
決算書(10)
個別注記表
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
個別注記表は貸借対照表や損益計算書に並んだ数字の前提条件を文章で説明する書類です。 表形式の数字だけではその数字がどのような基準で算出されたのか、または将来どのようなリスクがあるのかが見えません。 そのため決算書の信頼性を補完する重要な書類として、すべての会社に作成が義務付けられています。
中小企業においては「中小企業の会計に関する基本要領」に準拠していることを明記した上で具体的な会計方針を記載します。 例えば固定資産の減価償却は定率法と定額法のどちらで行っているのか、消費税の処理は「税抜」と「税込」のどちらを採用しているのか、といった内容です。 これらは利益の出方に影響を与えるためどの基準を選んでいるかを宣言することが決算書の透明性を高めることにつながります。
また数字の表には現れない見えないリスクや事実の記載も欠かせません。 具体的には自社の所有する不動産を銀行借入の担保に入れている状況や、他者の借金を肩代わりする約束(保証債務)の有無などです。 これらは今の時点では負債の数字として現れませんが、会社の将来を左右する大きな情報であるため文章で正しく補足する必要があります。
銀行などの外部機関はこの注記表を見て「一貫した基準で書類を作っているか」「隠れたリスクはないか」を厳密にチェックします。 つまり個別注記表は単なる決算書の付録ではなく、減価償却や消費税の処理一つひとつに至るまで自社の決算が適正であることを証明し、経営の誠実さを伝えるための非常に重要な書類といえます。

中小企業のための補助金・助成金(1)
補助金は資金の先出しが発生する
補助金・助成金といえば「国からお金をもらえる」とまず思いますが、ただお金がもらえるわけではありません。 補助金・助成金は行政の目的に沿っており、その効果が得られると想定される事業に対してその補助金の対象になる経費のうち定められた補助率・助成率を交付するというものであり、そのほとんどが精算払い(後払い)です。 つまり申請する事業の内うち一部経費を交付してもらえますが、受け取れるのは全ての経費を支払った後になるので一旦事業経費を全て負担しなければならないのです。
補助金と助成金の明確な違いはありませんが、中小企業が受けられる補助金・助成金では、
中小企業向け補助金 ・・・ 補助率 2/3~3/4
中小企業向け助成金 ・・・ 助成率 1/2
というのをよく見かけます。 補助率2/3というのは補助金1,000万円の場合は自社で先に1,500万円を使わなければならないのです。 助成率1/2なら2,000万円最初に使う必要があります。 そしてその経費資料等を審査し問題ないとされた経費に対してだけ補助金・助成金が支払われます。 つまり補助金・助成金は最初に手元にお金がなければできないのです。
これは行政の目的が経済を回すことにあるためです。 一部を負担して国内の経済循環を良くしようという意図があります。 特に最近は設備投資を促すものが多くあります。 補助金・助成金は税金から成り立っているものがほとんどなので、その税金を使って事業をするのですから採択された企業も資金は支出しなければならないのです。
ただし、最初に事業資金が無いから補助金・助成金を申請したいのだということはわかっているので、各施策の多くが「つなぎ融資」というものを用意しています。 採択された場合に補助事業・助成事業に対して融資が得られるというものです。 この存在により事業を遂行していけます。 補助金・助成金とは基本的には「申請をして採択されたなら融資を得て事業を行い、その一部を負担してもらえる。」というものなのです。

事業計画書(7)
事業内容 事例・ユースケース
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書における事例・ユースケースは、事業が現場で成立するか同様の組織へ展開できるかを示すための項目です。 読み手が知りたいのは「誰が、どの状況で何に困り、導入後に何がどう変わるのか」です。 したがって前提条件・課題・解決の流れを具体的に整理して記載します。
まず想定する業界と企業像を明確にします。 業界、企業規模、導入主体(誰が使うのか)を具体化し適用範囲を示します。 実名は不要ですが「中堅製造業で複数拠点を運営する企業」など状況を想像できる表現にします。
次に現場で起きている課題を書きます。 例えば検査業務を行う現場で、手作業の記録が残り情報が散在しているため集計や報告のたびに確認・転記・整合確認が発生し手戻りが起きる状態が発生している等です。 増えている作業や詰まっている工程を具体的に示します。
そのうえで解決後の運用の変化を示します。 「誰が、いつ、何を行い、何が不要になるか」を書きます。 記録の扱いが統一され、入力・確認・集計が標準化されることで提出物作成や確認手順が簡略化されるといった変化を具体化します。 利用者の負担が増えないことも併記すると導入可能性が伝わります。
最後に横展開と波及効果を述べます。同様の課題が「複数拠点・複数部署で記録と報告が発生する組織」に広く存在すること、導入が広がれば手順や提出物の標準化が進み調整コストが下がることを簡潔に整理します。
事例・ユースケースは、「対象」「課題」「導入後の変化」「展開・波及」を運用をイメージできる形で書くことが重要です。

