
中小企業のための補助金・助成金(4)
採択されればOKという訳ではない
補助金は申請にかなり労力を使います。 そして厳しい倍率を勝ち抜き見事採択されたとしてもそこで安心できるわけではありません。 補助金の種類にもよりますが例えば中小企業庁の補助金である「ものづくり補助金」では、採択された後に予算の修正など交付申請というものがあります。 これに3か月くらいかかってしまう企業もあるそうです。 予算の根拠や人件費の算出根拠など色々と提出するものがあります。
また事業を開始してからも各種のチェックがあります、事業期間が長いと中間検査というものが入ります。 中間で事業の進捗報告や支払いに対するエビデンスの確認、人件費に関する業務日報の確認などが入ってきます。 随時補助金の担当者と連絡を取り、確認を取って進めていると非常に楽に検査を完了することが出来ます。
補助金や助成金には決まった処理の仕方が存在します。 少しでもそこからズレた処理になると補助事業の対象外になり、その分の補助金が下りないことがあります。 初めて補助金を採択された企業によく見られます。
最後に完了検査があります。 事業経緯を報告する成果報告書やこれまでの支払いに対するエビデンスなど、すべての資料に対してチェックが入ります。 ここで資料をすべてそろえなければ、補助金が減らされる可能性があります。 補助金や助成金は税金で運営されているものが多いので、少しのミスも許されません。 特に支払いに対するエビデンスには処理の仕方を手引き通りに行わなければなりません。 もちろん数字が少しでも違うと差し戻しになります。
完了検査を無事通過し担当事務局内でのさらなる審査を通過すればようやく補助金が下りることになります。 採択された後も数々の書類整備をしていくことで補助金をもらうことができるのです。

事業計画書(10)
資本政策
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書にはいくつかの使い道がありますが出資を募るための目論見書として使う場合は資本政策は重要な項目になります。 目論見書における資本政策は細かな株式設計や複雑な計算を示すことが目的ではありません。「この事業にお金を出すと、どのような関係になるのか」を相手に誤解なく理解してもらうための説明です。
出資者が知りたいのは事業の主導権がどこにあり意思決定がどのように行われるのかという点です。 加えて出資によって自分がどの程度の影響を持つのか、どこまで関与できる(あるいは関与しない)のかも重要になります。 誰が経営の責任を持ち続けるのか出資者は経営にどこまで関与する想定なのか。その前提を明確に示すことが目論見書の資本政策の役割です。
そのため目論見書では、現在の株主構成と出資後にどういう状態を想定しているかというイメージを示せば十分です。 最初から完成された資本政策を提示する必要はありません。 むしろ現時点での考えを正直に示してどのような前提で事業を進めようとしているのかを共有することが信頼につながります。 資本政策は条件交渉のための武器ではなく相互理解のための説明資料です。

中小企業のための補助金・助成金(3)
補助金には"流れ"がある
補助金や助成金には"流れ"が存在しているものあります。 例えば東京都中小企業振興公社さんの助成金を例にすると創業から製品開発・導入・知財までたくさんの助成金があります。 これらから一つ選んで申請するのもよいのですが、開発の経過毎に申請していく方が採択率が上がっていきます。 例えばこのような順番です。
①製品開発着手支援助成事業
②外国特許出願費用助成事業
③新製品・新技術開発助成事業
④市場開拓助成事業
アイディアの初期から製品を市場に投入するまでを助成金を活用して行うことができます。 特に②③の連携はおすすめです。 一番取得したい助成金はやはり③の開発助成です。 これに採択されるためにも事前段階から助成金を絡めていくというのが一つの手です。 ただデメリットもあり、残念ながらスピードを要する開発には適しません。
このように開発の流れに沿って助成金の流れも存在しています。 補助金や助成金を活用するには初期の段階から検討しておくことをお勧めいたします。

決算書(2)
貸借対照表
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表とは、会社の「資産」「負債」「純資産」の状態をあらわした表です。 「資産」を左側に「負債」と「純資産」を右側に配置しそれぞれの合計額が必ず一致するように作られています。 左右の合計が合わない場合は仕訳や集計のどこかで間違いが起きているということになります。 貸借対照表は英語で Balance Sheet と呼ばれ、略して「BS(ビーエス)」と言われることも多いです。
ここでは、添付の図にあるようなシンプルな貸借対照表の例をイメージしながら説明していきます。 左側に「資産の部」右側に「負債の部」と「純資産の部」が並び一番下で「資産合計」と「負債及び純資産合計」の金額がぴったり一致している、という形になっています。

