購入した物件の庭にサルスベリの大株が植わっています、サルスベリは漢字では百日紅と表現されるように夏の最も暑い時期に真っ赤な花を咲かせることで知られる樹木でサルスベリという名称は樹肌の外皮が無くツルツルしているところから名づけられています。
和風の庭にはコブ作りで仕立てられ洋風の庭では自然形で仕立てられて和洋どちらにも使える大変重宝する樹木で大変人気もあります、ただし手入れを怠ると枝が暴れて大変なことになりますので年に一回は剪定して樹形を保つ必要があります。
枝を全て落としたのに夏には2メートル以上の長さの枝でびっしりになります
花は新しい枝にしか咲きませんので毎年古い枝を全てカットする剪定を行います
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樹肌はご覧のように外皮が無くツルツルしています
それにしてもどこからでも枝を伸ばす生命力の強さはすごいです
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最も暑くなる時期に真っ赤な花を咲かせます
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自分好みのガーデン作りのためすべての樹木とグランドカバー類の草本類を伐採&伐根しました、このサルスベリも冬に入る前に根元から伐採してしまいました、ただし春に新芽が吹いてくる可能性がありますので吹いてきたら低木仕様で大きく木立させずに1メートル以内に収めて上手く活用したいと思います。
木立させずに低灌木として剪定を繰り返せば洋風ガーデンでも違和感なく夏の花の少ない季節に重宝すると思います、要は樹木をどう扱うかで利用価値も出るようになります、一つ欠点は種を付けますので思わぬところに一人生えしてしまうので見つけ次第に伐根しないと大変なことになります。
冬の樹木と言ったら私が大好きなモチノキ科低木のセイヨウヒイラギです、冬には赤い実をつけクリスマスリースの主役のような樹木です、ちなみに日本名のヒイラギはモクセイ科の低木で葉の形状が似ていることからセイヨウヒイラギと命名されていますがまったく別の植物です。
最近では庭木としてよりもビルなどのガーデニング・公園・街路樹の脇役としても見かけるようになりました、大きくなっても3メートルほどの低木で一年中緑色の葉を付ける常緑樹であることも気に入られているようでニーズが高まっているのか以前に比べて価格も落ち着いています。
また最近ではヒメセイヨウヒイラギという大きくなっても1メートルほどで葉寸が小さな常緑園芸種も多く見られるようになりました、手がかからないので園芸店で見つけたら是非とも買っておきたいお薦めの観葉樹木です。
最近ガーデニングによく見られるヒメセイヨウヒイラギ
セイヨウヒイラギよりも葉は小さいが硬く鋭く尖っている
金属質に輝く葉が何とも言えない魅力があります
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ヒメセイヨウヒイラギの育成の注意点は葉が硬くて尖っていますので植え替えなどで注意しないと切り傷を負います、けっこう鋭いのでスパっと皮膚が切れてしまいます、真冬でも常緑であり赤い実を付けることに加えて鋭い光る葉は神の樹木としてヨーロッパ各国で扱われています。
冬季に雪が積もると、緑の葉・赤い実・白い雪とまるでイタリアン料理などに見られる所謂イタリアントリカラーです。
育成方法はいたって簡単で鉢植えでも大き目の鉢であればベランダに放置してもよく育ちます、冬に明るめの室内に取り込んで楽しみ春先にベランダに出すという感じで問題ないと思います。
水やりも土がしっかり乾いたらあげる程度でよく春先に1年先まで効果のある緩効性肥料を適量土の上に乗せておく程度でよいでしょう、地植えであれば枝が張ってきたら剪定する程度で本当に放置して大丈夫です、その方が元気に長く楽しめるでしょう。
盆栽の世界では盆栽キングと言われる超人気樹木の一つである糸魚川真柏(イトイガワシンパク)ですが、天然物は乱獲によって枯渇し現在盆栽で出回っているのは全て盆栽農家や盆栽家によって自家繁殖されたものです。
糸魚川真柏は新潟県と長野県にまたがる糸魚川周辺の高山だけに自生しているヒノキ科の深山柏槙(ミヤマジャクシン)という針葉樹です、他の地域の深山柏槙が葉寸が長く柔らかいのに対して糸魚川真柏は葉寸が短く硬いです、また幹もゴツンとした荒々しい幹をしています。
