
中小企業のための補助金・助成金(2)
補助金は減らされることもある
私は独立前にいくつかの企業に属し補助金・助成金申請を行っていました。 基本的に小さな会社ばかりでしたので開発業務も兼任です。 申請では技術説明とマーケティングと事業計画書を作り、実際採択されてからは開発業務をこなして各経費書類を相手企業と交渉して作り、最後には経費のエビデンスとして人件費に関する作業日報やら成果報告書を作成し担当者さんに申請し何度も何度も修正を繰り返しながらようやく補助金が交付されるという感じでした。
中小企業では当たり前の光景かもしれませんがこれが非常に大変なのです。 人に任せれるところは任せて開発業務に専念した方が確実に良いです。
私は過去、数百万円から数千万円の補助金を自社だけであったり、いくつかの企業を連携させたコンソーシアムなどで申請し裏方に徹しながらまとめて来ました。 しかし裏には大きな失敗があります。 この経験があったからこそ補助金・助成金に対しては思い入れがあるのかもしれません。
私があるベンチャー企業にいた頃、助成限度額が1,500万円で助成率が1/2の助成金を申請し採択を得ました。 しかし助成限度額が1,500万円ということは先に3,000万円使わなければならないということです。 当然、事前にそんな資金があるはずがないですから助成金の採択結果をもって融資を得るという計画で行っていました。 事業の業績は芳しくありませんでしたが、何とか申請は採択されるに至って非常に喜んでいたのもつかの間、すべての金融機関から融資を断られてしまったのです。
今思えばですが、その私が属していた企業がブラックになっていたんですね。 助成金審査もそこまで見抜けなかったのでしょう。 融資が得られないのでその開発は難航を極め、ほとんど実践できない状態でした。 何とか資金を作り少しずつ開発を行っていくという感じです。 補助金・助成金というのは実施期間が決められています。 多くは半年~2年なのですがその助成金は2年でした。 つまり2年が経過してしまうとその事業の経費であっても助成金が得られないのです。 実施計画の延長を申請しては危機を感じ、資金調達と開発を続ける日々でした。
期間終了時には何とか駆け込みで700万円発注と納品を済ませ、予定されていた納品物を作り最終的に900万円の事業経費分だけでも助成金をもらおうと事業完了の手続きを開始しました。しかし最終的に認められた助成事業額は200万円。 助成金はたったの100万円でした。 せっかく1,500万円の助成金をとったのに100万円しかもらえなかったのです。
理由はこうです。まず納品物が間に合ったので事業完了としては受け付けて頂けました。 しかし最後の700万円が分割で後払いにしていたので、この分の経費が対象外となりました。 支払いがどうしても間に合わなかったのです。 よって事前に処理していた200万円分だけが助成対象とみなされ、その半額の100万円の交付に至ったのです。
中小企業にはよくある話だそうです。 特に資金が無くて予定されている納品物を作ることが出来ず、事業自体を断念する企業が毎回あると伺いました。 補助金や助成金は採っただけでは事業はできず、そして最後に減らされてしまう可能性もあるのです。 せっかくのチャンスを活かせなず、何とも歯がゆい思いをしなければなりません。
まずは計画の段階で資金の手当てを付けておかなければ無駄な労力を使うことになります。 最悪でも自社で資金を用意できる企業でなければ、補助事業の遂行自体も難しいものとなります。

中小企業のための補助金・助成金(1)
補助金は資金の先出しが発生する
補助金・助成金といえば「国からお金をもらえる」とまず思いますが、ただお金がもらえるわけではありません。 補助金・助成金は行政の目的に沿っており、その効果が得られると想定される事業に対してその補助金の対象になる経費のうち定められた補助率・助成率を交付するというものであり、そのほとんどが精算払い(後払い)です。 つまり申請する事業の内うち一部経費を交付してもらえますが、受け取れるのは全ての経費を支払った後になるので一旦事業経費を全て負担しなければならないのです。
補助金と助成金の明確な違いはありませんが、中小企業が受けられる補助金・助成金では、
中小企業向け補助金 ・・・ 補助率 2/3~3/4
中小企業向け助成金 ・・・ 助成率 1/2
というのをよく見かけます。 補助率2/3というのは補助金1,000万円の場合は自社で先に1,500万円を使わなければならないのです。 助成率1/2なら2,000万円最初に使う必要があります。 そしてその経費資料等を審査し問題ないとされた経費に対してだけ補助金・助成金が支払われます。 つまり補助金・助成金は最初に手元にお金がなければできないのです。
これは行政の目的が経済を回すことにあるためです。 一部を負担して国内の経済循環を良くしようという意図があります。 特に最近は設備投資を促すものが多くあります。 補助金・助成金は税金から成り立っているものがほとんどなので、その税金を使って事業をするのですから採択された企業も資金は支出しなければならないのです。
ただし、最初に事業資金が無いから補助金・助成金を申請したいのだということはわかっているので、各施策の多くが「つなぎ融資」というものを用意しています。 採択された場合に補助事業・助成事業に対して融資が得られるというものです。 この存在により事業を遂行していけます。 補助金・助成金とは基本的には「申請をして採択されたなら融資を得て事業を行い、その一部を負担してもらえる。」というものなのです。