まず「資産」の部には流動資産と固定資産が入ります。流動資産には、現金や預金、売掛金、出来上がった商品や製品などが含まれます。 いずれも、比較的短い期間、目安として1年以内に現金になると見込まれているものです。 日々の支払いや仕入れなどに直接かかわる部分なので資金繰りの観点からとても重要なエリアです。
一方、固定資産には、土地や建物、機械や車両、机やパソコンなどの備品といった有形固定資産のほか、特許権、営業権、ソフトウェアといった無形固定資産、そして長期貸付金などが含まれます。 こちらはすぐに現金に変えることを前提としているわけではなく、長い期間にわたって事業のために使っていく資産だとイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
次に、右側の「負債」の部には流動負債と固定負債が入ります。 流動負債には、買掛金や短期借入金、未払金など、1年以内に支払期限が到来する負債が含まれます。 固定負債には、返済期限が1年以上の長期借入金や社債などが含まれ、長い期間をかけて返済していく性格の負債になります。
「純資産」の部には、返済する必要のない資金が入ります。 代表的なものとして、資本金、資本剰余金、利益剰余金などがあります。 資本剰余金のうち「資本準備金」は、新株発行などでお金が払い込まれたときに、その全額を資本金にしてしまわず、一部を積み立てておくための項目です。 会社法では、払い込まれた金額のうち一定の範囲(ざっくり言うと、その2分の1を超えない範囲)を資本準備金として計上することができると定められています。 実務的には、資本金が大きくなり過ぎると一部の中小企業向けの税制や補助金の対象から外れてしまうケースがあるため、資本金と資本準備金の配分を工夫して資本金が1億円を超えないようにしている会社も少なくありません。
この貸借対照表をざっくり読むうえで、短期的な資金繰りの安全性をチェックするときの基本的なポイントが「流動資産」と「流動負債」の関係です。 目安としては、流動資産が流動負債を上回っている、つまり「流動資産 > 流動負債」となっていることが望ましいとされます。 1年以内に入ってくるお金の方が1年以内に出ていくお金より多い、という形になっているかどうかを見るイメージです。
ただし流動資産の中には、売れるかどうかわからない商品や、長く残っている在庫、回収が遅れている売掛金など、すぐには現金化しづらいものも含まれている場合があります。 そのような項目を少し割り引いて考えてみても流動資産が流動負債を上回っているのであれば、当面の資金繰りについてはひとまず大きな危険信号は出ていないと見られます。
実際の経営判断では、貸借対照表の他の項目や損益計算書、資金繰り表などもあわせて見る必要がありますが、「まず最初にどこを見ればいいのか」という入口としては、この流動資産と流動負債の関係を押さえておくと便利です。

事業計画書(9)
事業内容 財務諸表
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書で最後に避けて通れないのが数字の説明です。 数字は単に「売上はいくら、利益はいくら」と結論だけを書くことではありません。 販売計画で立てた前提を基準にし「なぜその売上になるのか」を根拠をもって示し、その結果として会社の利益と資金繰りがどう推移するのかを説明します。 この数字は計画全体が現実に回るかどうかを判断するための材料です。
複数年度の事業計画では財務三表がそれぞれ違う役割を持ちます。 損益計算書(PL)は事業がどうやって儲けを生むかを表します。 販売計画で見立てた顧客数、単価、成約率、継続率などの前提を売上に落とし込み、そこから原価や人件費、販管費を積み上げ、利益がどのように生まれるのかを示します。 単年度だけでは成長の道筋が見えにくいため基本形としては三年から五年程度の複数年度で作成し、どの時点で単年度黒字化するのか、どの費用が増えるのかを説明できる形にします。 近年は外部資金を使う計画では三年程度で単年度黒字化の見通しを求められる場面も多く黒字化の時期を曖昧にしないことが重要です。
貸借対照表(BS)はある時点で会社が何を持ち、何を背負い、資本がどれだけあるかを示します。 本来は非常に重要な表ですが、実務では計画の骨子を示す段階ではBSを簡略化し、後述するキャッシュフロー計画と整合が取れる範囲で扱うことも少なくありません。
そして複数年度計画で最も重視されるのがキャッシュフロー(CF)です。 利益が出ていても現金が尽きれば事業は止まります。 逆に赤字でも手元資金が確保できていれば次の打ち手を打てます。 CFでは売上がいつ入金されるか、費用がいつ支払われるか、設備投資や開発投資でどのタイミングに現金が出ていくかを扱います。 さらに出資(増資)や借入、返済といった資金調達の動きもここに入ります。 実務で作るCFには、期首の現金残高、当期の増減、期末の現金残高が明示され翌期へ繰り越されていきます。 「この計画は資金ショートせずに回るのか」「どの時点で追加の資金が必要になるのか」がはっきり提示します。
もう一つ、計画の説得力を上げる指標として損益分岐点があります。 固定費と変動費の構造から「売上がどの水準を超えると黒字になるのか」を示すものです。損益分岐点は単に黒字赤字を判定するためではなく、どれだけ売上が落ちても耐えられるか、逆にどこまで売上を積めば利益が出るかという事業の耐久力を測れます。 売上計画と費用計画が結び付いているかを確認する意味でも有効です。
基本形として押さえるべきことは単純で、販売計画で置いた前提から売上を根拠をもって導き、その売上を複数年度のPLに落とし込み、さらに資金の流れとしてCFで追いかけることです。 事業計画書は根拠のある前提から数字を組み立て、計画が現実に回ることを説明するための資料となります。