2017年10月25日、ブロックチェーン産業に記念すべき出来事が起こりました。
それは、金融庁から今後の金融行政の在り方を示す「金融レポート」に、初めてフィンテックの動向についての活動原則が示されたのです。
それまでは事例や相談窓口の設置などに留まり、どちらかと言うと様子見という受身の姿勢であったのですが、今後は積極的にフィンテック社会に関するブロックチェーンの取り組みが示されることになります。
そして、本格的なブロックチェーン技術が社会貢献をもって活躍する時代がやってきます、私はこの瞬間を本当に心待ちにしていました。
さて、先の「金融レポート」では、国内外の有識者と意見交換を重ねて、意義や形式的な社会変化を論じるのではなく、根底にある潮流について洞察を深めた上で、ある程度リスクを取って大胆な方針決定を行うことが明確に示しています。
金融庁から打ち出されたフィンテックについての4つの活動原則とは、以下に示すような内容となっています。
1.「経済の持続的な成長と安定的な資産形成を通じた国民の厚生の増大」、という金融行政の究極的な目標に最も良く寄与できるかを基準に判断を行う。
2.顧客とともに新たな価値を創造し、顧客の信頼を得ることのできる担い手が成長できるよう、必要な環境整備や障害除去をフォワードルッキングに行っていく。
3.利用者保護上で生ずる新たな課題等に対処する際に、手遅れになって被害を拡大させることがあってはならない。
他方、先走って過剰規制になることも避ける必要があり、過不足のない弊害防止策を適時にとることを目指す。
4.既存金融機関のメカニズムのレガシーアセット化については、当局は金融機関に対しフォワードルッキングな経営を促すことによって対応すべきであり、対応できない金融機関が発生しないようにイノベーションを制限するといった対応は行わない。
解りやすく端的に言うと、1では「フィンテックを積極的にサポートする立場も、解らないからと言って先送りする事もしない」ということです、つまり真摯にフィンテックと向き合うということです。
2では、金融庁として金融業界の利益よりも、顧客の利益を優先していくという方針を示しています。
「顧客とともに新たな価値を創造し、顧客の信頼を得ることのできる担い手が成長できるよう、必要な環境整備を行っていく」ということです。
3では利用者の保護の観点で必要な処置を講じていく、4ではフィンテックという新たな 潮流を認め金融業界が足かせにならないように指導していく、というフィンテックの潮流に対して金融機関が対処すべき方策を執っていくことを示しています。
この積極的な金融庁の姿勢には大歓迎ですが、アメリカや中国が先行し始めている新たな金融システムであるフィンテックという潮流に対して、日本は出遅れた感で焦りも感じられます。
記憶に新しい大手4大銀行の大幅な人員削減策、この裏にはフィンテックを積極的に推進していかなければ銀行経営が成り立たなくなることは金融庁も解っていることでしょう。
特に海外送金などの手数料収益は、仮想通貨や新たなフィンテックシステムの誕生によって大幅に減少しています。
また地方銀行の経営悪化など、今後フィンテックの台頭により金融機関の在り方が問われてきます。
まさに今後はブロックチェーンの申し子である仮想通貨に代表される新エコシステムの時代になることは避けられないでしょう。
そして、この潮流に乗れない金融機関は淘汰されていく、新しい潮流はこれまでの仕組みをいとも簡単に壊滅させていきます。
「通信自由化」、「郵政自由化」、「電力自由化」、何時の時代もインフラの大変化には勝ち組と負け組とに二極分化されます。
このフィンテックの台頭は、「金融自由化」という流れに入っているのかもしれません。
そして、これは誰にも止めることができない大きな時代の流れなのです。
その後、仮想通貨は「暗号資産」という位置付けが決定し、仮想通貨取引所の規制が厳しく示され安全な金融商品に生まれ変わりました。
また、同時にブロックチェーン技術も大手企業を中心に怪しい技術ではなく積極的に応用して行くべき技術だというムードになり、ITベンチャーと共に共同研究を行うようになりました。
そして今、ブロックチェーンはフィンテックを離れ、独自の産業用途に応用される分散型暗号技術へと移行しています。
技術の進化は早いです、5年もすれば価値判断が180度変わってきます。
新たな技術の台頭は、固定概念を捨て正確に捉えなくては世の潮流に乗ることはできません、何時の時代も成功する人とそうでない人はこうして振り分けられていくのです。