
決算書(5)
損益計算書
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)は一定期間における企業の経営成績を示す財務諸表です。 売上などの収益から、原価や各種費用を差し引き、最終的に利益(当期純利益など)がいくらになったのかを表します。 貸借対照表がある時点の財政状態(資産・負債・純資産)を示すものだとすれば、損益計算書は期間を通じた事業活動の結果を示す成績表だと言えます。
損益計算書の役割は黒字・赤字の確認にとどまらず、利益がどの段階で生まれどの段階で削られたのかを分解して示し、事業が継続的に利益を生み出せる構造になっているかを読み取れるようにすることにあります。 そのため損益計算書は上から下へ流れに沿って順番に読んでいきます。 段階ごとに意味が分かれているため流れで追うと理解しやすいことが多い諸表です。
基本的な流れは、売上高から始まり、売上に直接対応する原価を差し引いて売上総利益(粗利)を確認し、次に販売費及び一般管理費など日常的な事業運営に必要な費用を反映させて営業利益を把握します。 さらに受取利息・支払利息などの営業外収益・費用を加味して経常利益に至り、固定資産売却益・災害損失などの特別利益・特別損失を反映して税引前当期純利益を計算し、最後に法人税等を差し引いて当期純利益となります。 こうした段階的な利益の積み上げ構造こそが損益計算書の本質になります。
損益計算書を一枚の成績表として眺めるだけではなく事業活動の流れをそのまま写したものとして読むことができれば、数字は単なる結果ではなく次の判断に使える材料へと変わっていきます。

中小企業のための補助金・助成金(8)
完了検査から入金まで
補助金に採択され交付申請が通り交付が決定したらいよいよ事業の開始です。 しかし補助金はここからが本番です、事業をやりきる必要があります。補助事業の完了は、実績報告書と各証憑などを提出し完了検査を通過する必要があります。
完了検査は補助金によって一部変わりますがほぼ同じです。 補助金をもらうためには支払った各証憑が必要となります。 ここでその補助金の手引きをよく読み込んでおく必要があります。 例えばよく問題となるのはWeb注文で購入する場合です。 一般的な取引でだと「見積書」「注文書」「納品書」「請求書」が発生します。 これでも足りないのですが、Web注文ですと見積書や注文書が無い場合もありますので、それらのエビデンスとなるものを残しておく必要があります。 Web注文の場合は主に画面のスクリーンショットを保存するかメールで通知されるものを控えますが、画面のスクリーンショットを取り忘れると大変です。 不安な場合は各画面のスクリーンショットを保存しておくとよいでしょう。
また一般的な取引をしたとしても「注文請書」を発行しない場合が多いです。 また「支払いの証憑」も銀行振り込みでなくカード決済だった場合は「領収書」などを取得する必要があります。 これらも手引きを読み、抜けが無い様にしなければなりません。 一つでも証憑が抜けるとその項目に対して補助金対象外になってしまいます。 証憑のエビデンスは非常に重要なので注意を払っておきましょう。
完了検査は電子申請の場合だと現地検査が省略される場合がありますが、場合によっては現地検査が実施されます。 現地検査は現場に検査官がやってきて、開発物や納品物、そして証憑を一枚一枚確認していきます。 ここではすぐ証憑を出せるようにファイリングしておく必要があります。 現地検査は以前は必須だったのですが採択数が多い補助金などは最近は省略される傾向がありますので、少し楽になっています。 ただ不正が疑われている場合は最悪会計検査院が入りますのでそうならないように補助金関連の取り扱いは厳重注意が必要です。
完了検査が終われば通常は1か月程度で入金されます。 採択数が多い補助金によってはもう少し時間がかかることがありますが、最近は3週間くらいで入金されるようになっています。 入金が確認できれば補助金は完了となります。 ただし、5年間は報告義務があるので作業はまだ続きます。

