2022年9月29日 08:00
心理作用である「プラシーボ効果」は、あらゆるところで引用されるためご存知の方も多いと思います。
特に発想転換や思考方法の例としてよく用いられていますが、私には一つの大きな疑問があります。
「プラシーボ効果」とは暗示効果を示したもので、砂糖やデンプンを風邪薬と言って飲ませたところ本当に治ってしまったという有名な報告です。
しかし、私が危惧するのは多くの「成功書籍」の中で暗示効果の例として用いられているこの報告のデータそのものの本質です、つまり著者は真実を知ったうえで正しく用いているのかどうかです。
この有名な効果に関しては、その後日本でも医学的に真相を確かめるために多くの実験が行われました。
結果は風邪では約30%に効果が見られました、ただし本来の自然治癒力などで治ってしまった可能性も否定できなく、実際は風邪では立証できないという結論も出ています。
更に怖い例としては北里大学における臨床結果があります、肝臓を強くする薬と称して正常なる108人に対して臨床試験を試みたものです。
その結果、なんと18人が正常であった肝臓に肝機能障害を起こしてしまったのです。
これは最初の「プラシーボ効果の報告」でも触れられていた、「副作用の危険性」の一つであり先の風邪の実験でもわずかに見られました。
「副作用の危険性」とは、「自分はもしかしてひどい病気なのではないか?」という逆の暗示にかかってしまったことを意味します。
私は「プラシーボ効果」を「前向きになる思考法」などという例として用いることに否定するつもりはまったくありません、しかし実際のデータを知っていたら果たしてその著者は例として用いたのでしょうか?
例を用いて話をすることは決して悪いことではありません、しかし用いるのであれば悪いことも含めて自身で検証した上で用いるべきだと思うのです。
何故なら詳しい業界の人が見たらどう思うかを意識してほしいのです、それが大きな波紋を呼ぶことさえ実際に起こりうるからです、つまり著者はその内容に責任を持っていただきたいのです。
例はあくまでも他人の言葉や分析結果ではなく自分の経験や体験上の話をすべきです、よく知らない分野の他者の言葉を借りてきても響かない人には全く響かないどころか知らずに専門家の逆鱗に触れたりします。
人の心に訴えかけるのであれば、あくまでも例は自分の体験や経験に基づく事実にとどめておくのが正解かもしれません。