
事業計画書(8)
事業内容 販売計画
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
販売計画は後に続く損益計画(PL)の売上を「説明できる数字」にするためのパートです。 PLに金額だけが書かれていてもそれがどの事業セグメントの「誰に、何を、いくらで、どれだけ売る」前提なのかが見えなければ数字は願望として扱われます。 したがって販売計画ではセグメントごとに売上の算出式を示し、その式を構成する前提条件と根拠を添えることが必要です。
ただし現実には、特に初期段階の計画ほど「数量、単価、成約率、継続率」などの多くが想定になります。 重要なのは想定を避けることではなく、確定している材料と想定部分を切り分け、想定には妥当性の理由を与えることです。 既存契約や発注見込み、過去実績、具体的な引合い、顧客ヒアリングなど、根拠として提示できる材料は明確に書きます。 一方で材料が不足する部分は、類似事例、テスト販売やPoCの結果、営業の状況などから仮説を記載し、なぜその数値になるのかを購買プロセスや導入障壁、意思決定構造などとと結び付けて説明できれば良いです。 読み手が知りたいのは当たるか外れるか以前に、数字がどう組み立てられ、どこが想定なのかということです。
そのためには売上を分解して示すのが有効です。 対象顧客数、成約率、平均単価、継続率といった変数に分け、売上がそれらの掛け算として表せる形にしておけば読み手は前提を見て検算できますし「どの変数が過大なのか」「どこを改善すべきか」も検討できます。 想定が多い場合でも式と前提が見えるだけで計画は十分検討可能な形になります。
また販売計画では商流の想定を必ず置きます。直販か代理店かといった販売体制に留まらず、誰が支払者で誰が契約主体で誰が請求し入金はいつ回収され粗利はどこに残るのかまで明確にすると説得力が増します。 すべてを確定できないとしても、現時点での想定を書き、その想定を採る理由と想定が変わった場合に影響を受ける項目を示すと、読み手は前提の妥当性を判断できます。
販売計画は長文で語る場所ではありません。 1~2枚程度に、セグメント別の算出式、前提条件、根拠、商流の想定を簡潔に並べ、後段の財務計画へ橋をかけることが目的です。 完璧な未来予測ではなく現時点の材料から無理なく組み立てられた計算と仮説の置き方のルールが読み手の信頼を作ります。 そうして初めて事業計画書の中で最も重要な売上計画が信頼に足る形になり、以降の財務計画も意味を持ちます。

決算書(4)
貸借対照表 自己資本比率
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表でいう「自己資本」は一般に「純資産の部」に計上される金額です(※中小企業の実務では純資産と自己資本はほぼ同じ意味で使われることが多いため、その前提で説明いたします)。 自己資本は現金残高そのものではなく会社が持っている資産全体から返さなければならない負債を差し引いた差額です。 出資によって自己資本が増えたとしても、現金は人件費や開発費、設備、売掛金などに変わっていくのが普通なので「資本金が大きい=手元資金が潤沢」という意味にはなりません。
自己資本の内訳は出資によって入ったお金が元になる資本金と資本準備金、そして事業での利益や損失の累積である利益剰余金です。 出資が入ったときその全額を資本金に入れる必要はなく、会社法上一定の範囲で資本金に組み入れない額を資本準備金として計上でき自己資本を構成します。 資本準備金に入れるは中小企業向けの補助金・助成金や税制優遇を意識する場面では有効な手段になることがあります。
自己資本比率はこの自己資本が総資産の中でどれだけの割合を占めるかを見る指標で、自己資本比率 ≒(純資産合計 ÷ 資産合計)× 100 で算出します。 自己資本比率が高いからといって「いざというときの現金が多い」とは限らないです。 中小企業では利益剰余金がマイナス(累損)になっていることも珍しくなく、赤字が続けばこのマイナスが膨らみ純資産(自己資本)は減少していきます。 純資産が少ない状態だと、赤字や回収が遅れたときなど債務超過が視野に入りやすく、金融機関や取引先が慎重になり追加融資や取引条件の調整が難しくなることがあるようです。 逆に利益剰余金がマイナスでも資本金や資本準備金が一定あり純資産がプラスを保てていれば、「まだ余力がある」と見なされやすいようです。 自己資本比率はそうした信用の度合いをざっくり掴む目安として捉えることができます。

事業計画書(7)
事業内容 事例・ユースケース
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書における事例・ユースケースは、事業が現場で成立するか同様の組織へ展開できるかを示すための項目です。 読み手が知りたいのは「誰が、どの状況で何に困り、導入後に何がどう変わるのか」です。 したがって前提条件・課題・解決の流れを具体的に整理して記載します。
まず想定する業界と企業像を明確にします。 業界、企業規模、導入主体(誰が使うのか)を具体化し適用範囲を示します。 実名は不要ですが「中堅製造業で複数拠点を運営する企業」など状況を想像できる表現にします。
次に現場で起きている課題を書きます。 例えば検査業務を行う現場で、手作業の記録が残り情報が散在しているため集計や報告のたびに確認・転記・整合確認が発生し手戻りが起きる状態が発生している等です。 増えている作業や詰まっている工程を具体的に示します。
そのうえで解決後の運用の変化を示します。 「誰が、いつ、何を行い、何が不要になるか」を書きます。 記録の扱いが統一され、入力・確認・集計が標準化されることで提出物作成や確認手順が簡略化されるといった変化を具体化します。 利用者の負担が増えないことも併記すると導入可能性が伝わります。
最後に横展開と波及効果を述べます。同様の課題が「複数拠点・複数部署で記録と報告が発生する組織」に広く存在すること、導入が広がれば手順や提出物の標準化が進み調整コストが下がることを簡潔に整理します。
事例・ユースケースは、「対象」「課題」「導入後の変化」「展開・波及」を運用をイメージできる形で書くことが重要です。

