
オーディオ機器のサイズって、どうして同年代に各社が揃って同じくらいのサイズになっているのでしょうか?
アンプ・チューナー・カセットデッキ・レコードプレーヤーが独立したコンポーネントステレオと呼ばれるスタイルが日本に誕生した時に、既に製品化されていたアメリカのアンプのサイズを参考にしたと考えられます。
当時のアメリカにはUS電気規格に19インチラックがありました、放送局用のアンプや送信機、PAオーディオや測定機などを収める業務用電気設備ラックです。
この幅が48Cmです、ここから取り付け用の羽板を取ると本体の横幅は42~43Cm程度となります。
このサイズが現在までのコンポーネントオーディオ製品の横幅として各社の暗黙の了解となっているのです、何故なら各社各様の製品をラックに収める時に同じ大きさにする必要があるからです。
この規格を外れた製品を出したら標準ラックに収まらないので買われない可能性があるからです、ですから「暗黙の了解」ということなのです。
この横幅42~43Cmのコンポーネントは、90年代に入り横幅30Cm前後のコンパクトサイズが流行り出した際に「ミニコンポ」と称されたことから後付けで「フルサイズコンポ」もしくは「標準サイズコンポ」と呼ばれるようになりました。
また95年辺りから21Cm前後のハーフサイズのコンポが出始めます、このハーフサイズのコンポは出始めた当初は「ミニミニコンポ」と称されましたが、後に「ハーフサイズコンポ」とか「マイクロコンポ」と呼ばれるようになりました。
更に2000年以降に安価なカーオーディオアンプなどを使ったハガキサイズのD級アンプやヘッドホンアンプが誕生してきました、このハガキ大の大きさの製品は「ナノコンポ」などと呼ばれています、と言うことは最近出始めている更に小さな名刺大の製品はこの流れから察すると「ピココンポ」と呼ばれるのでしょうか?
ちなみにサイズに関らず「ハイコンポ」と呼ばれる製品群があります、これはミニコンポ以下のサイズでハイファイスペックを持ち、更にシステム販売と並行して単体でも販売しているグレードの高いシステムコンポの製品を統括して指しています。
時代はどんどん小型軽量化していきます、音質はアンプの大きさでは決まらないのですが20Kg以上もあるフルサイズコンポで何時までも音楽を聴きたいと思うのです。
これは私だけの気持ちの問題ですが、BGM用とかデスクトップなど用途を限った場合は別にしてメインの常用オーディオセットにフルサイズ以下のサイズを使ったことは皆無です。
その理由は気持ちが大らかにならないからです、オーディオから影響される精神的な事項って私の場合は自身で思っている以上に大きいのです、オーディオに限らず記憶に刷り込まれた拘りとか思い入れってこういうことだと思うのです。

鈴虫や小鳥が最も美しい音色で鳴くのは死ぬ直前、蝋燭の火が最も大きくなるのが消える直前、鯛の刺身が最も美味しくなるのが腐る直前、履いていた靴が最も足にフィットするのが捨てる直前・・・。
こんな理不尽な事実は何処にでもあるのですが、ことオーディオで言うとスピーカーがこれに当たります。
スピーカーは新製品の時にはダンパーやエッジが硬く、張りはあるのですが本来の低音域などの鳴りが出てきません、そして聴き込む度にどんどん音は良くなっていきます。
そんなある日突然のように音に締りが無く響きがガラっと変わる時があります、ダンパーやエッジが経年経過や疲労で張りが無くなってしまった結果です、こうなるとメーカーにダンパーやエッジを張替をしてもらわないといけなくなります。
っで戻ってきて音を聞くと買ったばかりの頃のように張りはあるが豊かな低音域が無いのです、スピーカーって本当に繊細なものだなとつくづく思います。
そしてアンプでは大切に使っている物ほど壊れて、壊れても良いと思って気楽に使っている物ほど壊れないという理不尽な事実があります、オーディオの理不尽な事実ですが受け入れたうえで愉しむしかないのでしょうね。
ビジネスにもこれと似たような事実は多々あります、それを理解して受け入れる、どの世界にも成功するには我慢が肝要なようです。

80年代だったか株式投資雑誌に経済アナリストの興味深いレポートがありました、それは「アンプの色は近未来の景況感を反映している」というものでした。
そのレポートによると、景気浮上の数年前からシルバーやシャンパンゴールド色のアンプが売れ景気後退の数年前からブラック色のアンプが売れる」というものです、確かにバブル景気が始まる数年前から世の中のアンプが黒一色になりました。
驚くことにシルバーと淡い白木の側板の気品ある色調で人気を集めたヤマハのアンプでさえ、83年ごろからの数年間はブラック一色になり気品ある面持ちであったフロントパネルは他社同様の厳つい顔つきになったことです。
その後、バブル経済が崩壊してオーディオ氷河期に突入し一連のブラック一色も徐々にシルバーやシャンパンゴールドに変わって行きます。
その後は10年という長いトンネルを抜け徐々に景気も落ち着き出します、そしてホームシアターが成長期を迎える2005年ごろになるとAVアンプを中心にまたブラック色のアンプが出始めます、そしてリーマンショックで世界的な不景気に見舞われます、確かにアンプの流行色は景気を5年ほど先取りしているようにも思えてきます。
では今はどうかと調べてみると、ヤマハは以前の気品を取り戻したかのようなフロントパネルに戻り、エントリークラスのアンプはシルバーとブラックの2色ですがミドルクラス以上はシルバー一色です、AVアンプはシルバーとブラックのコンビネーションになっています。
ソニーは、プリメインアンプはAVアンプの流用品のようなエントリークラスの一機種しかなくAVアンプも含めて全てブラック一色です。
デノンは、ヤマハ同様にエントリークラスのアンプだけシルバーとブラックの2色を出しており、ミドルクラス以上は全てシルバーです、AVアンプは逆にブラック一色になってしまいました。
オンキョー・パイオニア・マランツはプリメインアンプは全機種シルバー一色です、こちらもAVアンプはほぼブラック一色です。
こうして見ると、ハイファイオーディオ製品はほぼシルバーでホームシアター製品はほぼブラックと利用形態で住み分けされているような状況です、これをどう分析したら良いのでしょうか?

