
事業計画書(3)
バックグラウンド
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書を作るとき、市場規模や売上予測、収支計画といった数字に目が向きがちです。 しかし投資家などの相手に本当に理解してもらうために重要なのは、その裏側にある「背景」です。 なぜこの事業なのか、なぜ自分たちがやるのか、その理由を伝えるストーリーが欠かせません。
ここでいう背景とは経営者自身の経験やお客様の声、どのような課題に直面してきたのかといった「その事業にたどり着くまでの道のり」です。 ビジネスモデルだけを説明するよりも、どんな想いがあり、どのような過程を経て今の事業構想に至ったのかを伝えることで説得力が増し、相手の心にも届きやすくなります。 アイデアそのものなら思いつく人は世の中にたくさんいます。 大切なのは「なぜそのアイデアを、あなたが、今やるのか」をきちんと伝えることです。
経営理念から背景までを一つの流れとして伝えることで事業全体のストーリーが立ち上がってきます。 そこに具体的なエピソードが加わると投資家にとっても「なるほど」と腑に落ちやすくなりますし、これは対外的な説明だけでなく社内にとっても大きな意味を持ちます。 社員が事業の背景を理解していれば日々の判断や行動にも一貫性が生まれます。
事業計画書の「背景」は経営者の視点や問題意識、想いと覚悟を伝えるための重要なパートです。だからこそ経営理念と同じくらい時間をかけて言葉を磨き、丁寧に作り込むべきページだと考えます。

中小企業のための補助金・助成金(5)
発注先を決めるには
近年補助金は設備投資を促すものが多くなっています。 設備といってもITなどのシステムへの投資も含まれます。 機械装置などは既存の設備を購入する(カタログが必要)ことが求められますが、システムなら自由に作ったものを補助事業対象費に回すことが出来ます。
その機械装置やシステム構築費なども含めて発注する際には相見積もりを取ることが要求されます。 普段発注している企業さんに頼んだ方がお互いわかっているので早くて楽なのですが補助金は税金なのでそう簡単には行きません。 正当に発注先を選定する必要があります。
しかし、どうしてもこの企業に発注をしなければならないという状況は発生します。 そのような場合は業者選定理由書というものを作ります。 見積が1社以上に取れない状況であったりその企業でしかできないものであれば、その理由と発注する妥当性を示す資料を作ります。 この業者選定理由書を通せば相見積もりで選定しなくても1社に発注することが出来ます。
最後に、補助金で購入した設備は補助金に関する事業でしか使用できないことになっていますのでご注意ください。

決算書(4)
貸借対照表 自己資本比率
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表でいう「自己資本」は一般に「純資産の部」に計上される金額です(※中小企業の実務では純資産と自己資本はほぼ同じ意味で使われることが多いため、その前提で説明いたします)。 自己資本は現金残高そのものではなく会社が持っている資産全体から返さなければならない負債を差し引いた差額です。 出資によって自己資本が増えたとしても、現金は人件費や開発費、設備、売掛金などに変わっていくのが普通なので「資本金が大きい=手元資金が潤沢」という意味にはなりません。
自己資本の内訳は出資によって入ったお金が元になる資本金と資本準備金、そして事業での利益や損失の累積である利益剰余金です。 出資が入ったときその全額を資本金に入れる必要はなく、会社法上一定の範囲で資本金に組み入れない額を資本準備金として計上でき自己資本を構成します。 資本準備金に入れるは中小企業向けの補助金・助成金や税制優遇を意識する場面では有効な手段になることがあります。
自己資本比率はこの自己資本が総資産の中でどれだけの割合を占めるかを見る指標で、自己資本比率 ≒(純資産合計 ÷ 資産合計)× 100 で算出します。 自己資本比率が高いからといって「いざというときの現金が多い」とは限らないです。 中小企業では利益剰余金がマイナス(累損)になっていることも珍しくなく、赤字が続けばこのマイナスが膨らみ純資産(自己資本)は減少していきます。 純資産が少ない状態だと、赤字や回収が遅れたときなど債務超過が視野に入りやすく、金融機関や取引先が慎重になり追加融資や取引条件の調整が難しくなることがあるようです。 逆に利益剰余金がマイナスでも資本金や資本準備金が一定あり純資産がプラスを保てていれば、「まだ余力がある」と見なされやすいようです。 自己資本比率はそうした信用の度合いをざっくり掴む目安として捉えることができます。

