90年代にエントリークラスのプリメインアンプで金字塔を立てたデノンPMA-390、その4世代目にあたるミレニアム記念のPMA-390Ⅳ(2000年発売、定価4万円)です。
PMA-390は1991年に発売されるや2017年まで後継機を出し続けたスーパーロングセラーのエントリークラスのプリメインアンプ、これほどまでの長期間シリーズ化されたプリメインアンプは他に見当たりません。
本機はその4世代目にあたり各種のチューニングが施されています。
初号機PMA-390がセレクター故障で使えなくなったのをきっかけに、代替え機として購入し長期間寝室用のサブシステムとして使っていました。
デノン PMA-390Ⅳ

周波数特性は5Hz~100KHzとこれ以上ないという程のワイドレンジで、定格出力は8Ωで50Wですが4Ωでは100Wと出力段の安定力と強力さを裏付けています。
デザインと色調はデノンのミドルクラスのフラッグシップアンプPMA2000を彷彿させるもので、このデザインとシャンパンゴールド色は多くのオーディオ初心者の心を鷲掴みにしました。
音出しした瞬間、リファレンススピーカーにD-77MRXを使っていたせいなのかおそろしく愉音に驚きます、中高音域の張り出しもシャープさも申し分ありません。
低音域もしっかりと出ており、これは完全にエントリークラスの音色ではないです。
サックスやボーカルも心地良く響きます、嫌みのない音色とはこういう音だと思います。
安定感が有るというか、価格からは考えられないほどの質感を感じます。
PMA-390シリーズは中古市場において継続的に高値で取引されています、26年間というロングセラーの金字塔を立てただけのことはあります。
エントリークラスながらもサブどころかメインでも充分に使える実力派です、個人的にオーディオ道楽入門者にはお薦めのシリーズです、最終後継機のPMA-390REが製造中止となった瞬間に390の全機種の中古価格が高騰しました。
次世代後継機としてPMA-600シリーズが誕生しています、PMA-600もロングセラーを続ける気配が既に漂っています。
常用システムのアンプが突然故障しても、予備の一台としてこういうプリメインアンプの存在があると安心です。
オンキョーが世にVLデジタルという独自方式で製品化したハイファイデジタルアンプのA-1VL(2004年発売、定価16.8万円)ですが、翌年そのエッセンスを詰め込みミニコンポサイズにしてトーンコントロールなどを追加し更にコストダウンさせたVLデジタルアンプがインテック275シリーズとして誕生します。
それが本機オンキョーのA-933(2005年発売、定価8万円)です、シーリングパネルの採用などデザイン的にはハイコンポの秀作A-922Mの流れを汲んでいます。
その4年後にフルサイズコンポのVLデジタルアンプA-5VLが同価格で誕生し、スペック的は本機とほぼ同じです。
その意味では、本機A-933に比べてA-5VLは極めてコストパフォーマンスが高いと言えます。
オンキョー A-933(写真下)
上に乗っているのは同シリーズのCDプレーヤーであるオンキョーC-733

A-933のシーリングパネルを開いた状態

さて、肝心の音質ですがサイズからは想像できないほど完成度が高いです、ただA-5VLと聴き比べてしまうとA-5VLの方がバランスが取れた上品な音色がします。
また、コンビとなるCDプレーヤーもC-733はCD専用ですが、同じ価格でA-5VLのコンビのC-S5VLはSACD対応です、コンビのCDプレーヤーも4年で高スペックに変貌してしまうのです。
とはいえ、初期の熟していないVLデジタルの鮮度の高い音色を後世に残しているA-933は、ある意味での重要な秀作と呼んでも過言ではないでしょう。
中高音域のシャープさは耳あたりも悪くなく、特にフュージョンでは最高の音色で愉しめます。
なにせA-1VLのエッセンスを引き継いで価格は半額です、当時としてはかなりコストパフォーマンスが高い製品だったと言えます。
じっくりと聴き込むと言うよりもリビングにそっと置いて聴き流し用に用いると全く気にならないストレスフリーの音色で安心感があります。
C-733とスピーカーにD-212EXなどと組ませて20万円強、リビング用のサブシステムとしては文句無しのハイスペックコンポとなります。
やはりサブシステムでもこのクラスになると、それなりの音色で安心して愉しめるでしょう。
真空管アンプで名を馳せ音作りでは定評のある日本のニューブランドであるトライオードがトランジスタアンプも作れるんだと真価を発揮させ創ったレアなアンプ、それがトライオードFuture2000(2000年発売、定価7万円)です。
トライオード Future2000(一番上)
オンキョーのハイファイデジタルアンプA-5VL(一番下)と音質を比較中

