オーディオ界にアンプ798戦争が起こった85年、奇しくもそれに合わせたかのように更なる激震が走ります。
それは、本格的ホームシアター時代の幕開けとも言うべき事件で、1983年に発表されたドルビーサラウンド方式が実用化されたことです。
そうでなくても798戦争で躍起になっていたオーディオメーカー各社は、更なる新分野製品の開発特命でパニック状態に陥ります。
いち早くドルビープロロジックサラウンドを搭載した本格的AVアンプを発表したのはデノンでした、私も待ちかねたかのように初号機AVC-500(1985年発売、6万円)を手に入れます。
遅れること4年、アンプの巨匠サンスイも突如ホームシアター部門に参戦するかのようにAVアンプ初号機AU-V7000(1989年発売、10万円)を投入したのです。
サンスイ AU-V7000
これにはサンスイファンの私としてはとうてい看過することはできません、間髪入れずに購入しデノンAVC-500を下取りに出すのです。
と言うことで、私のオームシアター歴で2代目となるAVアンプが、本機サンスイAU-V7000です。
しかし、何とその1年後、満を持して誕生したデノンのAVC-1000(1990年発売、9万円)のスタイルと機能に惚れて即購入し、AVC-1000が3代目となります。
このデノンAVC-1000は極めて使いやすく、サンスイAU-V7000は発売時期が悪かったのか、それともデノンのサンスイ潰しの戦略なのか、いずれにしても1年で座を追われることになるのです。
798戦争の覇者サンスイの牙城を崩したのはデノンのPMA-2000というミドルクラスのアンプでした、これはその前哨戦だったのでしょうか?
その後、セパレートアンプやプリメインでは天下を収めたサンスイですが、AVアンプの新機種AU-V7500を投入するも798戦争において辛酸を舐めたデノン・オンキョー・ソニー・ヤマハのシェアを奪う事はできずにホームシアター部門から撤退します。
私もAVアンプ部門では、バランスの取れた音質と使いやすさを優先し後にデノンに定着していきます。
ただ、サンスイのAVアンプの初号機AU-V7000は何故か下取りなどで手放すことに強烈な躊躇いが走り、そのまま手元に置くことにしたのです。
そして、時々このAU-V7000でメンテナンスを兼ねてジャズライブを聴きたくなることがあります。
AVアンプは、音質もさることながら各種設定のしやすさとか、サラウンドの効果などが重要ポイントなのですが、サンスイのAVアンプは流石に音質に拘ります。
5.1Chのサラウンドではなく、2Chでのステレオ再生においては音質的にはしっかりとサンスイ伝統の愉音を維持しています。
最近の価格だけは高い軟(やわ)なミドルクラスのプリメインアンプよりも、AVアンプながらも大型ブックシェルフから小型ブックシェルフをメリハリのある豪快なサウンドで鳴らします。
ステレオモードにすればフロントのアンプ以外はシャットダウンするので、消費電力を気にすることもなくステレオプリメインアンプとしても機能するのがこういったディスクリート型のAVアンプの良さでもあります。
また、アナログ/デジタル独立電源、5つのモノラルアンプ構成など音質に拘っただけあり、音質はサンスイ特有の骨太さがあります。
低音域はしっかりと締り、中高音域のシャープさは流石サンスイです。
とはいえ、流石にAVアンプの音質はサンスイサウンドと謳われる当時の同社ミドルクラスのα-Xバランス増幅回路のプリメインアンプには適いません。
サンスイの記念すべきAVアンプ初号機AU-V7000、もしサンスイ博物館が存在するなら間違いなく殿堂入りするでしょう。
ということで、レアな骨董AVアンプとしてこのまま保持することにしています。
それにしても、AVアンプでありながら当時のサンスイやソニーのミドルクラスのアンプに採用されたウッドの側板付きの精悍なブラックフェースはサンスイのAVアンプにかける闘志を感じます。
このデザイン的なサンスイスタイルも音と共に好きなのです、サンスイらしさが溢れる何とも言えない面持ちです。
また、伝統の巨大なトランスとコンデンサ、重量もサンスイ伝統の重量級、横幅50Cm近い巨大なアンプ、良いですね!
私は、どんだけサンスイが好きなのでしょう?
ただし、ツマミやスイッチなどの作りは価格を抑える為に仕方なかったのか、若干触感が軽いというか安っぽさが気になるところではあります。
LED付きのボリュームにするなら、伝統の高級感あふれるアルミダイキャストのつまみを採用してほしかった。