プロフェッショナル仕様の小型モニタースピーカーを検証~ヤマハ NS-10MT
2024年3月14日 08:00
私が最近の小型スピーカーの音の個性を掴む目的で使っているリファレンススピーカーが、ヤマハのモニタースピーカーNS-10MT(1995年発売、ペアで8万)です。
ちなみにベースのNS-10Mは、マニアの間では「テンモニ」という愛称で呼ばれるほど知られた存在で、本機はその意味では「テンモニ・シアター」と区別する人もいます。
ヤマハ NS-10MT
ヤマハのNS-1000Mに始まり、100M、10Mと最後の品版にMが付くスピーカーは、70年代後半に発売されて以来放送局の録音スタジオで使われる音質チェック用のモニタースピーカーという位置付けになっています。
NS-1000Mシリーズはヨーロッパの各放送局のスタジオルームのモニターとして採用され、一躍世界中で大ヒットを飛ばしたモニタースピーカーシリーズです。
1000Mが大型3ウェイ、100Mが中型3ウェイ、10Mが小型2ウェイのブックシェルフです。
そして、このNS-10MTはNS-10Mをシアター向けの音質に改良し満を持しての発売で、ジャンルを問わず癖の無い音で高評価を得ています。
発売がオーディオ氷河期のど真ん中の95年ではなく10年後の2005年であれば、おそらくペアで確実に10万円以上でも安いと感じるでしょう。
MTの最後のTは「Theater」のTで、NS-10Mよりも奥行きをとって容積を増やし、更に2つのマグネットを逆極性で合わせて電流歪を軽減したという贅と技術を思う存分に投入した特製ユニットを採用しています。
また、10Mの密閉型からバスレフ型にしてクラシックだけではなくジャズやロックでも迫力ある低音を響かせるように工夫されています。
音質は小型スピーカーの音質確認のリファレンスで使っているくらいですから当然癖がなく、低音域から高音域までフラットに綺麗に伸びた理想的なナチュラル音色です。
各楽器の音色が詳細に気持ち良いくらいに分離されて、その意味ではリファレンススピーカーとしても最適なのです。
リファレンススピーカーとは、アンプやスピーカーの音質を測る際の参考音質として使うものですから個性があってはリファレンスにならないのです。
ただし、神経質すぎるほどの繊細な音質は気楽に音楽を愉しむという使い方にはやや難があるように思います。
どうしても神経がスピーカーにいってしまい、音の一つ一つが気になって仕方ないのです。
やはり、音質測定機という位置付けがぴったりくるスピーカーだと思います。
こういった癖の無いモニタリング用の小型スピーカーが、近年発売されていないのが寂しい限りです。