2022年9月28日 08:00
思い起こしては気持ちが新たになる記憶、それは私が26歳の時のモスクワでの約100日間に渡る厳しい体験です。
当時私は世界最大の外資系エアライン専用のネットワーク会社にフリーのSE(システムエンジニア)として在籍していました、入社当時から海外出張は多かったのですがモスクワだけは脳裏に焼きついて忘れることができないほどの辛い思い出があります。
当時の海外出張は長くても2週間ほどのシステムの最終動作確認と打ち合わせでしたが、2回目のモスクワ出張で解放されたのがなんと4ヶ月目だったのです。
国営の業務であり、当時のロシア(旧ソビエト連邦)は完全なる共産主義で今のような情報開示や自由は全くありません、国際電話は空港まで行かないとできません、したがって日本に連絡すら簡単にはできなかったのです。
20代の若僧一人でどうやって業務をこなし生活していけるのか、半月で生きる気力を失ってしまいました。
店で買える物といえば揚げパンや骨だらけのフライドチキン(ただ揚げてあるだけ)、甘いだけのお菓子、レストランに行きメニューを見ても何もかも判らないし英語もほとんど通じません。
街をうろつけば警察に捕まり訳のわからない取調べの連続です、飲まず食わずで仕事場に箱詰め状態でした。
業務の先が見えてきたところでようやく食事に連れて行ってもらったり、現場で仲良くなった担当者にサンドイッチを貰ったりで何とか腹だけは満たされるようになりました。
地獄のような日々を100日間、髪の毛はこの100日であっという間に真っ白に変わりました。
しかしロシアで学んだことは人生においてとても大きいものとなりました、最も大きな収穫は「人は追い込まれるとものすごい生命力を発揮する」ということです、更に「最悪の状況になると人間は生きる知恵が出る」、「何事も諦めない強い精神力が物事を好転させる」ということを学びました。
そして、その後もロシアには計6回行きましたが3回目からは普通に生活できるまでになりました。
ロシアは1年を通して殆どがどんよりとした曇り空で春でも冷たい霧雨の日々です、小寒い日は当時のロシアを思い出します、私を「ぶれない鉄のハート」に変えてくれたロシアでの辛い日々を。
厳しい状況下でも決して諦めない、何故ならそうしているうちに打開する知恵が湧き何時かは苦境を克服できることを身を持って学んだから。