
決算書(1)
決算書とは何か
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
決算書は会社の一年間の活動をお金の面からまとめた報告書で、企業の成長状態や経営の健全性を数字で確認できる資料です。 事業が健全に回っているか、どこに歪みが出ているかを数字から読み取ることができます。
その中でもメインになるのが損益計算書と貸借対照表です。 損益計算書はその年度の収益と費用をまとめ、最終的に利益または損失がどれだけ出たのかを示す資料です。 貸借対照表はバランスシートとも呼ばれ、決算日時点での資産と負債・純資産のバランス状態を一覧にしたもので、会社がどんな資産を持ち、それをどのような負債や自己資本で支えているかが分かります。 会計の用語ではこうした損益計算書や貸借対照表などをまとめて「財務諸表」と呼び、実務ではそれらを中心とした書類一式を「決算書」と呼びます。
これらの資料は法人だけでなく確定申告の際に個人事業主の方も作成しているものです。 実際の作成は税理士や会計士といった専門家に任せていてもかまいません。 ですが経営にかかわる立場であれば、自社の決算書から最低限どんなことが読み取れるのかは押さえておきたいところです。
また決算書は慣れている人が見れば会社の状態がかなり分かってしまう資料です。 歴戦のプロなら決算書を一目見ただけで、数字のどこに無理や歪みがあるのか、どこが課題なのかを瞬時に見抜きます。 逆に言えば、数字に無理のない決算書は企業の健全性を示す客観的な材料になり、取引先や金融機関からの信用を得ることができます。
決算書はそれだけ重みのある財務資料だと考えていただければと思います。

事業計画書(9)
事業内容 財務諸表
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書で最後に避けて通れないのが数字の説明です。 数字は単に「売上はいくら、利益はいくら」と結論だけを書くことではありません。 販売計画で立てた前提を基準にし「なぜその売上になるのか」を根拠をもって示し、その結果として会社の利益と資金繰りがどう推移するのかを説明します。 この数字は計画全体が現実に回るかどうかを判断するための材料です。
複数年度の事業計画では財務三表がそれぞれ違う役割を持ちます。 損益計算書(PL)は事業がどうやって儲けを生むかを表します。 販売計画で見立てた顧客数、単価、成約率、継続率などの前提を売上に落とし込み、そこから原価や人件費、販管費を積み上げ、利益がどのように生まれるのかを示します。 単年度だけでは成長の道筋が見えにくいため基本形としては三年から五年程度の複数年度で作成し、どの時点で単年度黒字化するのか、どの費用が増えるのかを説明できる形にします。 近年は外部資金を使う計画では三年程度で単年度黒字化の見通しを求められる場面も多く黒字化の時期を曖昧にしないことが重要です。
貸借対照表(BS)はある時点で会社が何を持ち、何を背負い、資本がどれだけあるかを示します。 本来は非常に重要な表ですが、実務では計画の骨子を示す段階ではBSを簡略化し、後述するキャッシュフロー計画と整合が取れる範囲で扱うことも少なくありません。
そして複数年度計画で最も重視されるのがキャッシュフロー(CF)です。 利益が出ていても現金が尽きれば事業は止まります。 逆に赤字でも手元資金が確保できていれば次の打ち手を打てます。 CFでは売上がいつ入金されるか、費用がいつ支払われるか、設備投資や開発投資でどのタイミングに現金が出ていくかを扱います。 さらに出資(増資)や借入、返済といった資金調達の動きもここに入ります。 実務で作るCFには、期首の現金残高、当期の増減、期末の現金残高が明示され翌期へ繰り越されていきます。 「この計画は資金ショートせずに回るのか」「どの時点で追加の資金が必要になるのか」がはっきり提示します。
もう一つ、計画の説得力を上げる指標として損益分岐点があります。 固定費と変動費の構造から「売上がどの水準を超えると黒字になるのか」を示すものです。損益分岐点は単に黒字赤字を判定するためではなく、どれだけ売上が落ちても耐えられるか、逆にどこまで売上を積めば利益が出るかという事業の耐久力を測れます。 売上計画と費用計画が結び付いているかを確認する意味でも有効です。
基本形として押さえるべきことは単純で、販売計画で置いた前提から売上を根拠をもって導き、その売上を複数年度のPLに落とし込み、さらに資金の流れとしてCFで追いかけることです。 事業計画書は根拠のある前提から数字を組み立て、計画が現実に回ることを説明するための資料となります。

