
決算書(8)
損益計算書 売上総利益・営業利益・経常利益
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
損益計算書には全部で5つの利益が登場しますが、今回はその中でも経営判断をするうえで特に重要だと感じる、売上総利益、営業利益、経常利益の3つに絞ってその違いと見方を整理してみます。
まずは「売上総利益」についてです。 現場では「粗利(あらり)」と呼ばれることが多い項目で売上高から売上原価を差し引いて計算します。 これは商品やサービスを提供するために直接かかったコストと売値の差額を表しており、ここがプラスでないとそもそも商売として成り立っていないことになります。 この利益は会社の商品やサービスそのものにどれだけの付加価値があるかを示していると言えます。 もしここが低い場合は、薄利多売になりすぎていないか、あるいは仕入れなどの原価が高騰していないかを見直すきっかけになります。
次に「営業利益」です。 先ほどの粗利から商品を売るためにかかった経費である販売費及び一般管理費を引いたものです。 人件費や家賃、広告費などがこれにあたります。 これは文字通り会社が本業で稼ぐ力を表す数字です。 たとえ粗利がたくさんあっても経費を使いすぎていれば営業利益は残りません。 逆にこの営業利益がしっかりと出ていれば、その会社のビジネスモデルと運営体制は健全であると言えます。 金融機関が融資の審査をする際もこの「本業で利益を出せているか」という点は非常に重視されるポイントです。
3つ目が「経常利益」です。 本業の利益である営業利益に本業以外の財務活動による収支を加味したものです。 計算としては営業利益に営業外収益を足し、そこから営業外費用を引きます。 わかりやすい例で言えば借入金の支払利息などが営業外費用としてここで引かれます。 中小企業経営において最も重視されてきたのがこの経常利益です。 たとえ本業が好調でも借入金の利息負担が重すぎれば会社として手元にお金が残らないからです。 「財務体質も含めた会社としての総合的な実力」を見るにはこの数字が一番の指標になります。
これら3つの利益を見ることで会社のどこに課題があるかが浮かび上がってきます。 例えば、粗利が低ければ商品力や価格設定そのものに問題があるかもしれませんし、粗利はあるのに営業利益が低い場合は生産性の低さが疑われます。 そして営業利益はあるのに経常利益が低いのであれば、借入過多などの財務の問題が見えてきます。 どこで利益が削られているかを知ることで次に打つべき手が何かを判断することができます。

決算書(7)
損益計算書 営業外収益・営業外費用と特別利益・特別損失
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
損益計算書を見ると営業利益や経常利益までは理解できても、その下に出てくる営業外収益・営業外費用、特別利益・特別損失になると分かりにくくなる方は多いです。 営業外収益・営業外費用は売上を生む本業そのものではなく、本業以外の活動や取引に伴って生じる損益です。 利息や為替差損益などが代表例で助成金や補助金も営業外収益として表示されることがありますが、制度の性質や会計方針、表示方法によって扱いが変わることもあるため最終的には顧問税理士等に確認するのが安全です。
一方、特別利益・特別損失は毎年は起きない前提で考える一時的で例外的な出来事による損益です。 災害対応や大きなトラブル、訴訟対応、事業撤退に伴う整理などが典型です。 特別損失として処理することは、損失を消したり、都合よく数字を整えたりすることではありません。 特別損失として計上すればその分だけ当期の利益は減ります。
それでも特別損失として分けて考える意味は本業の状態を見誤らないためにあります。 一度きりの損失を営業費用の中に混ぜてしまうと本業が悪かったのか、たまたま起きた出来事なのかが見えにくくなります。 特別損失として切り分ければ本業の成績がどうだったのかを判断しやすくなります。 特別損失は何が例外で何が通常かを整理し次の判断を誤らないための区分だと考えると、決算書の見え方はずっとシンプルになります。

