
事業計画書(6)
事業内容 優位性
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
今回は「優位性」の書き方です。 優位性とは、同じ課題を解決する選択肢がある中でなぜ自社が選ばれるのかを説明する部分です。 読み手が安心して他社と比較できるよう、主張だけで終わらせず比べる材料と根拠をそろえて示します。 その整理のツールとしてSWOT分析を用います。
SWOT分析は事業を4つの視点で整理する方法です。 自社の内側にある「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」と外部環境にある「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」に分けて書き出します。 SWOT分析で状況を整理し選ばれる理由を筋道立てて作れるようになります。
まず強みは「お客様にとって分かりやすい良さ」を中心に書きます。 たとえば問い合わせや見積依頼が増えている、試し導入から本導入に進む割合が高い、紹介が多い、といった事実は需要の強さを示す有力な根拠になります。 また価格と原価の関係が説明できて採算が合う、継続的な収入につながる仕組みがあるなど、「売れたら無理なく利益が残る形」が見えていることも大きな強みです。 さらに、技術や知財、ノウハウ、取引先との関係、積み上がるデータなど、同じ提供を再現するのに時間やコストがかかる要素があれば、「真似されにくさ」として大きな強みになります。
次に弱みは隠すよりも信頼を高める材料として扱います。 実績がまだ少ない、特定の人に頼っている、対応人数が少ない、保証や責任の範囲が曖昧、事務作業が追いつかない、といった点があるなら、そこで止めずに「だからこう改善する」と弱みに対する改善策をセットで示します。弱点を把握しその対策をを示せる会社は読み手に安心感を与えます。
機会は外部環境の追い風です。 ここが自社の強みと噛み合うほど説得力が増します。 たとえば、人手不足で効率化のニーズが高まっている、取引先から品質や管理の要求が厳しくなっている、行政の支援制度がある、特定業界で同じ困りごとが増えている、など「いま顧客側で導入の理由が強くなっている背景」を整理します。
最後に脅威は外部環境の向かい風です。競合が増える、値下げ競争になる、既存ツールで代替される、景気によって投資が止まりやすい、といった現実を挙げたうえで、影響が大きいものから優先的に捉えます。
ここまで整理できれば優位性を作り出すことができます。基本は強み×機会で「追い風が吹いている場所で勝てる理由」を言葉にし、弱み×脅威は短く対策まで示して不安をつぶすことです。最後に文章としては、結論→理由→根拠→対策の順で整えると、読み手が比較しやすい優位性の説明になります。

決算書(2)
貸借対照表
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表とは、会社の「資産」「負債」「純資産」の状態をあらわした表です。 「資産」を左側に「負債」と「純資産」を右側に配置しそれぞれの合計額が必ず一致するように作られています。 左右の合計が合わない場合は仕訳や集計のどこかで間違いが起きているということになります。 貸借対照表は英語で Balance Sheet と呼ばれ、略して「BS(ビーエス)」と言われることも多いです。
ここでは、添付の図にあるようなシンプルな貸借対照表の例をイメージしながら説明していきます。 左側に「資産の部」右側に「負債の部」と「純資産の部」が並び一番下で「資産合計」と「負債及び純資産合計」の金額がぴったり一致している、という形になっています。

まず「資産」の部には流動資産と固定資産が入ります。流動資産には、現金や預金、売掛金、出来上がった商品や製品などが含まれます。 いずれも、比較的短い期間、目安として1年以内に現金になると見込まれているものです。 日々の支払いや仕入れなどに直接かかわる部分なので資金繰りの観点からとても重要なエリアです。
一方、固定資産には、土地や建物、機械や車両、机やパソコンなどの備品といった有形固定資産のほか、特許権、営業権、ソフトウェアといった無形固定資産、そして長期貸付金などが含まれます。 こちらはすぐに現金に変えることを前提としているわけではなく、長い期間にわたって事業のために使っていく資産だとイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
次に、右側の「負債」の部には流動負債と固定負債が入ります。 流動負債には、買掛金や短期借入金、未払金など、1年以内に支払期限が到来する負債が含まれます。 固定負債には、返済期限が1年以上の長期借入金や社債などが含まれ、長い期間をかけて返済していく性格の負債になります。
「純資産」の部には、返済する必要のない資金が入ります。 代表的なものとして、資本金、資本剰余金、利益剰余金などがあります。 資本剰余金のうち「資本準備金」は、新株発行などでお金が払い込まれたときに、その全額を資本金にしてしまわず、一部を積み立てておくための項目です。 会社法では、払い込まれた金額のうち一定の範囲(ざっくり言うと、その2分の1を超えない範囲)を資本準備金として計上することができると定められています。 実務的には、資本金が大きくなり過ぎると一部の中小企業向けの税制や補助金の対象から外れてしまうケースがあるため、資本金と資本準備金の配分を工夫して資本金が1億円を超えないようにしている会社も少なくありません。
この貸借対照表をざっくり読むうえで、短期的な資金繰りの安全性をチェックするときの基本的なポイントが「流動資産」と「流動負債」の関係です。 目安としては、流動資産が流動負債を上回っている、つまり「流動資産 > 流動負債」となっていることが望ましいとされます。 1年以内に入ってくるお金の方が1年以内に出ていくお金より多い、という形になっているかどうかを見るイメージです。
ただし流動資産の中には、売れるかどうかわからない商品や、長く残っている在庫、回収が遅れている売掛金など、すぐには現金化しづらいものも含まれている場合があります。 そのような項目を少し割り引いて考えてみても流動資産が流動負債を上回っているのであれば、当面の資金繰りについてはひとまず大きな危険信号は出ていないと見られます。
実際の経営判断では、貸借対照表の他の項目や損益計算書、資金繰り表などもあわせて見る必要がありますが、「まず最初にどこを見ればいいのか」という入口としては、この流動資産と流動負債の関係を押さえておくと便利です。