中小企業のための補助金・助成金(1)
補助金は資金の先出しが発生する
補助金・助成金といえば「国からお金をもらえる」とまず思いますが、ただお金がもらえるわけではありません。 補助金・助成金は行政の目的に沿っており、その効果が得られると想定される事業に対してその補助金の対象になる経費のうち定められた補助率・助成率を交付するというものであり、そのほとんどが精算払い(後払い)です。 つまり申請する事業の内うち一部経費を交付してもらえますが、受け取れるのは全ての経費を支払った後になるので一旦事業経費を全て負担しなければならないのです。
補助金と助成金の明確な違いはありませんが、中小企業が受けられる補助金・助成金では、
中小企業向け補助金 ・・・ 補助率 2/3~3/4
中小企業向け助成金 ・・・ 助成率 1/2
というのをよく見かけます。 補助率2/3というのは補助金1,000万円の場合は自社で先に1,500万円を使わなければならないのです。 助成率1/2なら2,000万円最初に使う必要があります。 そしてその経費資料等を審査し問題ないとされた経費に対してだけ補助金・助成金が支払われます。 つまり補助金・助成金は最初に手元にお金がなければできないのです。
これは行政の目的が経済を回すことにあるためです。 一部を負担して国内の経済循環を良くしようという意図があります。 特に最近は設備投資を促すものが多くあります。 補助金・助成金は税金から成り立っているものがほとんどなので、その税金を使って事業をするのですから採択された企業も資金は支出しなければならないのです。
ただし、最初に事業資金が無いから補助金・助成金を申請したいのだということはわかっているので、各施策の多くが「つなぎ融資」というものを用意しています。 採択された場合に補助事業・助成事業に対して融資が得られるというものです。 この存在により事業を遂行していけます。 補助金・助成金とは基本的には「申請をして採択されたなら融資を得て事業を行い、その一部を負担してもらえる。」というものなのです。

決算書(10)
個別注記表
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
個別注記表は貸借対照表や損益計算書に並んだ数字の前提条件を文章で説明する書類です。 表形式の数字だけではその数字がどのような基準で算出されたのか、または将来どのようなリスクがあるのかが見えません。 そのため決算書の信頼性を補完する重要な書類として、すべての会社に作成が義務付けられています。
中小企業においては「中小企業の会計に関する基本要領」に準拠していることを明記した上で具体的な会計方針を記載します。 例えば固定資産の減価償却は定率法と定額法のどちらで行っているのか、消費税の処理は「税抜」と「税込」のどちらを採用しているのか、といった内容です。 これらは利益の出方に影響を与えるためどの基準を選んでいるかを宣言することが決算書の透明性を高めることにつながります。
また数字の表には現れない見えないリスクや事実の記載も欠かせません。 具体的には自社の所有する不動産を銀行借入の担保に入れている状況や、他者の借金を肩代わりする約束(保証債務)の有無などです。 これらは今の時点では負債の数字として現れませんが、会社の将来を左右する大きな情報であるため文章で正しく補足する必要があります。
銀行などの外部機関はこの注記表を見て「一貫した基準で書類を作っているか」「隠れたリスクはないか」を厳密にチェックします。 つまり個別注記表は単なる決算書の付録ではなく、減価償却や消費税の処理一つひとつに至るまで自社の決算が適正であることを証明し、経営の誠実さを伝えるための非常に重要な書類といえます。

事業計画書(8)
事業内容 販売計画
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
販売計画は後に続く損益計画(PL)の売上を「説明できる数字」にするためのパートです。 PLに金額だけが書かれていてもそれがどの事業セグメントの「誰に、何を、いくらで、どれだけ売る」前提なのかが見えなければ数字は願望として扱われます。 したがって販売計画ではセグメントごとに売上の算出式を示し、その式を構成する前提条件と根拠を添えることが必要です。
ただし現実には、特に初期段階の計画ほど「数量、単価、成約率、継続率」などの多くが想定になります。 重要なのは想定を避けることではなく、確定している材料と想定部分を切り分け、想定には妥当性の理由を与えることです。 既存契約や発注見込み、過去実績、具体的な引合い、顧客ヒアリングなど、根拠として提示できる材料は明確に書きます。 一方で材料が不足する部分は、類似事例、テスト販売やPoCの結果、営業の状況などから仮説を記載し、なぜその数値になるのかを購買プロセスや導入障壁、意思決定構造などとと結び付けて説明できれば良いです。 読み手が知りたいのは当たるか外れるか以前に、数字がどう組み立てられ、どこが想定なのかということです。
そのためには売上を分解して示すのが有効です。 対象顧客数、成約率、平均単価、継続率といった変数に分け、売上がそれらの掛け算として表せる形にしておけば読み手は前提を見て検算できますし「どの変数が過大なのか」「どこを改善すべきか」も検討できます。 想定が多い場合でも式と前提が見えるだけで計画は十分検討可能な形になります。
また販売計画では商流の想定を必ず置きます。直販か代理店かといった販売体制に留まらず、誰が支払者で誰が契約主体で誰が請求し入金はいつ回収され粗利はどこに残るのかまで明確にすると説得力が増します。 すべてを確定できないとしても、現時点での想定を書き、その想定を採る理由と想定が変わった場合に影響を受ける項目を示すと、読み手は前提の妥当性を判断できます。
販売計画は長文で語る場所ではありません。 1~2枚程度に、セグメント別の算出式、前提条件、根拠、商流の想定を簡潔に並べ、後段の財務計画へ橋をかけることが目的です。 完璧な未来予測ではなく現時点の材料から無理なく組み立てられた計算と仮説の置き方のルールが読み手の信頼を作ります。 そうして初めて事業計画書の中で最も重要な売上計画が信頼に足る形になり、以降の財務計画も意味を持ちます。