2025年4月 4日 08:00
2025年4月 4日 08:00
2024年11月26日 08:00
コケ類は実に多様な容姿で葉寸も数ミリから10センチほどと幅が広く日本だけで生息が確認されているだけで1,700種を超えます、しかし多くの日本人がイメージするコケは間違いなくホソウリゴケかギンゴケだと思います、ホソウリゴケとギンゴケは日本全土だけではなく海外のどこに行っても見かけるハリガネゴケ科のコケで地球上に最も広く生息しているコケだと思います。
中でもホソウリゴケは道路の脇やビルの隙間と本当にどこにでも生えています、しかし他のコケの多くが生息地としている山林や川の淵などには不思議と生えていません、つまりハリガネゴケ科のコケは山林ではなく過酷な環境の人里に生息することで種を保存するように進化したコケだと言えます。
ハリガネゴケ科のコケは乾燥や直射日光にめっぽう強く、ホソウリゴケは茶色か黒色になり仮死状態で何年間も生きられます、そして雨が降って水分を取り込むとあっという間に緑色に変色し脇芽を出して成長していきます、逆に他のコケ類には最適な環境の湿気のある半日陰では蒸されたように葉が黄色になり腐ってしまいます。
どこにでも生えているホソウリゴケ
多くの人のコケのイメージがこういう感じだと思います
ホソウリゴケなどのハリガネゴケ科のコケは一つ一つの葉は極めて細く短いのですがドーム状にコロニーを形成しながら生息域を広げていきます、そのコロニーの中心部は枯れた葉でできておりスポンジ状の構造になっています。
つまりこのスポンジ状の構造で土埃を捉え水分を保持しながら活着して風に飛ばされないようにしているのです、こういった知恵を獲得したホソウリゴケだからこそ人里で生息できるのだと思うのです。
コロニーを形成して種の保存を行うホソウリゴケ
さてこのホソウリゴケの利用価値ですが加湿に弱いのでテラリウムなどには不向きです、逆に盆栽や盆景では乾燥に強く表面の土が乾くのを防いでくれるので昔から多用されています、したがってホソウリゴケの購入はテラリウムショップではなく園芸店や盆栽ショップになります、ネット販売でも安く大量に購入できます。
過酷な環境で生息するホソウリゴケは各種の書籍に室内で繁殖させるのはほぼ不可能だと書かれていますが私は標本にしているし他のコケと異なる管理をして室内繁殖にも成功しています、上手に完全成長させたホソウリゴケはまるで別物のように薄緑色に輝く美しい姿を現します、見た目も触感もビロードのようでとても自然界に生息している植物とは思えません。
室内繁殖でも完全成長を遂げてくれたホソウリゴケ
一つだけ注意点としてどこにでも生えているコケにお金を払いたくないと自分で採取することは止めた方がいいです、これはどのような植物にも適応される事項です、何故なら家に持ち帰り水を与えた瞬間に虫が湧いてきたり寄せ植えした他の植物にカビが生えたりするからです。
コケはあくまでも盆栽に使うとしても清潔な環境で育てられ出荷前に洗浄消毒された安全なものを使いましょう、支払ったお金はコケ代ではないのです、安全にコケと愉しむための保険料なのです。
ホソウリゴケ(拡大)
葉の大きさと軸の細さはおそらくコケ類最小
2024年11月19日 08:00
都内のビル玄関前にオシャレにレイズドベッドされた小さなコケ庭を見つけました、小さな石をいくつか並べて隙間なくコケでグランドカバーされています、環境から考え最初ホソウリゴケかと思ったのですが光の反射加減が異なるので近くに寄ってみたら何とホソバオキナゴケでした。
ホソバオキナゴケはアラハシラガゴケと共にヤマゴケの通称を持つコケで山形の小さなコロニーを形成して広がっていきます、自然界ではこのように広い範囲を覆いつくすような姿をほぼ見ることがありません、したがって人工的に作られたコケ庭だということが解ります。
またホソバシラガゴケはコケの中では乾燥に耐性があるほうですが、とはいえ雨が少なく暑い都内の夏は相当厳しい環境です、その意味では北側に設けられたこのレイズベッドなコケ庭は理想的なシェードガーデニングの見本のような作りです、当然こういったテクニックを駆使しているのでガーデニングのプロの手によるものだということがすぐ解ります。
あと落ちている枯葉を見て解ったのですが、作りたての頃はアクセントに蔓性のシダ類であるヒカゲノカズラを一緒に植えていたのだと思います、創作当初はきっと綺麗な緑の絨毯のようなコケ庭だったのでしょう、雨に濡れたホソバオキナゴケは毛並みのよい動物の皮膚のようで大変綺麗です。
ホソバオキナゴケと小石を使った小さなコケ庭
ホソバオキナゴケ(拡大)
遠目ではホソウリゴケのようでも近くで見ればまるで異なる容姿
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