事業計画書(5)
事業内容
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
今回の記事では「事業内容」の書き方について整理します。 優位性や他社との比較は次回とし、ここでは「事業内容はそもそもどう書くか」という点に絞ってまとめます。
まず自社が行っている、あるいはこれから行おうとしている事業について、簡単に説明する必要があります。 専門用語をできるだけ減らし、一言で言い表せるようにするのが理想です。 誰のどんな課題を解決する事業なのかをはっきり記載することが重要だと教えていただきました。
これらを一つのストーリーとして意識しながら書くことが大切です。 経営理念や事業の背景から続く流れを活かし、実際に誰にどのようなことを行い、どんな課題を解決していくのかが自然なストーリーとして表現できると読み手にとって理解しやすく説得力のある内容になります。
また、その事業が一度きりの取引による単発の売上なのか、サブスクリプションや保守契約のように継続的な売上を生むものなのかといった点も簡単に触れておくと良いようです。 ここでの説明が後に続く売上計画や資金計画につながっていきます。
さらに展開している事業がたくさんあったとしても、全体をひとことで表せる統一したキーフレーズを用意し、読み手に一言で伝わるようにしておく必要があります。 その一文を読めば、「この会社はこういう事業をしているのだな」とイメージできることを目指します。
事業内容のページは、読み手が一読して事業の全体像を思い描けるかどうかが勝負どころです。専門用語を抑えつつ一言で説明できる軸とストーリーを意識して整理していくことが、良い事業概要の説明ページになります。

決算書(1)
決算書とは何か
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
決算書は会社の一年間の活動をお金の面からまとめた報告書で、企業の成長状態や経営の健全性を数字で確認できる資料です。 事業が健全に回っているか、どこに歪みが出ているかを数字から読み取ることができます。
その中でもメインになるのが損益計算書と貸借対照表です。 損益計算書はその年度の収益と費用をまとめ、最終的に利益または損失がどれだけ出たのかを示す資料です。 貸借対照表はバランスシートとも呼ばれ、決算日時点での資産と負債・純資産のバランス状態を一覧にしたもので、会社がどんな資産を持ち、それをどのような負債や自己資本で支えているかが分かります。 会計の用語ではこうした損益計算書や貸借対照表などをまとめて「財務諸表」と呼び、実務ではそれらを中心とした書類一式を「決算書」と呼びます。
これらの資料は法人だけでなく確定申告の際に個人事業主の方も作成しているものです。 実際の作成は税理士や会計士といった専門家に任せていてもかまいません。 ですが経営にかかわる立場であれば、自社の決算書から最低限どんなことが読み取れるのかは押さえておきたいところです。
また決算書は慣れている人が見れば会社の状態がかなり分かってしまう資料です。 歴戦のプロなら決算書を一目見ただけで、数字のどこに無理や歪みがあるのか、どこが課題なのかを瞬時に見抜きます。 逆に言えば、数字に無理のない決算書は企業の健全性を示す客観的な材料になり、取引先や金融機関からの信用を得ることができます。
決算書はそれだけ重みのある財務資料だと考えていただければと思います。

事業計画書(4)
会社概要
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
今回は事業計画書の中でも「会社概要」ページについて説明します。 会社概要は読み手に「この会社は何者か」を短時間で理解してもらうための部分です。 社名や組織の基本情報、経営陣の顔ぶれを示し、信頼と安心感を与えることを主な目的とします。
まずは基本情報です。 社名、所在地、設立年月日、資本金などの項目を過不足なく記載します。 ここでは実在するきちんとした会社であることを客観的な事実によって示すことが求められます。 そのため登記内容と矛盾がないこと、役員名や資本金などの情報が最新の状態に保たれていることが重要です。
次に経営陣の紹介です。 代表者だけでなく主要な役員についても、どのような役職があり誰がどのポジションを担っているのかを一目で分かるように整理します。 必要に応じて主な経歴や専門分野を一行程度で補足するのも有効です。 この経営陣であれば事業計画を遂行できると読み手に感じてもらえる構成を意識します。
事業内容の説明も欠かせません。 自社がどのような事業を行っているのかをできるだけ簡潔に、かつ直感的に伝えます。 沿革についてはすべての出来事を網羅する必要はありません。 現在の事業につながる主要な出来事に絞って簡潔に記載します。 会社設立や主力事業・サービスの立ち上げなど、どのような流れで今の事業に至ったのかが分かる程度で十分です。 年表形式で数行にまとめ会社の歩みをコンパクトに示します。
会社概要のページで何より大切なのは事実に基づいた情報を整合性のある形で提示することです。 経営理念や事業の背景と矛盾しない基本情報、経営陣の構成、沿革を明示し、読み手に信頼できる会社だと感じてもらうための情報を整理して示すことが会社概要の役割です。