極めてシンプルな設計のアンプで、入力セレクタとアッテネーターが付いたパワーアンプと言ってもよい代物です。
ところが音出し一番、ストレートにドスンと押し出してくる快音にはビックリしました。
何の味付けも無しでCDプレーヤーにヘッドフォンを繋いで聴くのとほぼ同じ音色がします、これは真に「増幅する導線」概念そのものを地で行くアンプだと思います。
低音域も締まっており申し分ありません、そのカチッとした安定の低音域にシャープな中高音域が綺麗に乗るのですから心地良いに決まっています。
こんな曇りの無いスカッとした音のするアンプはそうそう出会えません、音色的には私個人的に名機の太鼓判を押します。
人によってはこういうストレートな音色を「荒っぽい」と評価するのですから、本当にオーディオの評価は難しいです、個人の好みというバイアスがどうしてもかかってしまいます。
トライオードが、「真空管だけではなく真面目にトランジスタでアンプを作るとこうなる」と言っているような存在感を露骨に出しています。
作りも極めてしっかりしており、フロントパネルの厚みといいダイキャストのハンドルも贅沢な作りをしています。
私的な趣向ですが、こういったストレートに押し出してくる音色のアンプは入力直結というスペックをそのまま活用して、AVアンプのフロント出力の音質改善用パワーアンプとして使ってみたい気がします。
このまま素直な使い方ですと、どうしても聴き入ってしまい他の事ができない状態になります、それほどはっとする愉音なのです。
オーディオファンなら是非一度は聴いてほしい音色です、アンプの原点がここに在ります。
1990年代にデノンはPMA-S1というハイエンドアンプを誕生させ、その技術をミドルクラスに活かしたPMA-2000によってアンプキングの座をサンスイから奪い取ります。
そんなデノンが誕生させたハイファイデジタルアンプがPMA-CX3(2006年発売、定価12万円)です。
コンビとなるSACDプレーヤーのDCD-CX3(2006年発売、定価12万円)とセットで買われ、人気を博しました。
尚、2年後にPMA-CX3とDCD-CX3を合体させたSACDレシーバーのRCD-CX1(2008年発売、定価17万円)があります。
この3台は、今もなお人気があり中古価格も約半額の高値止まりとなっています。
デノン PMA-CX3

音質は、ハイファイデジタルでもデノンだと解る音作りで一言で言うと癖が無い音色です。
低音域のもたつき感は否めませんがトータルでは深い音域を感じます、こういった音色はジャズやロックファンには好まれないかもしれません、クラシックやバロック音楽などを聴き込むにはストレスが無く最適な音色だと感じます。
ガンガン鳴らし込んで聴くよりも、音楽の有る静かで贅沢な空間演出向きの音色だと思います。
スタイルも丸みを持たせた優しい感じがしますし、大きさも他のハイファイデジタルアンプに比べると小型なのでリビングや寝室に置いても違和感が無いでしょう。
アンプとSACDプレーヤーで24万円、小型ブックシェルフスピーカーを入れて40万円弱、リビングなどにこういった質の良いおしゃれなオーディオセットをさりげなく置いて音楽を愉しむ、なんとも贅沢な演出ができるアンプだと思います。
合わせるスピーカーは、デザイン的にも音色的にもヨーロッパブランドのDALIなどがお奨めです、この時代のデノンはヨーロピアンサウンドを謳っていますので文句無しで合うでしょう。
難点を言うと、液晶表示パネルが赤オレンジ色ですがちょっと暗くて意味が無いと感じることも在ります。
機械的な存在感を無くすのと、ボリュームつまみの木目調のリングとのデザイン性でこういった仕様になったのだとは思いますがちょっと工夫がほしいところです。
デジタル全盛時代に、オンキョーは独自のVLデジタルというデジタル増幅回路を開発します。
当初はAVアンプへの搭載でしたが、A-1VLを皮切りにハイファイアンプへ応用して行きます。
そのフラッグシップと言えるA-1VLの後継機であるオンキョーのハイファイデジタルアンプA-5VL(2009年発売、定価8万円)です。
オーディオ道楽復活直後、買いたいアナログアンプが無い中で見つけたアンプの一つです。
オンキョー A-5VL

オンキョー独自のVLデジタルに加えて、192Khz/24bitという高性能なバーブラウンDACを搭載しています。
是非、CDプレーヤーとは光デジタルかデジタルコアキシャルで接続して、更にソースダイレクトモードで再生して欲しいです。
その音質たるや全ての帯域で極めてレスポンシビリティが高く、まさに軽快そのものです。
特にハット系ドラムの音色は信じられないほど金属質にリアルに響きます、まさにCDに詰まった音源の全てを引き出します。
ピアノの高域の響きやサックスがまた凄い、テナーサックスの中音域はすぐそこまで奏者が飛び出してくるようです。
また、ボーカルも綺麗です、こういった中音域が綺麗なのはオンキョーの伝統的な音色をデジタルアンプにも継承しています。
何でしょう、この超リアル感。
この音質を調整した人は音の天才じゃないかと思うほど一切の癖もなく、それでいてどのレンジの不足感も一切無いというまさに理想的な音質です。
難を一つ言うと低音域です、電源を強力にしてカバーしているようですがアナログアンプのようなドスンと来る硬く締まった押し出し感はありません、聴き流すには良いのですが聴き込みたい時には物足りなさが出ます。
まあ、ただこの音質でこの価格とは何というコストパフォーマンスの高さのでしょうか。
スピーカーの相性としてはオンキョーは勿論ナチュラルサウンドで良いのですが、よりリアリティを求めるなら絶対的にダイヤトーンの大型ブックシェルフです、ダンピングファクターの低さから出てくる低音域の弱さもしっかりカバーできます。
ダイヤトーンは1999年以降は製品を出していません、したがって手持ちが無い人は中古を求めるしかないのですが音色という点では相性は抜群です。