
事業計画書(7)
事業内容 事例・ユースケース
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書における事例・ユースケースは、事業が現場で成立するか同様の組織へ展開できるかを示すための項目です。 読み手が知りたいのは「誰が、どの状況で何に困り、導入後に何がどう変わるのか」です。 したがって前提条件・課題・解決の流れを具体的に整理して記載します。
まず想定する業界と企業像を明確にします。 業界、企業規模、導入主体(誰が使うのか)を具体化し適用範囲を示します。 実名は不要ですが「中堅製造業で複数拠点を運営する企業」など状況を想像できる表現にします。
次に現場で起きている課題を書きます。 例えば検査業務を行う現場で、手作業の記録が残り情報が散在しているため集計や報告のたびに確認・転記・整合確認が発生し手戻りが起きる状態が発生している等です。 増えている作業や詰まっている工程を具体的に示します。
そのうえで解決後の運用の変化を示します。 「誰が、いつ、何を行い、何が不要になるか」を書きます。 記録の扱いが統一され、入力・確認・集計が標準化されることで提出物作成や確認手順が簡略化されるといった変化を具体化します。 利用者の負担が増えないことも併記すると導入可能性が伝わります。
最後に横展開と波及効果を述べます。同様の課題が「複数拠点・複数部署で記録と報告が発生する組織」に広く存在すること、導入が広がれば手順や提出物の標準化が進み調整コストが下がることを簡潔に整理します。
事例・ユースケースは、「対象」「課題」「導入後の変化」「展開・波及」を運用をイメージできる形で書くことが重要です。

決算書(9)
株主資本等変動計算書
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
今回取り上げるのは貸借対照表、損益計算書に次ぐ第三の重要な財務諸表である「株主資本等変動計算書」です。 この書類は決算書全体のつながりを完全に理解するうえで決して欠かすことのできない書類です。
この株主資本等変動計算書は貸借対照表の「純資産の部」に記載されている項目が一会計期間の間にどのように変動したかを表す書類です。 平成18年に新会社法が施行された際、それまでの利益処分計算書が廃止され代わりに導入されたのがこの様式です。 貸借対照表はあくまで決算日時点での「残高」を示すものですが、前期の決算から当期の決算までの間に純資産が「なぜ増えたのか」「なぜ減ったのか」という変動の内容までは教えてくれません。 その変動理由を詳細に説明するためにこの書類が存在しています。
具体的にどの項目を見ればよいのでしょうか。 配当や増資などの大きな動きがない場合、記載されるのは「当期純利益」のみというシンプルな構成になります。 これは「前期の残高」に「当期の利益」が正しく加算され「当期の残高」になっていることを証明するもので、決算書の整合性を確認する基本となります。 その上で特殊な動きがあった場合には以下の項目に注目します。 一つ目は「剰余金の配当」です。 ここに記載があれば稼いだ利益を株主へ還元したことがわかります。 二つ目は「当期純損失」です。 赤字決算の場合はここを見れば前期までの累積黒字がどれだけ削られたか、あるいは累積赤字がどれだけ膨らんだかが一目でわかります。 三つ目は「新株の発行」です。 資金繰りのために増資を行った場合などはここに数値が入ります。
実務において銀行融資の審査や税務申告の場面ではこの変動計算書もチェックされます。 ここには経営者が稼いだ利益をどう残したか、あるいは発生した赤字や資金不足に対してどう対処したかという経営判断の履歴が明確に残るためです。 貸借対照表と損益計算書という二つの主要な決算書をつなぎ合わせ、お金の流れと蓄積、そして純資産の増減を証明する書類が株主資本等変動計算書です。

事業計画書(6)
事業内容 優位性
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
今回は「優位性」の書き方です。 優位性とは、同じ課題を解決する選択肢がある中でなぜ自社が選ばれるのかを説明する部分です。 読み手が安心して他社と比較できるよう、主張だけで終わらせず比べる材料と根拠をそろえて示します。 その整理のツールとしてSWOT分析を用います。
SWOT分析は事業を4つの視点で整理する方法です。 自社の内側にある「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」と外部環境にある「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」に分けて書き出します。 SWOT分析で状況を整理し選ばれる理由を筋道立てて作れるようになります。
まず強みは「お客様にとって分かりやすい良さ」を中心に書きます。 たとえば問い合わせや見積依頼が増えている、試し導入から本導入に進む割合が高い、紹介が多い、といった事実は需要の強さを示す有力な根拠になります。 また価格と原価の関係が説明できて採算が合う、継続的な収入につながる仕組みがあるなど、「売れたら無理なく利益が残る形」が見えていることも大きな強みです。 さらに、技術や知財、ノウハウ、取引先との関係、積み上がるデータなど、同じ提供を再現するのに時間やコストがかかる要素があれば、「真似されにくさ」として大きな強みになります。
次に弱みは隠すよりも信頼を高める材料として扱います。 実績がまだ少ない、特定の人に頼っている、対応人数が少ない、保証や責任の範囲が曖昧、事務作業が追いつかない、といった点があるなら、そこで止めずに「だからこう改善する」と弱みに対する改善策をセットで示します。弱点を把握しその対策をを示せる会社は読み手に安心感を与えます。
機会は外部環境の追い風です。 ここが自社の強みと噛み合うほど説得力が増します。 たとえば、人手不足で効率化のニーズが高まっている、取引先から品質や管理の要求が厳しくなっている、行政の支援制度がある、特定業界で同じ困りごとが増えている、など「いま顧客側で導入の理由が強くなっている背景」を整理します。
最後に脅威は外部環境の向かい風です。競合が増える、値下げ競争になる、既存ツールで代替される、景気によって投資が止まりやすい、といった現実を挙げたうえで、影響が大きいものから優先的に捉えます。
ここまで整理できれば優位性を作り出すことができます。基本は強み×機会で「追い風が吹いている場所で勝てる理由」を言葉にし、弱み×脅威は短く対策まで示して不安をつぶすことです。最後に文章としては、結論→理由→根拠→対策の順で整えると、読み手が比較しやすい優位性の説明になります。