オーディオ道楽の仲間は昔から数多くいますが、みなさん本当に与え合いの精神の持ち主なのです。
オーディオ道楽の多くは日々の音質を極める活動と並行してコレクションを行っている人が殆どです、高級なハイエンド製品を買うお金があればミドルクラスやエントリークラスの製品を数多く揃えたいというのがオーディオマニアの思考なのです。
それぞれの製品の異なる音色をコレクションし、その違いを確認したり組み合わせを自分なりに工夫することがオーディオ道楽の一つの喜びでもあります。
それでもどんな人にも経済的な限界というものがあります、そこで与え合いの精神が重要になってくるのです。
例えば同じメーカーのシリーズでの音質の違いを同じ環境で確認するには一度に5台のアンプやスピーカーを買わなくてはいけなくなります、そういった場合にはそれぞれが持っているアイテムを持ち寄って合同で音質確認したりします。
こういった持ち寄り試聴会は友人同士は勿論ですがオープンな形でも昔から各所で行われており、私も80年代にはタクシーでアンプやスピーカーを運んでは参加していました。
こういった活動を通して生きた情報を得ては次に買うべき製品を互いに確認し合ったりするのです、この試聴会は全員で音体験を共有できそれぞれが体験した貴重な情報を共有できるので80年代には毎回満員御礼の状況でした。
場所は喫茶店やレストランを経営している人が休みの日に無償で提供します、またコレクションの交換会や即売会なども同時に開催されるのが常です。
こういった交換会や即売会の製品はみな美品の完動品を出すのが暗黙のルールで与え合いの精神からきています、大事にコレクションしている製品を出品しますから本当にどれも新品同様に綺麗なものばかりです。
試聴会後の飲み会ではそれぞれの意見や感想を好き放題言い合うのですが、互いの感性を尊重し合い喧嘩になることは皆無です、オーディオ道楽を行っている人は心の広い人が多いのかもしれません。
こういった道楽を通した人間関係は、ビジネスの人間関係とは次元が異なるももので利害や損得勘定などが入り込みません。
むしろ譲り合いや与え合う理想の人間関係なのです、こういったところからもビジネスでの人間関係の在り方を多いに学ぶのです。
職業もバラバラでビジネスに発展するケースもありました、オーディオメーカーの技術者とも仲良くなり手持ちのアンプのメンテナンスを安価でお願いできたりしたので道楽にも弾みが付きます。
オーディオ道楽復活で、こういった忘れかけていた古き善き思い出も蘇ってきました、古き良き時代を今に望むのは酷というものでしょうか。

オーディオ道楽で最も憤りを覚えること、それは「初期不良」という謂われ無き(いわれなき)イジメにも似た事件です。
新規購入した製品を首を長くして待ち続け、届いたら即箱から出して苦労の末に設置してワクワクしながら音出ししたら故障していた、こんな事実は絶対に認めたくありません。
そして苦情の電話をしたところで、対応してもらえるのは設置した時と同じように再度苦労して設置から外して箱にまた戻して送り返すだけです。
時間を奪われ、無駄な労力をした挙句に数週間待たせて代替え品があればラッキーですが最悪の場合は届くのは修理品です。
つまり使う前から既に修理した中古品なわけです、そして安くなるわけでもありません、これって民主主義国家の正常な商行為なのでしょうか?
こういったトラブルは過去に数回ありますが、なんとそのうち2回はオーディオ道楽復活後のこの2年半の間です、そんな事もあってか是非記事にして記録に残したいと思ったのです。
確立を計算したら、この2年半の初期不良率は今現在で3%以上にもなります、今後しばらく起きなければ確率は低くなりますが充分に高い確率です。
オーディオ道楽封印前は約40年間でおそらく1%にも満たなかったと思います、つまり最近のオーディオ製品は初期不良率が極めて高いのではないかと思うのです、しかも安価なものではなくそれなりの価格がする製品でも起こるのです。
90年代まではどのメーカーもほぼ国内工場で生産しエージング試験もしっかりとやって出荷していました、昨今では多くが海外で製造され製造後は試験で合格しても日本に届いてから試験もせずに出荷されるのでしょう。
この間に船積み、トラック輸送と多くの振動や熱の変化にさらされます、こういったことが要因で故障してしまうようですが根本原因が基板の製造方法にあります。
昔はハイドメイドですが、現在ではディップと呼ばれる装置で基板を半田のプールに浸して一度に半田付けする方法で製造されます。
この方法では安価で高速に製造できますが、時々空気の泡などにより「テンプラ」と呼ばれる見た目は付いているが剥がれやすい状態で製造されてしまうことが起こります。
工場出荷時では検査で引っ掛からなくても、これが輸送途中の振動で剥がれて初期不良を起こす最大の原因となります。
調べてみるとネットでも近年の初期不良率の高さの苦情が多く上がっています、オーディオマニアの愉しみを一気にぶち壊す初期不良、どうにかならないものでしょうか、今後のオーディオメーカーの誠意ある対応を期待するばかりです。