オンキョーが小型ブックシェルフで強固な牙城を築きだした90年代に、ダイヤトーンがスピーカーキングの威厳を示すかのように渾身の小型ブックシェルフスピーカーを投入します。
それが、DS-200Zシリーズです。
ダイヤトーンのスピーカーは、昔から精悍な表情で何とも機械的なデザイン性が男性受けするようです。
特にこのDS-200Zシリーズは、極め付きの精悍な表情で個人的にはデザインも音も大好きです。
そんなDS-200Zシリーズ、予備として大好きな音色を確保する目的でDS-200ZA(1994年発売、ペアで6万円)とDS-200ZX(1997年発売、ペアで6.4万円)と合わせて2セット保有しています。
DS-200ZAはオーク調の突板仕上げでウーハーのコーンもブラウン色、DS-200ZXは全体的に明るい色調となり突板仕上げはホワイトオーク調でウーハーのコーンはゴールド色となっています。
好みの問題ですが、私的にはDS-200ZAの方が色調的にしっくりきます。
ダイヤトーン DS-200ZA
ダイヤトーン DS-200ZX
DS-200ZA(下)とDS-200ZX(上)
大きさは同じで色調が違う
ウーハーユニット周りのゴムカバーの形状も若干異なる
DS-200Zシリーズは2ウェイバスレフの小型ブックシェルフで、ウーハーは16Cmでエンクロージャーの大きさといいオンキョーの大ヒット作D-202Aを視野に入れているのが良く解ります。
ちなみに、オンキョーはDS-200ZXの翌年の1998年にD-202Aのユニットを大幅に改良して別物と言えるD-202AXを投入し、DS-200ZXに奪われたシェアの奪回に出ます。
この雌雄を分けて戦った小型ブックシェルフ戦争、小規模ながら後の日本の小型ブックシェルフ技術向上には大きな意義が有ったと思います。
DS-200Zシリーズのウーハーコーンには軽量化アラミドクロスコーンを採用し、それまでの樹脂で固める方式から2層方式とすることで軽量化し強度を高めています。
ツイーターは、2.5Cmチタン合金のドーム型を採用し、両ユニットを見る限りでは戦略的価格で売れれば売れるほど赤字ではなかったかと思えるほどの高級ユニットを投入しています。
このユニットの良さは、見事にそのまま音質に現れています。
音出しした瞬間にダイヤトーンと解る実に明るい音色で、中高音域がこれでもかとガンガン張り出してきます。
中高音域の切れ味の良さは小型ブックシェルフではトップクラスで、サックスやトランペットが耳元で鳴り響きます、それでいてまったく耳触りな音ではないのです。
そしてボーカルがまた凄い、小型ブックシェルフの中で最もボーカルを綺麗に響かせるスピーカーだと思います。
これがダイヤトーンの音色であり、最大の魅力なのです。
当然小型ブックシェルフの部類ですから中高音域の元気さの割に低音域が物足りない感じがしますが、バランスが良いのか普通の音量でも「これも有りかな?」と思わせてしまうのは流石です。
硬質に響く中高音域はまさにジャズファンにとっては至福の音です、この音色でこの価格とは超が付くほどのハイコストパフォーマンス機だと思います。
良い子の音色で鳴らすオンキョーやマランツのアンプを繋いでも、元気で明るい音に変えてしまいます。
オンキョーの小型ブックシェルフの音色とは対照的な音色で、オンキョーがジャンルを選ばないならダイヤトーンはまさにジャズやロック向きの個性的な響きを持つ音色です。
アンプを選ばない小型ブックシェルフ、この時代にあって40Khzまで高音域を伸ばしているので今で言う「ハイレゾ対応」と言っても問題ないでしょう、時代を先取りしたスペックは申し分ありません。
個人的に小型ブックシェルフではNo.1音色、この2年後にダイヤトーンが消滅してしまったのは極めて残念でなりません。
尚、DS-200Zシリーズの中古価格はダイヤトーン消滅後に一気に上昇し、20年以上経った今でも一向に落ちず美品であれば定価の半額である3万円以上で取引されています。
90年代の小型ブックシェルフの名機、ハイレゾ全盛時代の今でも充分に実力を発揮できる名小型スピーカーです。