
事業計画書(2)
経営理念
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
出資を募る目論見書において経営理念は特に重要な要素になります。 事業計画書について教えていただいた代表からも「ここが一番重要だ」と繰り返し言われてきました。 経営理念は自社や事業がなぜ存在するのかどこを目指すのかという目的やビジョンを言語化したものであり、企業や事業を興す際の「軸」になります。 また事業を進めていく中でもその軸からブレていないかを確認するための拠り所となります。 これらは企業の存在意義や価値を示すものであり、その内容に共感や魅力を感じてもらえなければその先の事業計画書の細かな内容を読み進めてもらえないかもしれません。
経営理念は「事業計画書に書くための項目」というだけのものではなくそもそも会社を経営していくうえで欠かせない土台です。 経営者が交代しても引き継がれるべきものであり社員はその理念を拠り所として判断し日々の行動を選択していくことができます。 意思決定に迷ったときに立ち返る基準でもあり短期的な利益や目先の事情に振り回されないためのガイドラインにもなります。
また経営理念は対外的なコミュニケーションにおいても重要な役割を果たします。 自社が「どういう価値観を持ち、何を目指している会社なのか」を端的に示すことで、取引先やパートナー候補に対して自社の姿勢を明確に伝えるツールになります。 特に社員との間で「何を価値とし、どの方向を目指しているのか」が共有されていることは事業を推進していくうえで非常に大きな力となります。 同じ理念を共有していることで個々のメンバーの行動が自然とそろい、事業計画で描いたストーリーを現実のものにしていく推進力が生まれます。

事業計画書(1)
事業計画書には何を書くか
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書は小規模な企業ほど社長や現場責任者が自ら作成する場面が多く、起業家にとっては避けて通れない資料です。 経験がないと「何を書けばよいのか」に迷いがちですが、事業計画書は本質的に①自社の製品・サービスの内容②想定する市場とユーザー③事業の展開方法を相手に伝わる形でまとめます。 目論見書であれば資金計画や資本政策、成長性の論証が重要になり、共同事業の提案であれば相手企業にとっての具体的なメリット提示が要点となります。
事業計画書の目的は相手によって変わります。 たとえば資金調達を目的とする場合は十分な市場性と成長余地があり、スケジュールと資金計画が実行可能であると相手に判断してもらうことが必要です。 読み手は数多くの計画書に目を通してきたプロであり、あなたや会社、製品・サービスのことを知りません。 その相手に「この事業には可能性がある」と感じてもらうための橋渡しをするのが事業計画書の役割です。
作成は外部委託も可能ですがベースは必ず自分で作るべきだと考えます。 計画書は判断材料の一つに過ぎず、最終的に評価されるのはあなた自身です。 自らの言葉で計画を把握し熱意と一貫したストーリーで説明できなければ、どれほど体裁のよい資料でも説得力は生まれません。 特にストーリーが大切です、このことについては代表から何度も教えていただいています。 計画の起点には企業理念があり「なぜこの事業を志すのか」そして「相手はどんな価値を得るのか」を流れとともに明確にして相手が容易にイメージできるようにすることが事業計画書づくりの核心です。
次回以降は実際に事業計画書に盛り込むべき項目を順に解説していきます。

事業計画書(10)
資本政策
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書にはいくつかの使い道がありますが出資を募るための目論見書として使う場合は資本政策は重要な項目になります。 目論見書における資本政策は細かな株式設計や複雑な計算を示すことが目的ではありません。「この事業にお金を出すと、どのような関係になるのか」を相手に誤解なく理解してもらうための説明です。
出資者が知りたいのは事業の主導権がどこにあり意思決定がどのように行われるのかという点です。 加えて出資によって自分がどの程度の影響を持つのか、どこまで関与できる(あるいは関与しない)のかも重要になります。 誰が経営の責任を持ち続けるのか出資者は経営にどこまで関与する想定なのか。その前提を明確に示すことが目論見書の資本政策の役割です。
そのため目論見書では、現在の株主構成と出資後にどういう状態を想定しているかというイメージを示せば十分です。 最初から完成された資本政策を提示する必要はありません。 むしろ現時点での考えを正直に示してどのような前提で事業を進めようとしているのかを共有することが信頼につながります。 資本政策は条件交渉のための武器ではなく相互理解のための説明資料です。