決算書(10)
個別注記表
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
個別注記表は貸借対照表や損益計算書に並んだ数字の前提条件を文章で説明する書類です。 表形式の数字だけではその数字がどのような基準で算出されたのか、または将来どのようなリスクがあるのかが見えません。 そのため決算書の信頼性を補完する重要な書類として、すべての会社に作成が義務付けられています。
中小企業においては「中小企業の会計に関する基本要領」に準拠していることを明記した上で具体的な会計方針を記載します。 例えば固定資産の減価償却は定率法と定額法のどちらで行っているのか、消費税の処理は「税抜」と「税込」のどちらを採用しているのか、といった内容です。 これらは利益の出方に影響を与えるためどの基準を選んでいるかを宣言することが決算書の透明性を高めることにつながります。
また数字の表には現れない見えないリスクや事実の記載も欠かせません。 具体的には自社の所有する不動産を銀行借入の担保に入れている状況や、他者の借金を肩代わりする約束(保証債務)の有無などです。 これらは今の時点では負債の数字として現れませんが、会社の将来を左右する大きな情報であるため文章で正しく補足する必要があります。
銀行などの外部機関はこの注記表を見て「一貫した基準で書類を作っているか」「隠れたリスクはないか」を厳密にチェックします。 つまり個別注記表は単なる決算書の付録ではなく、減価償却や消費税の処理一つひとつに至るまで自社の決算が適正であることを証明し、経営の誠実さを伝えるための非常に重要な書類といえます。

決算書(9)
株主資本等変動計算書
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
今回取り上げるのは貸借対照表、損益計算書に次ぐ第三の重要な財務諸表である「株主資本等変動計算書」です。 この書類は決算書全体のつながりを完全に理解するうえで決して欠かすことのできない書類です。
この株主資本等変動計算書は貸借対照表の「純資産の部」に記載されている項目が一会計期間の間にどのように変動したかを表す書類です。 平成18年に新会社法が施行された際、それまでの利益処分計算書が廃止され代わりに導入されたのがこの様式です。 貸借対照表はあくまで決算日時点での「残高」を示すものですが、前期の決算から当期の決算までの間に純資産が「なぜ増えたのか」「なぜ減ったのか」という変動の内容までは教えてくれません。 その変動理由を詳細に説明するためにこの書類が存在しています。
具体的にどの項目を見ればよいのでしょうか。 配当や増資などの大きな動きがない場合、記載されるのは「当期純利益」のみというシンプルな構成になります。 これは「前期の残高」に「当期の利益」が正しく加算され「当期の残高」になっていることを証明するもので、決算書の整合性を確認する基本となります。 その上で特殊な動きがあった場合には以下の項目に注目します。 一つ目は「剰余金の配当」です。 ここに記載があれば稼いだ利益を株主へ還元したことがわかります。 二つ目は「当期純損失」です。 赤字決算の場合はここを見れば前期までの累積黒字がどれだけ削られたか、あるいは累積赤字がどれだけ膨らんだかが一目でわかります。 三つ目は「新株の発行」です。 資金繰りのために増資を行った場合などはここに数値が入ります。
実務において銀行融資の審査や税務申告の場面ではこの変動計算書もチェックされます。 ここには経営者が稼いだ利益をどう残したか、あるいは発生した赤字や資金不足に対してどう対処したかという経営判断の履歴が明確に残るためです。 貸借対照表と損益計算書という二つの主要な決算書をつなぎ合わせ、お金の流れと蓄積、そして純資産の増減を証明する書類が株主資本等変動計算書です。

決算書(8)
損益計算書 売上総利益・営業利益・経常利益
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
損益計算書には全部で5つの利益が登場しますが、今回はその中でも経営判断をするうえで特に重要だと感じる、売上総利益、営業利益、経常利益の3つに絞ってその違いと見方を整理してみます。
まずは「売上総利益」についてです。 現場では「粗利(あらり)」と呼ばれることが多い項目で売上高から売上原価を差し引いて計算します。 これは商品やサービスを提供するために直接かかったコストと売値の差額を表しており、ここがプラスでないとそもそも商売として成り立っていないことになります。 この利益は会社の商品やサービスそのものにどれだけの付加価値があるかを示していると言えます。 もしここが低い場合は、薄利多売になりすぎていないか、あるいは仕入れなどの原価が高騰していないかを見直すきっかけになります。
次に「営業利益」です。 先ほどの粗利から商品を売るためにかかった経費である販売費及び一般管理費を引いたものです。 人件費や家賃、広告費などがこれにあたります。 これは文字通り会社が本業で稼ぐ力を表す数字です。 たとえ粗利がたくさんあっても経費を使いすぎていれば営業利益は残りません。 逆にこの営業利益がしっかりと出ていれば、その会社のビジネスモデルと運営体制は健全であると言えます。 金融機関が融資の審査をする際もこの「本業で利益を出せているか」という点は非常に重視されるポイントです。
3つ目が「経常利益」です。 本業の利益である営業利益に本業以外の財務活動による収支を加味したものです。 計算としては営業利益に営業外収益を足し、そこから営業外費用を引きます。 わかりやすい例で言えば借入金の支払利息などが営業外費用としてここで引かれます。 中小企業経営において最も重視されてきたのがこの経常利益です。 たとえ本業が好調でも借入金の利息負担が重すぎれば会社として手元にお金が残らないからです。 「財務体質も含めた会社としての総合的な実力」を見るにはこの数字が一番の指標になります。
これら3つの利益を見ることで会社のどこに課題があるかが浮かび上がってきます。 例えば、粗利が低ければ商品力や価格設定そのものに問題があるかもしれませんし、粗利はあるのに営業利益が低い場合は生産性の低さが疑われます。 そして営業利益はあるのに経常利益が低いのであれば、借入過多などの財務の問題が見えてきます。 どこで利益が削られているかを知ることで次に打つべき手が何かを判断することができます。