
決算書(7)
損益計算書 営業外収益・営業外費用と特別利益・特別損失
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
損益計算書を見ると営業利益や経常利益までは理解できても、その下に出てくる営業外収益・営業外費用、特別利益・特別損失になると分かりにくくなる方は多いです。 営業外収益・営業外費用は売上を生む本業そのものではなく、本業以外の活動や取引に伴って生じる損益です。 利息や為替差損益などが代表例で助成金や補助金も営業外収益として表示されることがありますが、制度の性質や会計方針、表示方法によって扱いが変わることもあるため最終的には顧問税理士等に確認するのが安全です。
一方、特別利益・特別損失は毎年は起きない前提で考える一時的で例外的な出来事による損益です。 災害対応や大きなトラブル、訴訟対応、事業撤退に伴う整理などが典型です。 特別損失として処理することは、損失を消したり、都合よく数字を整えたりすることではありません。 特別損失として計上すればその分だけ当期の利益は減ります。
それでも特別損失として分けて考える意味は本業の状態を見誤らないためにあります。 一度きりの損失を営業費用の中に混ぜてしまうと本業が悪かったのか、たまたま起きた出来事なのかが見えにくくなります。 特別損失として切り分ければ本業の成績がどうだったのかを判断しやすくなります。 特別損失は何が例外で何が通常かを整理し次の判断を誤らないための区分だと考えると、決算書の見え方はずっとシンプルになります。

事業計画書(10)
資本政策
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書にはいくつかの使い道がありますが出資を募るための目論見書として使う場合は資本政策は重要な項目になります。 目論見書における資本政策は細かな株式設計や複雑な計算を示すことが目的ではありません。「この事業にお金を出すと、どのような関係になるのか」を相手に誤解なく理解してもらうための説明です。
出資者が知りたいのは事業の主導権がどこにあり意思決定がどのように行われるのかという点です。 加えて出資によって自分がどの程度の影響を持つのか、どこまで関与できる(あるいは関与しない)のかも重要になります。 誰が経営の責任を持ち続けるのか出資者は経営にどこまで関与する想定なのか。その前提を明確に示すことが目論見書の資本政策の役割です。
そのため目論見書では、現在の株主構成と出資後にどういう状態を想定しているかというイメージを示せば十分です。 最初から完成された資本政策を提示する必要はありません。 むしろ現時点での考えを正直に示してどのような前提で事業を進めようとしているのかを共有することが信頼につながります。 資本政策は条件交渉のための武器ではなく相互理解のための説明資料です。

決算書(6)
損益計算書 販管費
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
販売費及び一般管理費(販管費)とは会社が本業を行うために必要となる売上原価以外の費用の総称です。 商品やサービスを直接つくるための費用が売上原価であるのに対し、販管費は「売るため」「会社を回すため」にかかる間接的なコストと考えると分かりやすいです。 広告宣伝費や営業活動にかかる交通費、事務所の家賃や通信費、管理部門の人件費などがこれに含まれます。
販管費は名前の通り販売費と一般管理費に分けられますが、実務上はそこまで厳密に区別しなくても構いません。 重要なのはそれが売上原価なのかそれ以外の費用なのかという点です。 特に人件費は混乱しやすい部分ですべてが販管費になるわけではありません。 製造業であれば製品をつくる現場の作業者の人件費は売上原価に含まれます。 一方で事務・管理部門の人件費は販管費になります。 サービス業やIT業でも同様で、サービス提供に直接関わる人の人件費は売上原価、それ以外は販管費と整理されます。
損益計算書では販管費は売上総利益の下に記載されます。 売上高から売上原価を差し引いた売上総利益から販管費を引いた残りが営業利益です。 この営業利益は本業そのものがどれだけ効率よく回っているかを見るための重要な数字になります。 売上は伸びているのに営業利益が出ない場合、その原因の多くは販管費にあります。
中小企業にとって販管費を見る意味は大きいです。 売上を伸ばすことはもちろん重要ですが同時にどれだけのコストをかけて売上を維持しているのかを把握する必要があります。 販管費が増えている理由が将来につながる投資なのか単に固定費が膨らんでいるだけなのかを見極めることが経営判断につながります。 損益計算書の販管費は会社の日常の姿そのものを映す数字ですので、細かい勘定科目にとらわれず「売上を支えるために何にお金と人を使っているのか」という視点で眺めてみることが大切だと感じています。