決算書(4)
貸借対照表 自己資本比率
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表でいう「自己資本」は一般に「純資産の部」に計上される金額です(※中小企業の実務では純資産と自己資本はほぼ同じ意味で使われることが多いため、その前提で説明いたします)。 自己資本は現金残高そのものではなく会社が持っている資産全体から返さなければならない負債を差し引いた差額です。 出資によって自己資本が増えたとしても、現金は人件費や開発費、設備、売掛金などに変わっていくのが普通なので「資本金が大きい=手元資金が潤沢」という意味にはなりません。
自己資本の内訳は出資によって入ったお金が元になる資本金と資本準備金、そして事業での利益や損失の累積である利益剰余金です。 出資が入ったときその全額を資本金に入れる必要はなく、会社法上一定の範囲で資本金に組み入れない額を資本準備金として計上でき自己資本を構成します。 資本準備金に入れるは中小企業向けの補助金・助成金や税制優遇を意識する場面では有効な手段になることがあります。
自己資本比率はこの自己資本が総資産の中でどれだけの割合を占めるかを見る指標で、自己資本比率 ≒(純資産合計 ÷ 資産合計)× 100 で算出します。 自己資本比率が高いからといって「いざというときの現金が多い」とは限らないです。 中小企業では利益剰余金がマイナス(累損)になっていることも珍しくなく、赤字が続けばこのマイナスが膨らみ純資産(自己資本)は減少していきます。 純資産が少ない状態だと、赤字や回収が遅れたときなど債務超過が視野に入りやすく、金融機関や取引先が慎重になり追加融資や取引条件の調整が難しくなることがあるようです。 逆に利益剰余金がマイナスでも資本金や資本準備金が一定あり純資産がプラスを保てていれば、「まだ余力がある」と見なされやすいようです。 自己資本比率はそうした信用の度合いをざっくり掴む目安として捉えることができます。

中小企業のための補助金・助成金(7)
電子申請
最近実施される補助金は電子申請が多いです。 電子申請だと事務局側も大量の書類を管理しなくて済みますし申請側も大変楽になります。 締め切りの消印を気にしなくてよくなりました。 中小企業庁の補助金はGビズIDが共通ログインとして使用されています。 GビズIDは申請に少し時間がかかるので補助金申請を考えている方は早めに取得されたほうが良いでしょう。
電子申請では記録が残りいつでも閲覧できるので便利です。 申請した日時も記録されますし、その旨もメールで通知されますから正確に申請できたことがわかります。 また申請後においても差し戻し処理が全て記録されますので対応し忘れなどが無くなります。 各資料も電子データで添付する形になりますので印刷してファイリングする手間が省けるのが非常に助かります。
ただし、すべてが電子上のデータで出来るわけではありません。 証憑などは通常通り紙面で行っているものもあります。 それらはPDFにして添付する必要があります。 すべての証憑を電子化しなければならないので、特に契約書が発生しているときは少し不便さがあるかもしれません。 また申請サイトにログインする場合は多要素認証として携帯電話へのSMS送信や、GビズIDであれば専用アプリケーションによる認証が発生します。 小さな企業でしたら申請者が管理することもできますが、そこそこ大きな企業だとその認証を誰が行うかの問題も生じます。
電子申請は大変便利ではありますが新たに労力がかかることもあります。 とはいえ申請や事業完了後の処理などは格段に便利になっていますので、これからも便利な方法へ発展していっていただければと思います。

決算書(3)
貸借対照表 貸付金と借入金
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表を読むとき、貸付金と借入金は資金の動きが表に出やすいので押さえておくと全体が読みやすくなります。 貸付金は資産の部に出てきます。 会社が誰かにお金を貸していて将来回収できる前提の金額です。 ここで大切なのは、貸付金は「資産」ではあるものの現預金のようにそのまま使えるお金ではないという点です。 貸付金が大きい場合、資産の金額としては増えて見えますが手元の現金とは性質が違う項目が増えているという読み方になります。
一方、借入金は負債の部に出てきます。 会社が金融機関などから借りていて将来返済する前提の金額です。 借入金は短期借入金と長期借入金に分かれていることが多く、短期は原則1年以内に返済期限が来るもの、長期は1年以上先まで返済が続くもの、という整理です。 ここは金額の大小だけでなく短期と長期のどちらが厚いかを見ると、「返済期限が近い負債が多いのか、時間をかけて返す負債が中心なのか」という見え方になります。
この貸付金と借入金は、前回の「流動資産」と「流動負債」の読み方ともつながります。 短期借入金は流動負債に入るので短期借入金が多いほど「1年以内に出ていくお金」が増える側に寄ります。 逆に貸付金が流動資産に含まれている場合でも、内容によってはすぐに現金化できないことがあります。 その場合、流動資産の金額は大きく見えても「1年以内に入ってくるお金」としては見かけより弱い可能性があるという読み方になります。
貸借対照表は、右側は会社がどのような形で資金を持っているか、左側はその資金が期末時点で何に姿を変えているかを示しています。 ここで貸付金と借入金を押さえると数字の背景にある資金の流れが見えやすくなります。借入金を見ることで、どれくらいの金額を借りておりその中に返済期限が近いものがどの程度含まれているかが分かります。 一方で資産の側では、現預金のようにすぐ使えるものだけでなく貸付金のように現金として戻るまで時間がかかる性格のものがどれくらい含まれているかを確認できます。 こうした視点で眺めると貸借対照表は単なる項目の一覧ではなく、資金繰りの構造を写した表として読み取りやすくなります。