
近年になり「中華アンプ」と呼ばれるジャンルが台頭しています、読んで字のごとく中国に本社を構えるオーディオブランドで2000年以降は特に大挙して誕生しています。
中華アンプは真空管アンプとD級デジタルアンプが殆どで、日本のオーディオメーカーのようなアナログを駆使したトランジスタやFETのディスクリート(単品部品だけ回路を構成)アンプはほとんど見当たりません。
その理由は明らかで、まず真空管アンプでは真空管を始め部品の多くがロシアや自国で安価に手に入るばかりか回路などは全て公開されていますから新たに設計する必要もありません。
また真空管アンプは回路が極めてシンプルで手作業で製作するのが基本ですので、そういう労働環境も含めて都合が良いわけです。
安価なD級デジタルアンプも部品数は極めて少なく、ICとその周辺の部品数点だけで成り立つ製品です、そういった点で真空管とD級デジタルアンプ分野で中華アンプはこの数年間で特に多くのブランドを輩出してきているのです。
こういった中華アンプの魅力は低価格ということですが、その実力のほどはどうなのでしょうか、少なくても安価なD級デジタルアンプではICによる性能が全てを決めてしまうため、定評あるICを使ったものは他社とそれほど遜色は無いと思います。
事実サブウーハーなどのアクティブスピーカーに使われる内臓アンプの多くが中華アンプということでも頷けます、ただ真空管アンプは一部のブランドを除き安価に出している製品は怖い気がします。
何故ならあまりにも安すぎるのです、真空管は同じ品版でも大きく性能が異なります、ラックスマンなどでは1本1本を測定器で測り製品ごとにペアリングを行ったものを使用します、だから左右の音質や音量のバラツキが無いのです。
また性能試験で弾かれた規格外ものをB級品と呼ぶのですが、こういった部品を使うとかなり安価にできることで知られています。
実際は解りませんが、こういった事情を知る者としてはあまりにも安価な中華真空管アンプはちょっと買えないと考えてしまいます。
ただ興味本位でどれほどの実力なのかを知りたいとは思っているので、機会があれば是非買って検証してみたいと思っています。
中華真空管アンプでも高音質と高性能で高価格な世界ブランドを確立しているブランドも近年では存在しています、特にヨーロッパを中心に活路を見い出しており日本にも徐々に浸透してきています。
こういったブランドの製品は日本メーカーと比べて価格もそれほどの差はなく、世界中に代理店もありメンテナンス等の面においても安心して使える製品ではないかと思います。
経済力とオーディオはシンクロするようです、中華アンプの躍進の裏には中国の経済力が伸びてきた背景があることは間違いありません。

先日CDが増えてきたのでストック方法を検討したのです、改めて考えてみるとレコードはコレクションに夢中になっている時で約3000枚、その後にかなり処分して現存しているものだけでも約1000枚ということは解っているのですがCDに関しては記憶にありません。
そこで改めてカウントしてみたら現存しているものだけで500枚以上はありました、現存というのは酔うと人にプレゼントしてしまうので自分がこれまで何枚買ったかまではカウント不能なのです。
そんなことを考えながら購入金額を計算してみたのです、そうしたら膨大な金額になり自分自身がビックリしました。
レコードは当時の新品で2000円~2500円くらいです、ただ「ブルーノート」などの初版25Cmのビンテージ物は1枚で数万円した物も多数あります、平均2500円だとしても過去トータルで750万円も使ったことになります。
CDは新品の場合は2500円から3500円、廃番の中古で平均1000円だとしても約100万円、更にDVDやブルーレイも数え切れないほど有ります。
また、このところは毎週のように廃版ジャズCDの中古を大量に買い漁っていますのでオーディオ道楽復活の今、どこまでコレクション数が増えるかも未知数です。
これに対して過去にオーディオ製品に使ったお金の合計は、下取りや廃棄などがあるので細かくは解りませんが現存するのだけをざっくりと計算すると累計で1500万円前後になるかと思います。
つまり、何を言いたいかというと目に見えるオーディオ製品以上にソース購入に使っているお金が意外にも多かったということです。
ソース購入の多くは大人買いです、バブル景気真っ最中の頃は当たり前としても今も尚酔った勢いで一度に10枚以上は買ってしまうことも日常的にあります。
1枚辺りの価格こそ安いオーディオソースですが「塵も積もれば山となる」の如しで、「意外なところでオーディオ道楽ってお金を使っているんだな」という話しでした。
ゲーム機もハードよりもソフト、パソコンも同様です、ここにビジネス成功のヒントが隠されているのです。