糸魚川真柏は険しい岩山の中で寒さと乾燥に耐え忍びながら種を保存してきただけあって自然の姿は折れ曲がったり樹皮が裂けて剥がれ落ちてボロボロです、そういうところが盆栽家にとってワビサビを感じ好まれるのでしょう。
盆栽でも小枝の皮を剥いたり幹の皮を剝いたりして厳しい自然で生きる糸魚川真柏を模した樹形を意図的に創作されています、このあたりが他の樹木と異なり特異な樹形が創作され高値で取引されています。
100年以上の大品(樹高40Cm以上)盆栽の中で1メートルを超える受賞作なら5,000万円以上するものも珍しくありません、これらは世界中の盆栽バイヤーが買い付けに日本にやってきます、日本で長い間守られてきて何度も賞を受賞した糸魚川真柏の盆栽秀作がどんどん海外に流れていっています。
糸魚川真柏に基本樹形である「模様木」仕立ての曲がりを付けた6年もの半完成品素材
針金を外し育成鉢に自家製ブレンド用土で植え替えしたばかり
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糸魚川真柏の中品(樹高20Cm~40Cm)の10年以上の各樹形ものの半完成素材
小枝を出させ幹を太くするために主枝や脇枝をあえて伸ばし放題に育成します
既に主幹元の太さは3Cmを超えてきました
来春には剪定して樹形を整え化粧鉢に植え替えしたいと思います
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今や女性にも大人気の糸魚川真柏の極小ミニ盆栽(左)とミニ盆栽(右)
※ミニ盆栽(樹高10cm以下)
左の極小ミニ盆栽は樹高はプロの盆栽士の手によってなんと5Cmにまで畳み込んでいるにも関わらずしっかりジン(皮を剥いた小枝)やシャリ(皮を剥いた幹)まで付けている逸品、小さな鉢に入れられ元気を無くしていたので養生のために大きめの鉢に植え替えました
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そんな盆栽キングというべき大人気樹木の糸魚川真柏ですが私の故郷近くの樹木とあって親近感もあり盆栽の完成品から素材まで現在100鉢を超えるほど所有しています、それでも毎月のように気に入った樹形を探しては買っていますので増える一方です。
今や盆栽は日本発祥でありながら海外の盆栽人口の方がはるかに多いです、その人たちにとっても憧れの樹木だけあってミニ盆栽でも1万円を超えるものも珍しくありません、むしろ最近大人気のミニ盆栽のほうが一般的な大きさの中品盆栽よりも高く値段が付けられる例もあります、プロの盆栽士の作品であれば基本樹形が整っているだけで他の樹木の完成品よりも高値で取引されています。
尚、2020年に糸魚川真柏活用プロジェクトが新潟で発祥しており糸魚川真柏を守り自然に自生する雄大な姿が見られるようにするために活動しています、現在自然自生地は糸魚川真柏ジオパークとして採取禁止区域となっています。
注意点として普通の深山柏槙を糸魚川真柏として売っている例が多々見られます、私も糸魚川真柏として買ったものの中に後に成長して普及樹木の深山柏槙だったと解ったものが半数を占めています、苗が小さい時には見分けがつかないのでネット通販ではなく確かなところで実際に確認してから買いましょう。
この得体の知れない植物は見た目も触った感触も多くの人はビニールかプラスチックで作った下手な造花だと思うでしょう、実はこの植物はマツバランというシダ植物です、ランと名前が付いているのでランの仲間と勘違いされますがれっきとしたシダです。
このマツバランは「根も葉もない嘘」という話のネタとなっている植物で本当に根も葉もなくすべてが茎だけでできています、地下茎でランの仲間のように木や岩に着生して胞子と地下茎からの分枝で増えていきます、ランの仲間ではないので花は咲かずに茎の先に胞子嚢を付けます。
地下茎で繁殖するのを観察中のマツバラン
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このマツバランを上手く育てるのは放置です、他のシダ類のように水をたっぷりあげると夏場などは蒸れてあっという間に腐ってしまいます、ミズゴケやココピートなどの天然植物繊維で包みこむように植えランのように乾燥気味に育てるといつまでも元気で鑑賞できます、できれば屋外で水もあげずに放置していたほうが雨や空気中の蒸気で水分を補給しながら繁殖します。