決算書(3)
貸借対照表 貸付金と借入金
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表を読むとき、貸付金と借入金は資金の動きが表に出やすいので押さえておくと全体が読みやすくなります。 貸付金は資産の部に出てきます。 会社が誰かにお金を貸していて将来回収できる前提の金額です。 ここで大切なのは、貸付金は「資産」ではあるものの現預金のようにそのまま使えるお金ではないという点です。 貸付金が大きい場合、資産の金額としては増えて見えますが手元の現金とは性質が違う項目が増えているという読み方になります。
一方、借入金は負債の部に出てきます。 会社が金融機関などから借りていて将来返済する前提の金額です。 借入金は短期借入金と長期借入金に分かれていることが多く、短期は原則1年以内に返済期限が来るもの、長期は1年以上先まで返済が続くもの、という整理です。 ここは金額の大小だけでなく短期と長期のどちらが厚いかを見ると、「返済期限が近い負債が多いのか、時間をかけて返す負債が中心なのか」という見え方になります。
この貸付金と借入金は、前回の「流動資産」と「流動負債」の読み方ともつながります。 短期借入金は流動負債に入るので短期借入金が多いほど「1年以内に出ていくお金」が増える側に寄ります。 逆に貸付金が流動資産に含まれている場合でも、内容によってはすぐに現金化できないことがあります。 その場合、流動資産の金額は大きく見えても「1年以内に入ってくるお金」としては見かけより弱い可能性があるという読み方になります。
貸借対照表は、右側は会社がどのような形で資金を持っているか、左側はその資金が期末時点で何に姿を変えているかを示しています。 ここで貸付金と借入金を押さえると数字の背景にある資金の流れが見えやすくなります。借入金を見ることで、どれくらいの金額を借りておりその中に返済期限が近いものがどの程度含まれているかが分かります。 一方で資産の側では、現預金のようにすぐ使えるものだけでなく貸付金のように現金として戻るまで時間がかかる性格のものがどれくらい含まれているかを確認できます。 こうした視点で眺めると貸借対照表は単なる項目の一覧ではなく、資金繰りの構造を写した表として読み取りやすくなります。

事業計画書(6)
事業内容 優位性
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
今回は「優位性」の書き方です。 優位性とは、同じ課題を解決する選択肢がある中でなぜ自社が選ばれるのかを説明する部分です。 読み手が安心して他社と比較できるよう、主張だけで終わらせず比べる材料と根拠をそろえて示します。 その整理のツールとしてSWOT分析を用います。
SWOT分析は事業を4つの視点で整理する方法です。 自社の内側にある「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」と外部環境にある「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」に分けて書き出します。 SWOT分析で状況を整理し選ばれる理由を筋道立てて作れるようになります。
まず強みは「お客様にとって分かりやすい良さ」を中心に書きます。 たとえば問い合わせや見積依頼が増えている、試し導入から本導入に進む割合が高い、紹介が多い、といった事実は需要の強さを示す有力な根拠になります。 また価格と原価の関係が説明できて採算が合う、継続的な収入につながる仕組みがあるなど、「売れたら無理なく利益が残る形」が見えていることも大きな強みです。 さらに、技術や知財、ノウハウ、取引先との関係、積み上がるデータなど、同じ提供を再現するのに時間やコストがかかる要素があれば、「真似されにくさ」として大きな強みになります。
次に弱みは隠すよりも信頼を高める材料として扱います。 実績がまだ少ない、特定の人に頼っている、対応人数が少ない、保証や責任の範囲が曖昧、事務作業が追いつかない、といった点があるなら、そこで止めずに「だからこう改善する」と弱みに対する改善策をセットで示します。弱点を把握しその対策をを示せる会社は読み手に安心感を与えます。
機会は外部環境の追い風です。 ここが自社の強みと噛み合うほど説得力が増します。 たとえば、人手不足で効率化のニーズが高まっている、取引先から品質や管理の要求が厳しくなっている、行政の支援制度がある、特定業界で同じ困りごとが増えている、など「いま顧客側で導入の理由が強くなっている背景」を整理します。
最後に脅威は外部環境の向かい風です。競合が増える、値下げ競争になる、既存ツールで代替される、景気によって投資が止まりやすい、といった現実を挙げたうえで、影響が大きいものから優先的に捉えます。
ここまで整理できれば優位性を作り出すことができます。基本は強み×機会で「追い風が吹いている場所で勝てる理由」を言葉にし、弱み×脅威は短く対策まで示して不安をつぶすことです。最後に文章としては、結論→理由→根拠→対策の順で整えると、読み手が比較しやすい優位性の説明になります。