【産業用ブロックチェーンの台頭】
世の中にはパブリック型ブロックチェーンによる非中央集権型取引システムを疑問も持たずに支持する人で溢れかえっています、かのアインシュタインは「疑問を持たずに敬意を表するのは事実に対する最大の冒涜である」という、けだし名言を残しています。
この名言が示すように、IT技術を熟知した人の多くはパブリック型ブロックチェーンに多くの危険性を見出しています。
銀行や証券などの金融機関も近年ブロックチェーンによる取引を行おうとしていますが、全てが中央集権によるコンソーシアム型のブロックチェーンを採用しようとしている事実を見ても一目瞭然です。
「人件費などのコストが少なく透明性が有る」、実はこのパブリック型ブロックチェーンの優位点こそ最大の欠点でもあるのです。
パブリック型ブロックチェーンの危惧する問題の一つには確かにノードにおける台帳の安全性は確保されているかのように見えます、しかし例えばユーザーの端末が突然故障した場合、パスワードなどのアクセスキーをバックアップしていなければ取引台帳はノード間で保障されていても取引することはできなくなり、事実上保有資産は失われることになります。
更にはハッキングされ盗用された場合も同じことです、この問題を現在パブリック型ブロックチェーンでは全く解決の糸口さえ見つける事ができません。
もう一つはスケーラビリティというブロックチェーンの取引規模の変化に対する柔軟性への対応です、今やビットコインは世界中で利用されており店舗での支払いや労働報酬の支払いなどにも利用され始めてきていますが、その取引速度の遅さが問題であり決裁までに数時間を有する場合も発生しています。
この問題の対応策としてビットコインの原論文(Satoshi Nakamoto, 2008)に記載されていながら、いまだ実装されていないSegwit(Segrageted witness)と呼ばれるる技術を開発者側が導入しようとしました。
これはブロックチェーンの容量を見かけ上増やすもので電子署名部分をブロックから分離して管理するという、今までの仕様と互換性を保ちながら行えるというシステムの上位互換性のあるアップデートです。
対して、世界最大のマイニンググループであるAntPoolが支持したのはブロックチェーンの1ブロック単位のトランザクション容量そのものを増やしてしまおうという解決策です。
ビットコインのブロックチェーンのブロックは約3000の取引記録が納められその容量が1MBと決められています、この容量を8MBにまで増加させようというものですが今までの仕様で作られてきたブロック(取引台帳)は反映されず事実上全く新しいブロックチェーンができることになってしまうのです。
前者の互換性を持ったままでアップデートを行うことを「ソフトフォーク」、後者の新しい仕様でブロックチェーンを作ってしまうことを「ハードフォーク」といい、パブリック型ブロックチェーンはソフトフォークとハードフォークの対立が起こることは否めません。
事実ビットコインと同じ問題がイーサリアムで過去起きており、イーサリアムではハードフォークにより2つのブロックチェーンに分裂してしまいました。
このように技術的に避けて通れない課題、そして中央集権を持たないことで起きうる大きな保障問題、これら全てを熟知した人であれば簡単に非中央集権型であるパブリック型ブロックチェーンが優れているとは言えないのではないでしょうか?
ここでも最後に追記しておきますが、限られたノードだけでコンセンサスを行えるプライベート型ブロックチェーンは事実上の運営者が存在しています。
また管理サーバーも実在し、スケーラビリティ問題や各種のメンテナンスにおいて高い安全性と運用を保障できるようになっています。
社会に浸透する新時代におけるブロックチェーンは、P2P取引が行え更に拡張などの不安が皆無であるプライベート型に集約して行くのではないかと思います。
近年ではプライベート型のブロックチェーンを「産業用ブロックチェーン」、または「エンタープライズ・ブロックチェーン」と呼ぶようになってきています。
※仮想通貨は、ブロックチェーン技術を用いた世界で最初のDApps(分散型アプリケーション)の一つであるということに過ぎません。
今や、電子取引をあらゆるデータの取引として金融以外の分野に応用して行こうという試みがなされています。
※投稿@伊東久雄