事業計画書(9)
事業内容 財務諸表
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書で最後に避けて通れないのが数字の説明です。 数字は単に「売上はいくら、利益はいくら」と結論だけを書くことではありません。 販売計画で立てた前提を基準にし「なぜその売上になるのか」を根拠をもって示し、その結果として会社の利益と資金繰りがどう推移するのかを説明します。 この数字は計画全体が現実に回るかどうかを判断するための材料です。
複数年度の事業計画では財務三表がそれぞれ違う役割を持ちます。 損益計算書(PL)は事業がどうやって儲けを生むかを表します。 販売計画で見立てた顧客数、単価、成約率、継続率などの前提を売上に落とし込み、そこから原価や人件費、販管費を積み上げ、利益がどのように生まれるのかを示します。 単年度だけでは成長の道筋が見えにくいため基本形としては三年から五年程度の複数年度で作成し、どの時点で単年度黒字化するのか、どの費用が増えるのかを説明できる形にします。 近年は外部資金を使う計画では三年程度で単年度黒字化の見通しを求められる場面も多く黒字化の時期を曖昧にしないことが重要です。
貸借対照表(BS)はある時点で会社が何を持ち、何を背負い、資本がどれだけあるかを示します。 本来は非常に重要な表ですが、実務では計画の骨子を示す段階ではBSを簡略化し、後述するキャッシュフロー計画と整合が取れる範囲で扱うことも少なくありません。
そして複数年度計画で最も重視されるのがキャッシュフロー(CF)です。 利益が出ていても現金が尽きれば事業は止まります。 逆に赤字でも手元資金が確保できていれば次の打ち手を打てます。 CFでは売上がいつ入金されるか、費用がいつ支払われるか、設備投資や開発投資でどのタイミングに現金が出ていくかを扱います。 さらに出資(増資)や借入、返済といった資金調達の動きもここに入ります。 実務で作るCFには、期首の現金残高、当期の増減、期末の現金残高が明示され翌期へ繰り越されていきます。 「この計画は資金ショートせずに回るのか」「どの時点で追加の資金が必要になるのか」がはっきり提示します。
もう一つ、計画の説得力を上げる指標として損益分岐点があります。 固定費と変動費の構造から「売上がどの水準を超えると黒字になるのか」を示すものです。損益分岐点は単に黒字赤字を判定するためではなく、どれだけ売上が落ちても耐えられるか、逆にどこまで売上を積めば利益が出るかという事業の耐久力を測れます。 売上計画と費用計画が結び付いているかを確認する意味でも有効です。
基本形として押さえるべきことは単純で、販売計画で置いた前提から売上を根拠をもって導き、その売上を複数年度のPLに落とし込み、さらに資金の流れとしてCFで追いかけることです。 事業計画書は根拠のある前提から数字を組み立て、計画が現実に回ることを説明するための資料となります。

事業計画書(8)
事業内容 販売計画
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
販売計画は後に続く損益計画(PL)の売上を「説明できる数字」にするためのパートです。 PLに金額だけが書かれていてもそれがどの事業セグメントの「誰に、何を、いくらで、どれだけ売る」前提なのかが見えなければ数字は願望として扱われます。 したがって販売計画ではセグメントごとに売上の算出式を示し、その式を構成する前提条件と根拠を添えることが必要です。
ただし現実には、特に初期段階の計画ほど「数量、単価、成約率、継続率」などの多くが想定になります。 重要なのは想定を避けることではなく、確定している材料と想定部分を切り分け、想定には妥当性の理由を与えることです。 既存契約や発注見込み、過去実績、具体的な引合い、顧客ヒアリングなど、根拠として提示できる材料は明確に書きます。 一方で材料が不足する部分は、類似事例、テスト販売やPoCの結果、営業の状況などから仮説を記載し、なぜその数値になるのかを購買プロセスや導入障壁、意思決定構造などとと結び付けて説明できれば良いです。 読み手が知りたいのは当たるか外れるか以前に、数字がどう組み立てられ、どこが想定なのかということです。
そのためには売上を分解して示すのが有効です。 対象顧客数、成約率、平均単価、継続率といった変数に分け、売上がそれらの掛け算として表せる形にしておけば読み手は前提を見て検算できますし「どの変数が過大なのか」「どこを改善すべきか」も検討できます。 想定が多い場合でも式と前提が見えるだけで計画は十分検討可能な形になります。
また販売計画では商流の想定を必ず置きます。直販か代理店かといった販売体制に留まらず、誰が支払者で誰が契約主体で誰が請求し入金はいつ回収され粗利はどこに残るのかまで明確にすると説得力が増します。 すべてを確定できないとしても、現時点での想定を書き、その想定を採る理由と想定が変わった場合に影響を受ける項目を示すと、読み手は前提の妥当性を判断できます。
販売計画は長文で語る場所ではありません。 1~2枚程度に、セグメント別の算出式、前提条件、根拠、商流の想定を簡潔に並べ、後段の財務計画へ橋をかけることが目的です。 完璧な未来予測ではなく現時点の材料から無理なく組み立てられた計算と仮説の置き方のルールが読み手の信頼を作ります。 そうして初めて事業計画書の中で最も重要な売上計画が信頼に足る形になり、以降の財務計画も意味を持ちます。