エントリークラスの小型ブックシェルフの実力の程は?-4~オンキョー D-SX7A & D-
2024年2月20日 08:00
90年代中盤に入ると各社からミニコンポが次々と発売されます。
そんなミニコンポに付属される小型スピーカーは単体として発売されていませんが、スピーカーだけグレードアップして使用する人が多いのかミニコンポの購入と同時にスピーカーだけ下取りに出す人がいます。
当時オーディオショップには、こういったセット物の箱入り新品の小型スピーカーが「新古品」として店頭に並ぶことは珍しくありませんでした。
例え元箱入りの新品であっても、一度購入された物は中古として表示するのが商法上の良識なのです、そこで新品でも中古という意味で「新古品」という奇妙な名称がつけられました。
また購入と同時に下取りに出すと、結果的に必要な部分だけを値引きして買えることになります。
そんな箱出しもしていない新品なのに中古価格で買えるセット物の小型スピーカーですが、幾つ持っていても各種の実験にも使えるので邪魔にならないだろうと見つけては購入していた時期があります。
こういった類の私の手元に現在も残っているセットものの小型スピーカーは、オンキョーのD-SX7AとD-SX9A(共に2003年発売、単品販売されてないので価格は不明)です。
オンキョー D-SX9A(左)とD-SX7A(右)
この2つのスピーカーは大きさはほぼ同じですが、D-SX9Aの方が若干大きく仕上げが生木の光沢仕上げで高級感があります。
ツイーターは同一製品と思われますが、ウーハーはD-SX7Aが12Cm、D-SX9Aは13CmとD-SX9Aの方が若干大きいくらいで、使用している振動板は同じオンキョー独自の当時の定番であるOMFコーンです。
このOMFコーンは名機D-202AX LTDなどにも使われているコーンで、そういったところを見て音質を期待しての購入だったのかもしれません。
単体ものだと年代的にD-032AXと同程度でしょうか、その意味であえて価格をつけるとしたらD-032AXがペアで1万7000円ですので、D-SX7Aがペアで1万5000円、D-SX9Aがペアで1万9000円程度だと値踏みできます。
ちなみにD-032AXはハイコストパフォーマンスな小型ブックシェルフで、外見からは想像もできないシャープな音質が魅力です。
さて、肝心の音ですが2つとも最低周波数が50Hzとありますが、ソースダイレクトモードで試聴するとメインスピーカーとして使用する為の必須低音域がほとんど聴こえません。
なるほど、オンキョーのミニコンポ用のアンプにはスピーカープレゼンスという機能が付いており、これをオンにして使うのを前提にしているのかもしれません。
普通のアンプのラウドネスは低音域と高音域を持ち上げますが、スピーカープレゼンスは実際に音で確認すると低音域だけを持ち上げるスペックのようです。
オンキョースピーカー特有の中高音域の張り出しは2つともあるのですが、ソースダイレクトモードですと高音域の妙な響きが耳について正直じっくり聴き込むには辛い音かもしれません。
こういった傾向の音質なので、購入と同時に下取りに出して高音質な小型スピーカーを別に求める人が多かったのかもしれません。
当時から製品毎の情報交換サイトが乱立しており、こういった情報を元に購入と同時に下取りを行う人が多かったのでしょう。
また、ラウドネスやスピーカープレゼンスで低音域を補正すると確かに低音域が出てくるようになるのですが、特定の低音域で共鳴するような音が入るのが気になります、つまりスピーカー自体の低音域再生の限界を示していると思います。
若干ですが、D-SX9Aの方が低音域が伸びていて中音域も張り出し感がありますが僅かな差です。
ホームシアターのサラウンド用に使えるかと思っての購入ですが、改めて音質を確認するとこれもちょっと厳しい感じがします。
もう少し高音域を落ち着かせて中音域がシャープに張り出すといいのですが、セット物のスピーカーにそれを求めるべきではないでしょう。
サラウンド用に音質改善するならユニット自体は問題なさそうなので、スピーカー内部のネットワークを調整すれば高音域を落ち着かせて中音域を張り出させることができそうです、オーバーな話しだとツイーターを切ってウーハーだけでフルレンジ仕様にしても良い気がします。
こういったセットもののアンプにはサブウーハー用の端子が付いていますので、サブウーハーと合わせて確認したら意外やトータルでの音質が聴ける音質に変貌しました。
サブウーハーと合わせてテレビ音声向上用やBGMシステムにはかなり使えそうです、ただし当然のことですが硬質な張りのある低音域は望めません。
そんな感じで、どちらも単独使用ではちょっと使い道に悩みそうなスピーカーです。
セットものはセットのアンプと合わせて使用するように音質調整がされているので、個別に買って他のアンプと合わせても音質が調わないということが今回の実験で明確に解りました。
ただ、工夫次第では中高音域はしっかりしているのでアンプ側で低音域を補正するモードを使えばサブシステムとして充分に使えるスピーカーだと思います。
現在、美品がペアで数千円で中古市場に溢れていますのでサブウーハーと合わせるかアンプ側で低音補正する事を前提に購入して、テレビの音質改善やPCオーディオに使うと安価で良質な音のシステムを組むことができます。