
決算書(3)
貸借対照表 貸付金と借入金
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表を読むとき、貸付金と借入金は資金の動きが表に出やすいので押さえておくと全体が読みやすくなります。 貸付金は資産の部に出てきます。 会社が誰かにお金を貸していて将来回収できる前提の金額です。 ここで大切なのは、貸付金は「資産」ではあるものの現預金のようにそのまま使えるお金ではないという点です。 貸付金が大きい場合、資産の金額としては増えて見えますが手元の現金とは性質が違う項目が増えているという読み方になります。
一方、借入金は負債の部に出てきます。 会社が金融機関などから借りていて将来返済する前提の金額です。 借入金は短期借入金と長期借入金に分かれていることが多く、短期は原則1年以内に返済期限が来るもの、長期は1年以上先まで返済が続くもの、という整理です。 ここは金額の大小だけでなく短期と長期のどちらが厚いかを見ると、「返済期限が近い負債が多いのか、時間をかけて返す負債が中心なのか」という見え方になります。
この貸付金と借入金は、前回の「流動資産」と「流動負債」の読み方ともつながります。 短期借入金は流動負債に入るので短期借入金が多いほど「1年以内に出ていくお金」が増える側に寄ります。 逆に貸付金が流動資産に含まれている場合でも、内容によってはすぐに現金化できないことがあります。 その場合、流動資産の金額は大きく見えても「1年以内に入ってくるお金」としては見かけより弱い可能性があるという読み方になります。
貸借対照表は、右側は会社がどのような形で資金を持っているか、左側はその資金が期末時点で何に姿を変えているかを示しています。 ここで貸付金と借入金を押さえると数字の背景にある資金の流れが見えやすくなります。借入金を見ることで、どれくらいの金額を借りておりその中に返済期限が近いものがどの程度含まれているかが分かります。 一方で資産の側では、現預金のようにすぐ使えるものだけでなく貸付金のように現金として戻るまで時間がかかる性格のものがどれくらい含まれているかを確認できます。 こうした視点で眺めると貸借対照表は単なる項目の一覧ではなく、資金繰りの構造を写した表として読み取りやすくなります。

決算書(2)
貸借対照表
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表とは、会社の「資産」「負債」「純資産」の状態をあらわした表です。 「資産」を左側に「負債」と「純資産」を右側に配置しそれぞれの合計額が必ず一致するように作られています。 左右の合計が合わない場合は仕訳や集計のどこかで間違いが起きているということになります。 貸借対照表は英語で Balance Sheet と呼ばれ、略して「BS(ビーエス)」と言われることも多いです。
ここでは、添付の図にあるようなシンプルな貸借対照表の例をイメージしながら説明していきます。 左側に「資産の部」右側に「負債の部」と「純資産の部」が並び一番下で「資産合計」と「負債及び純資産合計」の金額がぴったり一致している、という形になっています。

まず「資産」の部には流動資産と固定資産が入ります。流動資産には、現金や預金、売掛金、出来上がった商品や製品などが含まれます。 いずれも、比較的短い期間、目安として1年以内に現金になると見込まれているものです。 日々の支払いや仕入れなどに直接かかわる部分なので資金繰りの観点からとても重要なエリアです。
一方、固定資産には、土地や建物、機械や車両、机やパソコンなどの備品といった有形固定資産のほか、特許権、営業権、ソフトウェアといった無形固定資産、そして長期貸付金などが含まれます。 こちらはすぐに現金に変えることを前提としているわけではなく、長い期間にわたって事業のために使っていく資産だとイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
次に、右側の「負債」の部には流動負債と固定負債が入ります。 流動負債には、買掛金や短期借入金、未払金など、1年以内に支払期限が到来する負債が含まれます。 固定負債には、返済期限が1年以上の長期借入金や社債などが含まれ、長い期間をかけて返済していく性格の負債になります。
「純資産」の部には、返済する必要のない資金が入ります。 代表的なものとして、資本金、資本剰余金、利益剰余金などがあります。 資本剰余金のうち「資本準備金」は、新株発行などでお金が払い込まれたときに、その全額を資本金にしてしまわず、一部を積み立てておくための項目です。 会社法では、払い込まれた金額のうち一定の範囲(ざっくり言うと、その2分の1を超えない範囲)を資本準備金として計上することができると定められています。 実務的には、資本金が大きくなり過ぎると一部の中小企業向けの税制や補助金の対象から外れてしまうケースがあるため、資本金と資本準備金の配分を工夫して資本金が1億円を超えないようにしている会社も少なくありません。
この貸借対照表をざっくり読むうえで、短期的な資金繰りの安全性をチェックするときの基本的なポイントが「流動資産」と「流動負債」の関係です。 目安としては、流動資産が流動負債を上回っている、つまり「流動資産 > 流動負債」となっていることが望ましいとされます。 1年以内に入ってくるお金の方が1年以内に出ていくお金より多い、という形になっているかどうかを見るイメージです。
ただし流動資産の中には、売れるかどうかわからない商品や、長く残っている在庫、回収が遅れている売掛金など、すぐには現金化しづらいものも含まれている場合があります。 そのような項目を少し割り引いて考えてみても流動資産が流動負債を上回っているのであれば、当面の資金繰りについてはひとまず大きな危険信号は出ていないと見られます。
実際の経営判断では、貸借対照表の他の項目や損益計算書、資金繰り表などもあわせて見る必要がありますが、「まず最初にどこを見ればいいのか」という入口としては、この流動資産と流動負債の関係を押さえておくと便利です。

