険性があると私は考えています。
それが、私の昔から言う「充分に経験を積むまで経営指南書を読むな」という言葉に通じています。
例えば1項目の「利益より社会性」ですが、これは上場企業などの資金や人材に余裕有る組織に対しての経営指南です。
例えばメセナ(地域社会活動)などを通じて地域の人に企業価値を理解してもらう話であり、ベンチャー企業や起業したばかりの企業がこれを実行していたら何時までも赤字が続くことになりかねません。
また2項目の「人中心」もおなじことで、金・物・ノウハウを武器にしてはならないということではなく、これらは人を教育しパートナーなどを大切にすることで大きな人脈を形成でき自分に無くてもそういう人脈からもたらされるということです。
企業はあくまでも武器を持たなくてはなりません、それは商品であったりサービスであったり技術や特許であったりするものです、しかしそういうものは優秀なる人材を抱えることで初めて実現できることなのです。
そして3項目の「長所伸展」では今流行りのコーチングによるブレークスルー思考と混同し、自分に都合の悪いことは考えないと解釈してしまったら経営者として終わりです。
ブレークスルー思考は社員教育や自己啓発の手法であり、経営手法の改善とはそもそもが異なる次元のものです。
経営を学ぶなら他者の手によるコーチングで鍛えるのではなく、あくまでも実践での経験で自ら汗水垂らして鍛えるものです。
しかし、恐ろしいことに本しか読まない若手経営コンサルタントがこれを混同して経営者にアドバイスしたりするから実に危険極まりないのです。
悪いところをしっかり把握し理解したうえでそれを是正する時間やお金が有るなら、もっと有効な部分に集中すべきであるということです。
コーチングで言う、「悪いところは見ない考えない」では経営は成り立ちません。
これはほんの一例です、書籍とは口頭のやり取りとは異なり勘違いや誤りをその場で訂正できない一方通行の情報です、したがって読む人の経験値がそのまま結果として出てしまいます。
経営指南書を読むなら、まず多くの経営実践を経験して良いことも悪いことも理解できたうえで読むべきなのです。