決算書(8)
損益計算書 売上総利益・営業利益・経常利益
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
損益計算書には全部で5つの利益が登場しますが、今回はその中でも経営判断をするうえで特に重要だと感じる、売上総利益、営業利益、経常利益の3つに絞ってその違いと見方を整理してみます。
まずは「売上総利益」についてです。 現場では「粗利(あらり)」と呼ばれることが多い項目で売上高から売上原価を差し引いて計算します。 これは商品やサービスを提供するために直接かかったコストと売値の差額を表しており、ここがプラスでないとそもそも商売として成り立っていないことになります。 この利益は会社の商品やサービスそのものにどれだけの付加価値があるかを示していると言えます。 もしここが低い場合は、薄利多売になりすぎていないか、あるいは仕入れなどの原価が高騰していないかを見直すきっかけになります。
次に「営業利益」です。 先ほどの粗利から商品を売るためにかかった経費である販売費及び一般管理費を引いたものです。 人件費や家賃、広告費などがこれにあたります。 これは文字通り会社が本業で稼ぐ力を表す数字です。 たとえ粗利がたくさんあっても経費を使いすぎていれば営業利益は残りません。 逆にこの営業利益がしっかりと出ていれば、その会社のビジネスモデルと運営体制は健全であると言えます。 金融機関が融資の審査をする際もこの「本業で利益を出せているか」という点は非常に重視されるポイントです。
3つ目が「経常利益」です。 本業の利益である営業利益に本業以外の財務活動による収支を加味したものです。 計算としては営業利益に営業外収益を足し、そこから営業外費用を引きます。 わかりやすい例で言えば借入金の支払利息などが営業外費用としてここで引かれます。 中小企業経営において最も重視されてきたのがこの経常利益です。 たとえ本業が好調でも借入金の利息負担が重すぎれば会社として手元にお金が残らないからです。 「財務体質も含めた会社としての総合的な実力」を見るにはこの数字が一番の指標になります。
これら3つの利益を見ることで会社のどこに課題があるかが浮かび上がってきます。 例えば、粗利が低ければ商品力や価格設定そのものに問題があるかもしれませんし、粗利はあるのに営業利益が低い場合は生産性の低さが疑われます。 そして営業利益はあるのに経常利益が低いのであれば、借入過多などの財務の問題が見えてきます。 どこで利益が削られているかを知ることで次に打つべき手が何かを判断することができます。

事業計画書(5)
事業内容
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
今回の記事では「事業内容」の書き方について整理します。 優位性や他社との比較は次回とし、ここでは「事業内容はそもそもどう書くか」という点に絞ってまとめます。
まず自社が行っている、あるいはこれから行おうとしている事業について、簡単に説明する必要があります。 専門用語をできるだけ減らし、一言で言い表せるようにするのが理想です。 誰のどんな課題を解決する事業なのかをはっきり記載することが重要だと教えていただきました。
これらを一つのストーリーとして意識しながら書くことが大切です。 経営理念や事業の背景から続く流れを活かし、実際に誰にどのようなことを行い、どんな課題を解決していくのかが自然なストーリーとして表現できると読み手にとって理解しやすく説得力のある内容になります。
また、その事業が一度きりの取引による単発の売上なのか、サブスクリプションや保守契約のように継続的な売上を生むものなのかといった点も簡単に触れておくと良いようです。 ここでの説明が後に続く売上計画や資金計画につながっていきます。
さらに展開している事業がたくさんあったとしても、全体をひとことで表せる統一したキーフレーズを用意し、読み手に一言で伝わるようにしておく必要があります。 その一文を読めば、「この会社はこういう事業をしているのだな」とイメージできることを目指します。
事業内容のページは、読み手が一読して事業の全体像を思い描けるかどうかが勝負どころです。専門用語を抑えつつ一言で説明できる軸とストーリーを意識して整理していくことが、良い事業概要の説明ページになります。