室内で育てるなら半日陰の窓際で通気のよいところに置き時々ミストスプレーで湿気を与える程度がいいです、根が無いので肥料は不要で与えても意味がありませんし肥料焼けで枯れることもあります、木陰や木の上でひっそり繁殖するマツバラン、人間があれこれと手を加えたらきっと居心地が悪く枯れてしまうでしょう。
尚、現在では多くの自治体で絶滅危惧種となっており環境省では準絶滅危惧種の扱いになっています、したがって流通しているのは全て自家繁殖されたもののはずです(個人でネット販売している場合は不明)、盆栽や観葉植物の山野草類には既に自然界には存在しない種が実に多いのです。
道楽を通してこういった絶滅や絶滅危惧種を保護する活動をしている人もいます、昨今のこうした活動家の問題は後継者がいないことです、引き継がれることなく絶滅する種が今後急増していくのかと思うと心が痛みます、微力ながらも私も絶滅危惧種の保護に道楽を通して可能な限り参加していきたいと思います。
コケ類は実に多様な容姿で葉寸も数ミリから10センチほどと幅が広く日本だけで生息が確認されているだけで1,700種を超えます、しかし多くの日本人がイメージするコケは間違いなくホソウリゴケかギンゴケだと思います、ホソウリゴケとギンゴケは日本全土だけではなく海外のどこに行っても見かけるハリガネゴケ科のコケで地球上に最も広く生息しているコケだと思います。
中でもホソウリゴケは道路の脇やビルの隙間と本当にどこにでも生えています、しかし他のコケの多くが生息地としている山林や川の淵などには不思議と生えていません、つまりハリガネゴケ科のコケは山林ではなく過酷な環境の人里に生息することで種を保存するように進化したコケだと言えます。
ハリガネゴケ科のコケは乾燥や直射日光にめっぽう強く、ホソウリゴケは茶色か黒色になり仮死状態で何年間も生きられます、そして雨が降って水分を取り込むとあっという間に緑色に変色し脇芽を出して成長していきます、逆に他のコケ類には最適な環境の湿気のある半日陰では蒸されたように葉が黄色になり腐ってしまいます。
どこにでも生えているホソウリゴケ
多くの人のコケのイメージがこういう感じだと思います
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ホソウリゴケなどのハリガネゴケ科のコケは一つ一つの葉は極めて細く短いのですがドーム状にコロニーを形成しながら生息域を広げていきます、そのコロニーの中心部は枯れた葉でできておりスポンジ状の構造になっています。
つまりこのスポンジ状の構造で土埃を捉え水分を保持しながら活着して風に飛ばされないようにしているのです、こういった知恵を獲得したホソウリゴケだからこそ人里で生息できるのだと思うのです。
コロニーを形成して種の保存を行うホソウリゴケ
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さてこのホソウリゴケの利用価値ですが加湿に弱いのでテラリウムなどには不向きです、逆に盆栽や盆景では乾燥に強く表面の土が乾くのを防いでくれるので昔から多用されています、したがってホソウリゴケの購入はテラリウムショップではなく園芸店や盆栽ショップになります、ネット販売でも安く大量に購入できます。
過酷な環境で生息するホソウリゴケは各種の書籍に室内で繁殖させるのはほぼ不可能だと書かれていますが私は標本にしているし他のコケと異なる管理をして室内繁殖にも成功しています、上手に完全成長させたホソウリゴケはまるで別物のように薄緑色に輝く美しい姿を現します、見た目も触感もビロードのようでとても自然界に生息している植物とは思えません。
室内繁殖でも完全成長を遂げてくれたホソウリゴケ
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一つだけ注意点としてどこにでも生えているコケにお金を払いたくないと自分で採取することは止めた方がいいです、これはどのような植物にも適応される事項です、何故なら家に持ち帰り水を与えた瞬間に虫が湧いてきたり寄せ植えした他の植物にカビが生えたりするからです。
コケはあくまでも盆栽に使うとしても清潔な環境で育てられ出荷前に洗浄消毒された安全なものを使いましょう、支払ったお金はコケ代ではないのです、安全にコケと愉しむための保険料なのです。
ホソウリゴケ(拡大)
葉の大きさと軸の細さはおそらくコケ類最小
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