2024年10月 4日 07:00
技術系企業の経営者によくある勘違い、それは「特許がとれたら楽に儲けられる」という幻想です、実は事実として特許を取得しても一銭のお金にもならないのです、弁理士の質にもよりますが出願に50万円、審査請求等に20万円、拒絶後の再請求1回で20万円、特許取得後の維持費にまた30万円、1つの特許出願で100万円は軽く超えてしまいます。
それでも企業は特許出願の重要性を見いだせれば特許出願を繰り返します、ただし有益な特許とはそれを利用してもらうことによって初めてお金に変わる金種であることを忘れてはいけません。
戦後間もなくの特許で今でいう「使い捨てカイロ」がありました、この特許を取得したアイデアマンの社長さんはすぐサンプルを作り各種企業へ特許の使用権販売を打診しました、ほとんどの企業から「採用したい」との返事を得ていながら採用した企業は一社も有りませんでした、その理由は巨額の使用料を要求したのと通常実施権のみで独占的事業権の付与を頑なに拒んだからです、。
商品化し一般消費者へ販売するためには製造だけではなくパッキングや流通、更には間接的なオペレーションも含めて多額の資金が必要となります、そのリスクに見合う独占的な権利を得なければ事業として考えた場合に何れ競合他社がひしめき合い先駆者利得が取れずに採算が合わなくなる可能性があるのです、したがって特許権を取得する側としては当然独占権を主張するのです。
結局その20年後、当時採用を検討した企業から一斉に独自開発による「使い捨てカイロ」が売り出されました、特許の有効期限は取得から最長で20年、特許が切れるのを待ちわびたかのように各社一斉の発売なのでした、そして特許を取ったその社長さんは一銭も利益が無かったばかりかサンプルや特許権を売るための多くの時間と費用を無駄にしてしまったのです。
技術特許や製法特許は現在では戦略的にあえて出願しないという手もあります、何故なら例え特許化しても20年後には自由にその技術や製法が使われてしまうからなのです、実はビジネスとは特許など無くてもいち早く資金投入しで商品化した者勝ちなのです、それが現代のビジネスにおけるスピード感というものなのです、そして「特許を取得しただけではお金にはならない」ということを理解すべきなのです。
そもそも特許とは儲ける目的の剣ではなく自社の技術やサービスを一定期間他者の参入を阻止し事業推進を守る目的の盾なのです、特許戦略を見誤ると最悪の結果になることを覚えていてほしいと思います、私も100を越える特許を出願していますがすべてが一定期間自社の技術やサービスを保護する目的です、でもたまたま幾つかの出願が特許登録され大きな収益を生むことも確かにあったことは事実です。