オーディオ道楽とは実に多くの雑学が必要だと思うことがあります、雑学と言えばよく混同される言葉に「トリビア」がありますが、雑学とトリビアとは意味がかなり異います。
トリビアとはラテン語の三叉路を意味し、古代ローマで三叉路は極ありふれた風景であることから「どこにでもある風景」=「どうでもいいこと」を意味する言葉として用いられるようになりました。
近年では、特に「生きていくためには役にたたないウンチク」を指して言われるようになりました。
他方の雑学は確かに役にたたない知識もありますが必ずしもそうでもありません、その意味ではオーディオで身につく雑学の多くは生活に密着しているものも多いのは確かです。
オーディオの技術分野としては電気工学・物理学・流体力学(空力)などが存在していますが、これらを総合させた音響工学、そして金属や木材・紙・布といった素材の知識から各種の特殊工具の知識などが得られます。
これらの知識は、道具や材料が無い時などに代用品のヒントやオリジナルの新たな工具や素材を作る知恵となります。
また電磁波や空気振動で起こる不可思議な現象を理論だって解明することができます、これによって不要に不安になったり怖がらずに済みます。
都会では高層ビルの部屋の窓から話し声が聞こえてくることが多々あります、実はこの現象は音の集音・合成・共鳴・反射などの音の性質の条件が揃ったことによって起こり得るという説明ができます。
直線では1メートルほどしか聞こえないひそひそ話しでも、話す場所によっては集音・合成・共鳴・反射作用によって特定のポイントにだけですが100メートル以上届くことは数々の実験で実証されています。
レストランや居酒屋でもこの現象は起きますので、内密の話しがあるときには角の席は避ける事をお薦めします、特定の場所に居る人に丸聞こえになってしまいます。
こういった知恵以外にも多くの知識や知恵が詰まっているのがオーディオなのです、これを道楽として継続していると自然に自身の体験によって身についてくるのです。
テレビなどの電化製品を本来の使い方だけではなく、ニーズに合わせて他の電化製品と組み合わせて世の中にはまだ存在していない新たな電化製品を作り上げる事も可能です。
オーディオタイマーやオーディオトランスミッターなどはこういったアイデアで生まれた商品なのです、オーディオを通して得られる知識や知恵は意外にも実生活に密接に関係しているのです。

70年代後半ごろの話しですがオーディオ黄金比率というコンポーネントの価格バランスを示す指標がありました、その指標とはスピーカー:アンプ:レコードプレーヤーの価格比率が4:3:3が理想とされていました。
例えば10万円のアンプであればスピーカーは13万円、レコードプレーヤーが10万円で、この価格帯で組み合わせれば音質的なバランスが良いとされていました。
しかしCDプレーヤーが主流となり、またスピーカーが小型で高性能なものが溢れる現在においては70年代の黄金比率ではバランスが悪くなります。
最近のアンプはエントリークラスでも結構優れたDACを搭載しているものもあり、CDプレーヤーは以前のようにDAC性能で買われるよりもCD読み取り機として買われるケースも出てきています。
私もどちらかと言うとCDプレーヤーに関してはアンプのDACや外付けのDACに依存する派で、CDプレーヤーはデジタル音源を読み取ってくれるだけで充分だと考えています。
ただビンテージアンプをメインにするなら話しが変わります、この場合はアンプにDACは搭載されていませんのでCDプレーヤーには高性能なDAC搭載の物か外付けのDACが確実に必要となります。
その意味では、組み合わせるアンプによって黄金比率が大きく変わってきます。
イマイマの時代にビンテージアンプをメインで使うという人はおそらく余程のマニアだけで普通の人ではいないと思いますので、最新のオーディオ製品の性能等を考えて現在の黄金比率を考えてみました。
その結果、スピーカー:アンプ:CDプレーヤーの価格比率は3:5:2が理想的ではないかと思います、ただしアンプに高性能DACが搭載しているというのが条件になります、スピーカーが小型化し更にそれほど高くなくても高音質が期待できます。
ざっくりとした価格ですが、最新型のエントリークラス製品で小型ブックシェルフスピーカー6万、DAC内臓アンプ10万、デジタル出力対応CDプレーヤー4万、この価格以上のセットであればどんな製品を選ぼうが後悔することなくハイグレードな音質で愉しめると思います。
この場合の注意点としては、アンプとCDプレーヤーは光デジタルかデジタル同軸で接続する必要があります。
ちなみに価格をそれぞれ倍にして20万円以上のアンプになるとエントリークラスではなくミドルロークラスとなり、エントリークラスでは味わえなかったぐっと締まった高次元の音質が期待できます。

世界中で今や日本のラーメンは一つの食文化として認められ、どの人も美味しいと口を揃えて褒め称えます。
ラーメンの発祥の地である中国や台湾の人でさえも、日本に来れば本場の日本のラーメンを食べ歩きするそうです、今やラーメンは日本の一つの食文化となり本場の中国のものとは別物という認識をされています。
またB級グルメであるラーメン店がミシュランの1つ星を獲得したときには世界中が驚きました、そんな日本のラーメンはどの店のを食べても一様に美味しいのですがスープも麺も具もどれをとってもみな異なります。
更には製法まで異なり料理の本来的には別の料理かというくらいに異なりますが、どれもすべてラーメンでありどれもそれなりに美味しいのです。
この気付き、実はオーディオも同じなのではないかと思うのです。
ハイファイオーディオのカテゴリの製品であれば、どのメーカーのどの機種をどのように組み合わせて聴いても一様に「良い音」に感じます。
特にハイファイオーディオに耳が慣れていない人は、どれをどのように組み合わせても「どのラーメンも美味しい」と同じように、「どの組み合わせも良い音」と思うでしょう。
ところがラーメンを食べ歩きし、評価記事を書くようなラーメンの達人はスープ・麺・具・を詳細に分析し、そのバランスや味の根源食材まで見抜いて評価を出します。
これもオーディオマニアと極めて似ています、「良い音」は当たり前として、どのように良いのか悪いのか更にもっと良くなる組み合わせは何かを聴き分けているのです。
そして同じお金を払うならバランスの良い音質で聴き疲れの無い組み合わせを徹底して探るのです、これがオーディオの面白さであり道楽という所以なのです。
音質を極める人は味にも厳しい人が多いのも事実です、自身の五感に感じる存在を意識して極めるのか、それとも無意識で過ごすのか、その差は極めて大きいと思います。
私はオーディオ製品の音も料理の味もワイン・日本酒・ウイスキーなどのアルコールの香りやコクも全部気になります、世の中に存在している見えなくも五感に感じる物を看過できないのかもしれません。