決算書(9)
株主資本等変動計算書
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
今回取り上げるのは貸借対照表、損益計算書に次ぐ第三の重要な財務諸表である「株主資本等変動計算書」です。 この書類は決算書全体のつながりを完全に理解するうえで決して欠かすことのできない書類です。
この株主資本等変動計算書は貸借対照表の「純資産の部」に記載されている項目が一会計期間の間にどのように変動したかを表す書類です。 平成18年に新会社法が施行された際、それまでの利益処分計算書が廃止され代わりに導入されたのがこの様式です。 貸借対照表はあくまで決算日時点での「残高」を示すものですが、前期の決算から当期の決算までの間に純資産が「なぜ増えたのか」「なぜ減ったのか」という変動の内容までは教えてくれません。 その変動理由を詳細に説明するためにこの書類が存在しています。
具体的にどの項目を見ればよいのでしょうか。 配当や増資などの大きな動きがない場合、記載されるのは「当期純利益」のみというシンプルな構成になります。 これは「前期の残高」に「当期の利益」が正しく加算され「当期の残高」になっていることを証明するもので、決算書の整合性を確認する基本となります。 その上で特殊な動きがあった場合には以下の項目に注目します。 一つ目は「剰余金の配当」です。 ここに記載があれば稼いだ利益を株主へ還元したことがわかります。 二つ目は「当期純損失」です。 赤字決算の場合はここを見れば前期までの累積黒字がどれだけ削られたか、あるいは累積赤字がどれだけ膨らんだかが一目でわかります。 三つ目は「新株の発行」です。 資金繰りのために増資を行った場合などはここに数値が入ります。
実務において銀行融資の審査や税務申告の場面ではこの変動計算書もチェックされます。 ここには経営者が稼いだ利益をどう残したか、あるいは発生した赤字や資金不足に対してどう対処したかという経営判断の履歴が明確に残るためです。 貸借対照表と損益計算書という二つの主要な決算書をつなぎ合わせ、お金の流れと蓄積、そして純資産の増減を証明する書類が株主資本等変動計算書です。

中小企業のための補助金・助成金(10)
補助金が公募される時期
補助金は公募される時期がだいたい決まっています。 例えば中小企業庁などの補助金では国家予算に流れがありますから、その流れに沿って経緯を見守ることができます。 おおよそ夏くらいに概算要求が各省庁から財務省に出されます。 そこでどんな補助金が計画されているかがわかります。 財務省を通過して予算案が出来上がるのが12月頃です。 その後、国会にて予算が承認され1,2月頃に補助金の事務局が公募されます。 事務局が決まればその後は2,3月に補助金公募が開始されます。 この場合は補正予算の補助金ですね。通常の補助金5月頃に公募開始されます。
また上記以外に年に何回も公募されているものもあります。 ものづくり補助金や事業再構築補助金(新事業進出補助金に変わりました)などです。 こういった補助金は公募→締切→採択流れで、3~4か月ごとに繰り返し公募されています。 比較的複数年同じ補助金が予算化されているものもあれば単年度で終わるものもあります。 同じ補助金が来年もあるとは限りません。 狙っている補助金があるならば早めの段階で公募できるように準備しておきましょう。
補助金は政治の流れに大きく影響をうけます。 いまなら所得倍増を掲げているのでそれを満たすような企業が採択されます。 特に12月~1月は政治・国会の状況を観察しておくと次に出てくる補助金を把握しやすくなります。