決算書(6)
損益計算書 販管費
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
販売費及び一般管理費(販管費)とは会社が本業を行うために必要となる売上原価以外の費用の総称です。 商品やサービスを直接つくるための費用が売上原価であるのに対し、販管費は「売るため」「会社を回すため」にかかる間接的なコストと考えると分かりやすいです。 広告宣伝費や営業活動にかかる交通費、事務所の家賃や通信費、管理部門の人件費などがこれに含まれます。
販管費は名前の通り販売費と一般管理費に分けられますが、実務上はそこまで厳密に区別しなくても構いません。 重要なのはそれが売上原価なのかそれ以外の費用なのかという点です。 特に人件費は混乱しやすい部分ですべてが販管費になるわけではありません。 製造業であれば製品をつくる現場の作業者の人件費は売上原価に含まれます。 一方で事務・管理部門の人件費は販管費になります。 サービス業やIT業でも同様で、サービス提供に直接関わる人の人件費は売上原価、それ以外は販管費と整理されます。
損益計算書では販管費は売上総利益の下に記載されます。 売上高から売上原価を差し引いた売上総利益から販管費を引いた残りが営業利益です。 この営業利益は本業そのものがどれだけ効率よく回っているかを見るための重要な数字になります。 売上は伸びているのに営業利益が出ない場合、その原因の多くは販管費にあります。
中小企業にとって販管費を見る意味は大きいです。 売上を伸ばすことはもちろん重要ですが同時にどれだけのコストをかけて売上を維持しているのかを把握する必要があります。 販管費が増えている理由が将来につながる投資なのか単に固定費が膨らんでいるだけなのかを見極めることが経営判断につながります。 損益計算書の販管費は会社の日常の姿そのものを映す数字ですので、細かい勘定科目にとらわれず「売上を支えるために何にお金と人を使っているのか」という視点で眺めてみることが大切だと感じています。

決算書(5)
損益計算書
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)は一定期間における企業の経営成績を示す財務諸表です。 売上などの収益から、原価や各種費用を差し引き、最終的に利益(当期純利益など)がいくらになったのかを表します。 貸借対照表がある時点の財政状態(資産・負債・純資産)を示すものだとすれば、損益計算書は期間を通じた事業活動の結果を示す成績表だと言えます。
損益計算書の役割は黒字・赤字の確認にとどまらず、利益がどの段階で生まれどの段階で削られたのかを分解して示し、事業が継続的に利益を生み出せる構造になっているかを読み取れるようにすることにあります。 そのため損益計算書は上から下へ流れに沿って順番に読んでいきます。 段階ごとに意味が分かれているため流れで追うと理解しやすいことが多い諸表です。
基本的な流れは、売上高から始まり、売上に直接対応する原価を差し引いて売上総利益(粗利)を確認し、次に販売費及び一般管理費など日常的な事業運営に必要な費用を反映させて営業利益を把握します。 さらに受取利息・支払利息などの営業外収益・費用を加味して経常利益に至り、固定資産売却益・災害損失などの特別利益・特別損失を反映して税引前当期純利益を計算し、最後に法人税等を差し引いて当期純利益となります。 こうした段階的な利益の積み上げ構造こそが損益計算書の本質になります。
損益計算書を一枚の成績表として眺めるだけではなく事業活動の流れをそのまま写したものとして読むことができれば、数字は単なる結果ではなく次の判断に使える材料へと変わっていきます。

決算書(4)
貸借対照表 自己資本比率
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表でいう「自己資本」は一般に「純資産の部」に計上される金額です(※中小企業の実務では純資産と自己資本はほぼ同じ意味で使われることが多いため、その前提で説明いたします)。 自己資本は現金残高そのものではなく会社が持っている資産全体から返さなければならない負債を差し引いた差額です。 出資によって自己資本が増えたとしても、現金は人件費や開発費、設備、売掛金などに変わっていくのが普通なので「資本金が大きい=手元資金が潤沢」という意味にはなりません。
自己資本の内訳は出資によって入ったお金が元になる資本金と資本準備金、そして事業での利益や損失の累積である利益剰余金です。 出資が入ったときその全額を資本金に入れる必要はなく、会社法上一定の範囲で資本金に組み入れない額を資本準備金として計上でき自己資本を構成します。 資本準備金に入れるは中小企業向けの補助金・助成金や税制優遇を意識する場面では有効な手段になることがあります。
自己資本比率はこの自己資本が総資産の中でどれだけの割合を占めるかを見る指標で、自己資本比率 ≒(純資産合計 ÷ 資産合計)× 100 で算出します。 自己資本比率が高いからといって「いざというときの現金が多い」とは限らないです。 中小企業では利益剰余金がマイナス(累損)になっていることも珍しくなく、赤字が続けばこのマイナスが膨らみ純資産(自己資本)は減少していきます。 純資産が少ない状態だと、赤字や回収が遅れたときなど債務超過が視野に入りやすく、金融機関や取引先が慎重になり追加融資や取引条件の調整が難しくなることがあるようです。 逆に利益剰余金がマイナスでも資本金や資本準備金が一定あり純資産がプラスを保てていれば、「まだ余力がある」と見なされやすいようです。 自己資本比率はそうした信用の度合いをざっくり掴む目安として捉えることができます。