事業計画書(2)
経営理念
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
出資を募る目論見書において経営理念は特に重要な要素になります。 事業計画書について教えていただいた代表からも「ここが一番重要だ」と繰り返し言われてきました。 経営理念は自社や事業がなぜ存在するのかどこを目指すのかという目的やビジョンを言語化したものであり、企業や事業を興す際の「軸」になります。 また事業を進めていく中でもその軸からブレていないかを確認するための拠り所となります。 これらは企業の存在意義や価値を示すものであり、その内容に共感や魅力を感じてもらえなければその先の事業計画書の細かな内容を読み進めてもらえないかもしれません。
経営理念は「事業計画書に書くための項目」というだけのものではなくそもそも会社を経営していくうえで欠かせない土台です。 経営者が交代しても引き継がれるべきものであり社員はその理念を拠り所として判断し日々の行動を選択していくことができます。 意思決定に迷ったときに立ち返る基準でもあり短期的な利益や目先の事情に振り回されないためのガイドラインにもなります。
また経営理念は対外的なコミュニケーションにおいても重要な役割を果たします。 自社が「どういう価値観を持ち、何を目指している会社なのか」を端的に示すことで、取引先やパートナー候補に対して自社の姿勢を明確に伝えるツールになります。 特に社員との間で「何を価値とし、どの方向を目指しているのか」が共有されていることは事業を推進していくうえで非常に大きな力となります。 同じ理念を共有していることで個々のメンバーの行動が自然とそろい、事業計画で描いたストーリーを現実のものにしていく推進力が生まれます。

決算書(3)
貸借対照表 貸付金と借入金
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表を読むとき、貸付金と借入金は資金の動きが表に出やすいので押さえておくと全体が読みやすくなります。 貸付金は資産の部に出てきます。 会社が誰かにお金を貸していて将来回収できる前提の金額です。 ここで大切なのは、貸付金は「資産」ではあるものの現預金のようにそのまま使えるお金ではないという点です。 貸付金が大きい場合、資産の金額としては増えて見えますが手元の現金とは性質が違う項目が増えているという読み方になります。
一方、借入金は負債の部に出てきます。 会社が金融機関などから借りていて将来返済する前提の金額です。 借入金は短期借入金と長期借入金に分かれていることが多く、短期は原則1年以内に返済期限が来るもの、長期は1年以上先まで返済が続くもの、という整理です。 ここは金額の大小だけでなく短期と長期のどちらが厚いかを見ると、「返済期限が近い負債が多いのか、時間をかけて返す負債が中心なのか」という見え方になります。
この貸付金と借入金は、前回の「流動資産」と「流動負債」の読み方ともつながります。 短期借入金は流動負債に入るので短期借入金が多いほど「1年以内に出ていくお金」が増える側に寄ります。 逆に貸付金が流動資産に含まれている場合でも、内容によってはすぐに現金化できないことがあります。 その場合、流動資産の金額は大きく見えても「1年以内に入ってくるお金」としては見かけより弱い可能性があるという読み方になります。
貸借対照表は、右側は会社がどのような形で資金を持っているか、左側はその資金が期末時点で何に姿を変えているかを示しています。 ここで貸付金と借入金を押さえると数字の背景にある資金の流れが見えやすくなります。借入金を見ることで、どれくらいの金額を借りておりその中に返済期限が近いものがどの程度含まれているかが分かります。 一方で資産の側では、現預金のようにすぐ使えるものだけでなく貸付金のように現金として戻るまで時間がかかる性格のものがどれくらい含まれているかを確認できます。 こうした視点で眺めると貸借対照表は単なる項目の一覧ではなく、資金繰りの構造を写した表として読み取りやすくなります。