事業計画書(9)
事業内容 財務諸表
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書で最後に避けて通れないのが数字の説明です。 数字は単に「売上はいくら、利益はいくら」と結論だけを書くことではありません。 販売計画で立てた前提を基準にし「なぜその売上になるのか」を根拠をもって示し、その結果として会社の利益と資金繰りがどう推移するのかを説明します。 この数字は計画全体が現実に回るかどうかを判断するための材料です。
複数年度の事業計画では財務三表がそれぞれ違う役割を持ちます。 損益計算書(PL)は事業がどうやって儲けを生むかを表します。 販売計画で見立てた顧客数、単価、成約率、継続率などの前提を売上に落とし込み、そこから原価や人件費、販管費を積み上げ、利益がどのように生まれるのかを示します。 単年度だけでは成長の道筋が見えにくいため基本形としては三年から五年程度の複数年度で作成し、どの時点で単年度黒字化するのか、どの費用が増えるのかを説明できる形にします。 近年は外部資金を使う計画では三年程度で単年度黒字化の見通しを求められる場面も多く黒字化の時期を曖昧にしないことが重要です。
貸借対照表(BS)はある時点で会社が何を持ち、何を背負い、資本がどれだけあるかを示します。 本来は非常に重要な表ですが、実務では計画の骨子を示す段階ではBSを簡略化し、後述するキャッシュフロー計画と整合が取れる範囲で扱うことも少なくありません。
そして複数年度計画で最も重視されるのがキャッシュフロー(CF)です。 利益が出ていても現金が尽きれば事業は止まります。 逆に赤字でも手元資金が確保できていれば次の打ち手を打てます。 CFでは売上がいつ入金されるか、費用がいつ支払われるか、設備投資や開発投資でどのタイミングに現金が出ていくかを扱います。 さらに出資(増資)や借入、返済といった資金調達の動きもここに入ります。 実務で作るCFには、期首の現金残高、当期の増減、期末の現金残高が明示され翌期へ繰り越されていきます。 「この計画は資金ショートせずに回るのか」「どの時点で追加の資金が必要になるのか」がはっきり提示します。
もう一つ、計画の説得力を上げる指標として損益分岐点があります。 固定費と変動費の構造から「売上がどの水準を超えると黒字になるのか」を示すものです。損益分岐点は単に黒字赤字を判定するためではなく、どれだけ売上が落ちても耐えられるか、逆にどこまで売上を積めば利益が出るかという事業の耐久力を測れます。 売上計画と費用計画が結び付いているかを確認する意味でも有効です。
基本形として押さえるべきことは単純で、販売計画で置いた前提から売上を根拠をもって導き、その売上を複数年度のPLに落とし込み、さらに資金の流れとしてCFで追いかけることです。 事業計画書は根拠のある前提から数字を組み立て、計画が現実に回ることを説明するための資料となります。

決算書(5)
損益計算書
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)は一定期間における企業の経営成績を示す財務諸表です。 売上などの収益から、原価や各種費用を差し引き、最終的に利益(当期純利益など)がいくらになったのかを表します。 貸借対照表がある時点の財政状態(資産・負債・純資産)を示すものだとすれば、損益計算書は期間を通じた事業活動の結果を示す成績表だと言えます。
損益計算書の役割は黒字・赤字の確認にとどまらず、利益がどの段階で生まれどの段階で削られたのかを分解して示し、事業が継続的に利益を生み出せる構造になっているかを読み取れるようにすることにあります。 そのため損益計算書は上から下へ流れに沿って順番に読んでいきます。 段階ごとに意味が分かれているため流れで追うと理解しやすいことが多い諸表です。
基本的な流れは、売上高から始まり、売上に直接対応する原価を差し引いて売上総利益(粗利)を確認し、次に販売費及び一般管理費など日常的な事業運営に必要な費用を反映させて営業利益を把握します。 さらに受取利息・支払利息などの営業外収益・費用を加味して経常利益に至り、固定資産売却益・災害損失などの特別利益・特別損失を反映して税引前当期純利益を計算し、最後に法人税等を差し引いて当期純利益となります。 こうした段階的な利益の積み上げ構造こそが損益計算書の本質になります。
損益計算書を一枚の成績表として眺めるだけではなく事業活動の流れをそのまま写したものとして読むことができれば、数字は単なる結果ではなく次の判断に使える材料へと変わっていきます。