決算書(1)
決算書とは何か
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
決算書は会社の一年間の活動をお金の面からまとめた報告書で、企業の成長状態や経営の健全性を数字で確認できる資料です。 事業が健全に回っているか、どこに歪みが出ているかを数字から読み取ることができます。
その中でもメインになるのが損益計算書と貸借対照表です。 損益計算書はその年度の収益と費用をまとめ、最終的に利益または損失がどれだけ出たのかを示す資料です。 貸借対照表はバランスシートとも呼ばれ、決算日時点での資産と負債・純資産のバランス状態を一覧にしたもので、会社がどんな資産を持ち、それをどのような負債や自己資本で支えているかが分かります。 会計の用語ではこうした損益計算書や貸借対照表などをまとめて「財務諸表」と呼び、実務ではそれらを中心とした書類一式を「決算書」と呼びます。
これらの資料は法人だけでなく確定申告の際に個人事業主の方も作成しているものです。 実際の作成は税理士や会計士といった専門家に任せていてもかまいません。 ですが経営にかかわる立場であれば、自社の決算書から最低限どんなことが読み取れるのかは押さえておきたいところです。
また決算書は慣れている人が見れば会社の状態がかなり分かってしまう資料です。 歴戦のプロなら決算書を一目見ただけで、数字のどこに無理や歪みがあるのか、どこが課題なのかを瞬時に見抜きます。 逆に言えば、数字に無理のない決算書は企業の健全性を示す客観的な材料になり、取引先や金融機関からの信用を得ることができます。
決算書はそれだけ重みのある財務資料だと考えていただければと思います。

決算書(10)
個別注記表
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
個別注記表は貸借対照表や損益計算書に並んだ数字の前提条件を文章で説明する書類です。 表形式の数字だけではその数字がどのような基準で算出されたのか、または将来どのようなリスクがあるのかが見えません。 そのため決算書の信頼性を補完する重要な書類として、すべての会社に作成が義務付けられています。
中小企業においては「中小企業の会計に関する基本要領」に準拠していることを明記した上で具体的な会計方針を記載します。 例えば固定資産の減価償却は定率法と定額法のどちらで行っているのか、消費税の処理は「税抜」と「税込」のどちらを採用しているのか、といった内容です。 これらは利益の出方に影響を与えるためどの基準を選んでいるかを宣言することが決算書の透明性を高めることにつながります。
また数字の表には現れない見えないリスクや事実の記載も欠かせません。 具体的には自社の所有する不動産を銀行借入の担保に入れている状況や、他者の借金を肩代わりする約束(保証債務)の有無などです。 これらは今の時点では負債の数字として現れませんが、会社の将来を左右する大きな情報であるため文章で正しく補足する必要があります。
銀行などの外部機関はこの注記表を見て「一貫した基準で書類を作っているか」「隠れたリスクはないか」を厳密にチェックします。 つまり個別注記表は単なる決算書の付録ではなく、減価償却や消費税の処理一つひとつに至るまで自社の決算が適正であることを証明し、経営の誠実さを伝えるための非常に重要な書類といえます。

決算書(9)
株主資本等変動計算書
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
今回取り上げるのは貸借対照表、損益計算書に次ぐ第三の重要な財務諸表である「株主資本等変動計算書」です。 この書類は決算書全体のつながりを完全に理解するうえで決して欠かすことのできない書類です。
この株主資本等変動計算書は貸借対照表の「純資産の部」に記載されている項目が一会計期間の間にどのように変動したかを表す書類です。 平成18年に新会社法が施行された際、それまでの利益処分計算書が廃止され代わりに導入されたのがこの様式です。 貸借対照表はあくまで決算日時点での「残高」を示すものですが、前期の決算から当期の決算までの間に純資産が「なぜ増えたのか」「なぜ減ったのか」という変動の内容までは教えてくれません。 その変動理由を詳細に説明するためにこの書類が存在しています。
具体的にどの項目を見ればよいのでしょうか。 配当や増資などの大きな動きがない場合、記載されるのは「当期純利益」のみというシンプルな構成になります。 これは「前期の残高」に「当期の利益」が正しく加算され「当期の残高」になっていることを証明するもので、決算書の整合性を確認する基本となります。 その上で特殊な動きがあった場合には以下の項目に注目します。 一つ目は「剰余金の配当」です。 ここに記載があれば稼いだ利益を株主へ還元したことがわかります。 二つ目は「当期純損失」です。 赤字決算の場合はここを見れば前期までの累積黒字がどれだけ削られたか、あるいは累積赤字がどれだけ膨らんだかが一目でわかります。 三つ目は「新株の発行」です。 資金繰りのために増資を行った場合などはここに数値が入ります。
実務において銀行融資の審査や税務申告の場面ではこの変動計算書もチェックされます。 ここには経営者が稼いだ利益をどう残したか、あるいは発生した赤字や資金不足に対してどう対処したかという経営判断の履歴が明確に残るためです。 貸借対照表と損益計算書という二つの主要な決算書をつなぎ合わせ、お金の流れと蓄積、そして純資産の増減を証明する書類が株主資本等変動計算書です。